富士フイルムは、医薬品候補化合物の構造式から新たな候補化合物を自動的に探索し、設計できる医薬品候補化合物探索・設計シミュレーション技術「AI-AAM」を開発したことを発表した。

同技術は、薬効が期待できる既存の医薬品候補化合物と疾患の原因となるタンパク質(標的タンパク質)との結合力を、タンパク質の構成要素であるアミノ酸との相互作用の解析から予測し、さらにAI技術により、その化合物と同等の結合力で異なる骨格を持つ別の化合物を自動的に探索および設計を行なうというもの。化合物ライブラリの探索のほか、従来発想できなかった新規の化合物の設計も可能だという。

新薬が実際に販売にまで至るためには10年単位の時間と、1000億円を超す開発費用が必要とされるが、それでも基礎研究で探索された医薬品候補化合物が、実際に新薬として発売までたどり着ける確率は約2万~3万分の1と言われており、開発競争が激しくなっている。

現在、多数の化合物の中から標的タンパク質と結合する化合物を選別するハイスループット・スクリーニングを利用することが一般的だが、製薬会社などが所有する化合物ライブラリの数には限りがあることから、従来法のまま継続的に新規候補化合物を見つけ続けることは困難となっており、シミュレーション技術やAI技術の活用に期待が高まってきた。

しかし、例えば医薬品候補化合物と標的タンパク質との結合力の実験データからAIを用いて新たな化合物を見つけ出す手法の場合でも、疾患ごとに異なる、標的タンパク質の立体構造の解析や、AI精度向上ためのデータ蓄積が必要となるなど、まだまだ課題が残されているのが現状となっている。

今回開発されたAI-AAMは、そうした問題を解決することを目指して開発された技術で、実際に、化合物ライブラリから、抗がん剤や抗菌剤の候補化合物が持つ「AAM記述子」と同等の化合物を探索し、それを合成して標的タンパク質との結合力を評価したところ、従来法を上回る抗がん剤では7%、抗菌剤では15%の確率で同等の結合力を持つ化合物を見つけることに成功するなど、複数の側面で、有用性が確認されたとしている。

なお、同社では今後、同技術を用いて新薬開発を加速させるとともに、製薬企業などの社外パートナーとの協業を図ることで、革新的な新薬の創出を図っていきたいとしている。

  • AI-AAMの概要

    医薬品候補化合物の探索・設計シミュレーション技術「AI-AAM」の概要 (出典:富士フイルムWebサイト)