マイクロ波の武器を使用か?世界の米国政府職員が脳損傷など不調続出

中国やハバナなど多くの米国大使館職員が脳に損傷を負ったり、さまざまな症状を訴えている。米国の情報機関はロシアの関与、マイクロ波を使用した武器を疑っている。

米国の情報機関は、2016年の米大統領選挙にロシアの介入があった、と断定した。選挙から2年が経った2018年、国家情報長官のダン・コーツは、サイバー攻撃の可能性に関して「警告灯が再び赤く灯り始めた」と発言している。米国の複数の情報機関がロシアによる米国に対する新たなタイプの攻撃を疑っている、と2018年9月11日にNBCが伝えた。特に、キューバと中国に赴任した米国政府職員のメンタルヘルスに対する攻撃が著しいという。

2016年後半、ハバナ(キューバ)の米国大使館で働く米国人職員が奇妙な身体的症状を訴え始め、本国への帰国を余儀なくされる職員もいた。米国務省は”事件”と表現し、キューバ政府の関与を疑う声もあった。「キューバ政府は長年に渡り、ハバナで働く米国政府職員に対するハラスメント行為を続けてきた」と2017年8月、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は、キューバが疑惑を調査していると伝えられた後にコメントしている。「ハラスメントは、オバマ前大統領による宥和政策でも止まらなかった。米国職員個人に対する攻撃は、カストロ体制の影響が広く及んでいることを示し、明らかに国際規範に反する」

2017年10月にAP通信は、被害を受けた複数の米国人が攻撃を受けた際に聞いたとされる音声を入手した。”事件”は、故意の攻撃によるものと断定されている。聴力の低下を訴える被害者もいて、米国へ帰国した際に補聴器を付けた職員もいた。被害を受けた職員は、大音量の騒音が聞こえたとしているが、音源は明らかになっていない。

録音された音が公開された時点では少なくとも22人の米国人に”医学的な被害が確認された”が、2018年春に攻撃は再開している。本校執筆時点で被害を受けた米国政府職員の数は26人に増えているが、加えて2018年初頭には、中国でも1人の職員が同様の症状を訴えている。攻撃は当初、単純な音によるものと思われていたが、被害者が認知能力、バランス、視覚、不眠などの問題症状を引き起こす脳の損傷を負っていることから、マイクロ波や電磁波、或いは未知のテクノロジーとの組み合わせを疑う声も高まってきた。2018年9月初めにニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところによると、医師や科学者は、マイクロ波を使用した武器を最も疑っているという。


高出力マイクロ波を使用した武器といえば、冷戦時代を思い起こさせる。当時米国は、ロシアがマイクロ波を神経戦の武器として使おうとしていると信じていた。冷戦の絶頂期に米軍は、マイクロ波の波動が、実際には聞こえないものの、痛みを伴う音が聞こえているような感覚に陥らせることができる、と断定した。同現象はフレイ効果として知られている。2018年1月、イリノイ大学のジェームズ・C・リンが発表した論文によると、高出力のマイクロ波は吐き気やめまいのほか、米国政府職員が経験したような症状を伴う脳組織の損傷を起こす可能性があるという。またその1か月後、プロパブリカは米職員の事件に関する詳細な取材記事を発表した。記事によると、駐キューバ米国大使館職員の妻が不審な音を聞いた時に窓の外を見ると、1台のバンが勢いよく走り去ったという。

被害を訴える職員の症状は皆一致しているものの、具体的にどこがどう調子悪いのかをピンポイントで示すことのできる被害者は、いないようだ。さらに、攻撃に使用された武器も明らかになっていない。2017年から米国は、マイクロ波との関連が疑われるが依然としてミステリーに包まれたテクノロジーを、空軍に分析させている。

トランプ政権の対応は鈍かった。2018年9月初めにNBCが伝えたところによると、国務省内の連絡ミスにより、攻撃を調査する特別委員会が、本来立ち上げるべき時期から8か月遅れで設置されていたことが、米国会計検査院による報告書によって明らかになったという。委員会設置を担当する国務省内の部署は、2017年8月にメディアでの報道を通じて初めて攻撃を認知した。一方、同省内のメディカルユニットは、同年初めに被害の報告を受けて既に調査を実施していた。法律によると、調査委員会は事件発生から60日以内に設置することになっている。最終的に委員会が稼働したのは、2018年1月のことだった。

米国情報機関はロシアの関与を”強く”疑っているものの、確証は得られていない。情報機関が確信しているのは、攻撃が故意に起こされたということだけだ。ある政府関係者がNBCに語ったように、情報機関には「故意によるものでないことを示す根拠」がないのだ。