「毎月、貯蓄をする」というのは、何も定期預金だけの話ではありません。そろそろ貯蓄の中身を組み替えていかないと、いつまでたってもお金が増えないという悩みを解消することはできません。まずは100万円貯めることからスタートです

◆1年で100万円貯めるには毎月8万3000円!
単純計算で年間100万円貯めようと思ったら、毎月8万3000円を積み立てていくことになります。1年で100万円貯めることができれば、30年で3000万円。現在30歳であれば、老後資金はひとまず確保できる計算になります。

しかし、その間に子どもの教育資金、住宅購入と大きな出費もあります。そもそも毎月8万円以上の貯蓄を継続していくのは、並大抵のことではありません。そうなると、毎月の貯蓄額はいくらが妥当なのか、ムリなく続けられる貯蓄額はいくらなのか、と考えてしまいますが、実のところ、これが適切な毎月の貯蓄額、というものはありません。

たとえば、子どもの教育費のうち、最もお金のかかる大学入学時点に目標を定め、子どもが生まれてから18年で500万円貯めようとすると、毎月2万3000円の積み立てが必要です。5年後に住宅取得を目標に頭金を500万円貯めるとすると、毎月8万3000円の積み立てが必要です。そして30年先の退職を見据えて老後資金を2000万円用意しようとすると、毎月5万5000円の積み立てが必要なのです。今、この3つを同時に貯めようとすると、なんと毎月16万円以上の積み立てをしなければならなくなります。これはほとんど不可能と言ってもいいでしょう。

大きくは、人生の三大出費に備えて貯蓄をしていくわけですが、それをすべてゼロからはじめようとすると、最初からムリ!となってしまうのです。特に貯蓄慣れしていない家庭では、貯蓄計画を立てた瞬間に、やる気をそがれることになるでしょう。

◆発想の転換で、貯蓄の順番や方法を変える
そこで、発想の転換が必要になってきます。どの目標に対しても全力で貯蓄することはできないので、優先順位や貯蓄の仕方を変えることが大事になってきます。

1.突発的なことに対応できる100万円を確保する
2.使う時期が早い目的に合わせて貯蓄を優先する
3.積み立てとボーナス時の貯蓄を併用する
4.時間を味方につけて積み立て運用する

◆1.突発的なことに対応できる100万円を確保する
どんな人でも、病気やケガなど突発的な出来事や、冠婚葬祭など不意の出費を想定しておくことが大事です。何か困ったときに使える100万円は、誰もが用意しておきたいお金です。お金の貯めはじめは、「まずは100万円を目標に」と言いますが、突発的なことに対応できる100万円があれば、ひとまず漠然とした不安から脱出することができます。転職や起業するなどキャリア変更をするときも、半年から1年分の生活費があれば、自分の決断がブレずにすむでしょう。

現在、貯蓄がゼロ、もしくは100万円未満なら、まずは全力で100万円貯めることを優先しましょう。1年で100万円が無理なら、2年で100万円、毎月の貯蓄可能額から100万円達成できる年数を試算するなど、どんなやり方でも構わないので、「まず100万円貯める」ことを目標にしましょう。

◆2.使う時期が早い目的に合わせて貯蓄を優先する
どうしてもマイホーム取得をしたい、ということなら、当面は住宅取得の頭金づくりに専念するのも1つの手です。今の時代、晩婚化などの影響で人生のイベントが重なってやってきます。それに対応しようとすると、前述したように毎月の貯蓄額は膨大な額になってしまいます。「二兎を追うものは一兎をも得ず」。まずは、目標を1つ決めて、貯蓄の道筋を立てることが重要です。

ただ、その際、親などからの資金援助が受けられるか相談しておくことも大事です。その上で、無理のない資金計画を立て、毎月の貯蓄額を割り出すようにしましょう。住宅取得については、本当に今必要なのか、子どもが独立してからでもいいと考えるのかでも、貯蓄の優先順位は変わってきます。貯蓄計画を立ててみると、実際にマイホーム取得できるのはいつなのか、ということも具体的に見えてくるはずです。

また、マイナス金利の恩恵で、住宅ローン金利は過去最低レベル。何年も頭金づくりにこだわるぐらいなら、低金利のうちに住宅を購入し、貯蓄のつもりで返済に回していく、と柔軟に考えてもいいでしょう。5年、10年後には住宅ローン金利が上がっている可能性もあります。頭金が多いに越したことはありませんが、目標のハードルを必要以上に高くすることはないのです。

◆3.積み立てとボーナス時の貯蓄を併用する
とはいえ、同時に2つの目的のために貯蓄をしないといけない時期もあります。子どもの教育費は、子どもが生まれたときからコツコツ積み立てをしておくことが安心感につながるからです。住宅購入の頭金づくりと並行して貯めていくのは、かなりキツイかもしれません。

そこで子どもの教育費の積み立ては、学資保険やこども保険が一般的ですが、最初からフルフルの保険金額で加入するのではなく、大学入学時の入学金と初年度の学費程度と考えれば、200万円の保険金額でも十分でしょう。たとえば、18歳満期で受け取れる学資金200万円で試算すると、毎月の保険料は9080円(※)という保険があります。毎月の貯蓄額から1万円程度を子どもの教育資金に振り分けるだけで、 大学進学への不安は解消するでしょう。

もちろん、進学先によってはこれだけでは不足するので、ボーナスなどから不足分を補てんして貯蓄をしていく、という考え方になります。また、この先家計に余裕ができ、増額できるかもしれません。住宅取得が終わってから、その分を子どもの教育費に回すという家庭もあるでしょう。その際、子どもの年齢によっては、追加で保険加入できないこともありますが、こども保険に固執する必要はないので、その都度、臨機応変に預け先を考えればいいのです。

※契約者:男性30歳、被保険者:男児0歳、18歳満期、保険料払込期間18歳まで。満期学資金200万円。払込保険料総額約196万円。あくまでも一例で、加入を勧めるものではありません。

◆4.時間を味方につけて積み立て運用する
最後に、老後資金の貯蓄です。昨今の「下流老人」というキーワードに不安感を募らせている人も多いと思います。しかし、これから20年、30年と現役で働くことができる世代が、必要以上に老後資金にとらわれる必要はないのではないでしょうか。

それでも、何も準備しておかないのは「もったいない」。それは、早くから準備すれば、それだけ時間を味方につけることができるからです。これを最大化するには、「積立投資」を活用することです。

前文で、「毎月の貯蓄の組み替えが必要」と書いたのは、この点です。何も貯蓄は銀行の自動積立定期預金だけではありません。月々3000円、5000円と少額でもコツコツと積立投資をすることで、20年後、30年後の老後資金を用意することができるのです。

仮に、年0.01%の銀行の積立定期に毎月1万円貯蓄したとしましょう。30年後に得られる利息は、360万円の積立元本に対して、わずか4000円。これを年利回り1%で運用できたとしたら、約406万円まで増やすことができます。もちろん運用なので、30年もの間、順調に行くとは限りませんが、30年という長いサイクルのなかで大きな下げもあれば、大きく増やすチャンスも数多く訪れる可能性が高まります。

今、老後に不安を感じているからといって、ガチンコの定期預金で貯蓄をするのはもったいないのです。

◆「目標額×使う時期×使うマネー商品」がセオリー
消費増税が予定され、大学の学費は値上げ、年金はいくらもらえるのか。世の中はネガティブ情報にあふれ、生活者は右往左往するばかりです。しかし、給料は思うように上がらない、だから貯蓄できない、と嘆いてばかりいても何も解決しません。漠然とした不安は自分で解決していくしかないのです。

お金を貯めるセオリーは、いつの時代でも変わりはありません。貯蓄の目標があり、使う時期によって毎月の貯蓄額を決める。そして貯蓄の期間によって使うマネー商品を変える。今回の4つのポイントもセオリーといえば、セオリーです。ただ、時代時代によって、アレンジしていく必要があるのです。

預金金利が高かった時代は何も考えなくてよかったのですが、今は自分でオリジナルの貯蓄プランを作らないと上手にお金を増やしていくことができません。ライフプランやライフイベントは人それぞれです。いかに自分オリジナルの貯蓄プランを作れるかで、30年後の結果が違ってくることでしょう。

今は毎月1万円でも、5年後には5万円貯蓄できるようにする。それが自分のライフプランにとって必要なことであれば、貯蓄する意味も変わってくるし、貯蓄の方法を真剣に考えるのではないでしょうか。

積立投資も商品の自由度が高まっていますし、投資信託なども長い運用実績で比較することが可能になってきています。NISA(少額投資非課税制度)やつみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの非課税制度も充実してきています。

貯蓄プランをアレンジしていく際に、こうした積立投資も上手に組み込んでいくことが、今、とても大事なのです。

文=伊藤 加奈子(マネーガイド)