AppleはiPhone 4に搭載したA4プロセッサ以来、iPhoneの心臓部を自社でデザインしてきた。その結果、初の64ビット化や、他社以上の省電力性とパフォーマンスの両立を実現し、大容量バッテリーの搭載を急がなくても、バッテリー持続時間を確保することができた。

iPhone XSシリーズとiPhone XRに搭載されたA12 Bionicは、Appleのチップとしては2つ目の「スマホ初」となる7nmプロセスでの製造となった。チップの微細化は、物理的に小さくなるだけでなく省電力化も図れるのだ。同じ5.8インチながら、iPhone XSが、iPhone Xよりもバッテリー持続時間を向上させた背景にも、この微細化された新しいチップが存在があると見て良い。

  • A12 Bionicプロセッサで最も大きく進化したのは8コア化されたニューラルエンジンだった

iPhone Xに搭載されたA11 Bionicはスマートフォンのチップとして1年たった今も他社を圧倒するレベルにあるが、A12 Bionicでは処理性能15%前後、グラフィックス50%前後の向上で、さらに差をつけた。それだけでなく、Appleはこの7nmプロセスのデザインによって、機械学習処理を行うニューラルエンジンを2コアから8コア化する大幅な強化を施した。A11 Bionicでは6,500億回だった1秒あたりの処理を5兆回へと高速化させたのだ。

この数字は我々のiPhone利用に直接的に意味を持つものではないが、写真を撮影する際、Siriが我々の行動パターンを読みとる際、拡張現実アプリを使用する際、とiPhoneの特徴的な機能を使う度に、バックグラウンドで行われる機械学習処理を、ストレスなく、少ない電力消費で実現してくれるのだ。