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夏も終わりに近づいてきました。

ここ最近、暑い日の夕方に、思いがけない突然の大雨に打たれた方も多いではないでしょうか?

 

ゲリラ豪雨とも呼ばれるこのような大雨をもたらす犯人は、積乱雲。巨大な塔のように縦にモクモクと伸びる雲です。急速に発達するため、今の気象予測技術では予測が難しく、盛んに研究が行われている分野です。

 

では、「急速に」ってどれくらいの速さでしょう?

雲ができ始めてから雨が降るまで、20分ほどといわれています。

でも、20分もあれば、カップラーメンを6回も作れるし、Youtubeの動画なら2~3本見られるし、同僚に人生相談したらうまくいけば答えまで見つかるかもしれません。

 

「『急速に』と言われるけど、20分って結構あるよな~。」

と、積乱雲の話を見聞きするたび、思っていました。つい最近までは。

 

先日「本当に急速だ。」と実感した出来事があったので、ご紹介します。

 

日曜の午後、外出先でこんな光景に出会いました!

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そう、積乱雲です。

関東近辺で広く見られたようなので、実際にご覧になった読者の方もいらっしゃるかもしれません。綺麗に頂上部分が水平にひろがり「かなとこ雲」になっています。

シャッターチャンス!とばかりに写真を撮りまくりました。

 

「いい写真が撮れた」と、ウキウキしながら用事をすませ、帰り道にふと「あの雲、どうなったかな?」と見上げると...?

 

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おお!頭の部分がさらに大きくなっている!

この間、たったの14分。

雲は時々刻々と形を変えるんだなぁと、改めて実感しました。

 

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わかりやすいように、できるだけ同じアングルで撮ったのがこちら。

 

頂上部が広がっているので、もう発達しきっていて、この後は衰退していくのでしょう。

そう思いながらも、この雲のその後が気になり、帰宅してからも夕食準備の合間に外に出ては観察を続けました。

 

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だいぶ輪郭がぼやけてきました。

雲をつくる粒が、雨粒から氷の粒に変わったためです。

 

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上層の雲だけになってきましたね。

そして、右側には、新しい積乱雲たち(まだ積雲でしょうか)が見えてきました。

 

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おやおや、左側にも新しい積乱雲が。

 

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どんどん縦に伸びていってる!!!!!

 

と、ここまで撮影したところで、夕飯が完成。

お腹がすいて機嫌が悪くなり始めた子どもに先に食べさせることに。

 

食事を終えて、食器を下げて、
「はっ、そういえば!」と30分後に外に出てみると...

 

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また、立派な積乱雲ができている...!!!!!!

周りの雲の配置から考えると、これは、先ほど左側でモクモクと急成長していた雲です。

 

それだけでは、ありません。時々「ピカッ」と雷が落ちていました。

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たった30分、目を離した間に...。

雲の成長のスピードに驚くとともに、怖さを感じました。

 

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tenki.jp 豪雨レーダー (2018/8/26 18:30実況)より

 

気象レーダーをみると、この雲の下で降っている雨は、1時間あたり100 mmを超えています。

「猛烈な雨」と表現される1時間あたり100 mmはどれくらいかというと、まず、傘は全く役に立ちません。周りの景色も満足に見えません。

気象庁のHPでは、「息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる。」と表現されています。

 

「きっと、あの雲の下のどこかのご家庭でも、同じように夕食時でバタバタしている間に、いつの間にか大雨に降られた方がいるんだろうな...」

洗濯物を取り入れ損ねたくらいなら、まだいいでしょう(洗いなおすのは面倒ではありますが...)。ちょうど買い忘れの食材を買いに出かけたタイミングだったら。お子さんが部活から帰ってくる途中だったら。

 

積乱雲が発達するのにかかる「20分」という時間だけを見ると、十分長い時間だと思っていましたが、日々の暮らしの流れの中においては30分すら、あっという間に過ぎてしまう時間だと感じました。

 

 

今、ゲリラ豪雨を予測し、急な大雨による災害をなくすために、たくさんの研究が進められています。素早く・正確に雨雲を観測できる気象レーダーや、上空の状態から大雨を予測する予測手法、そして、予測された情報をすぐに必要な人に届けるための情報システムなど、その分野は多岐にわたります。

そうした、科学技術のいち早い発展を期待する一方で、その科学技術がただあれば、自分は安心できるのか、そうではないのかも考えないといけないなと感じました。

例えば、私の場合、あの時あの積乱雲が自分の家に迫っていたとしたら、十数分前にスマホに通知が来るだけでは不十分だったと思います。家族の夕食で手一杯で、スマホの通知に気付けなかっただろうと思うからです。

朝の気象予報を確認するタイミングで、夕方の急な大雨の可能性を前もって知っておいた上で、テレビの電源が自動でついたり、ウェアラブル端末にアラートが来たりするなど、大雨情報をもっと確実に目に入る形でほしい。

今回の出来事は、自分の欲しい情報とその入手方法を改めて具体的に考えるきっかけになりました。

 

皆さんにとって、積乱雲が発達する「20分」は、
どのような時間でしょうか?

20分前に急な大雨が予測できる科学技術ができたら、
どのように使いますか?

 



Author
執筆: 坪井淳子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
高校で地理の面白さに目覚めて、大学では地学を専攻。その後、自然科学を仕事にしたいと民間気象会社で勤務。自然科学の美しさとそれをサービスの形にして社会に届けられることに、やりがいを感じながらも、より広い視野で自然現象と共存するためには、私たちはどうあるべきかを考えるため、2016年より未来館へ。