昨年から、テクノロジー企業の医療分野への取り組みは活発になっている。その背景には、米国の医療費が日本と比較にならないほど高額で、アクセスしにくいという状況がある。米国で暮らしていると、年に何回かは医療機関にかかることになるが、非常に大きなストレスを伴うのだ。

米国の医療は保険への加入を前提に構築されている。価格がリーズナブルな健康保険に加入すると、「ネットワーク」と言われる医療機関やクリニックでの診療に限られてしまう。最寄りにネットワーク内のクリニックがなければ、クルマで30分以上走るなどして通わなければならなくなる。

また、自分の主治医も、保険会社を通じて探さなければならなず、また、ネットワーク内に医師がいたとしても、必ずしも新規の患者を受け付けているわけではないという事情がある。

すなわち、こういうことが起こりうる。例えば急に心拍が不安定な症状に見舞われた場合、まず主治医にかかり、そこから心臓の専門医を紹介してもらう。主治医にも、専門医にも、保険のプランに応じた費用を都度支払わなければならず、予約もすぐに取れるわけではない。専門医が診察をし、検査をしようという事になれば、検査技師の予約を取らなければならない。検査技師は検査するだけなので、結果は再び専門医の予約をとってから聞くことになる。

結局、最短で予約が取れたとしても、症状を自覚してから検査を通じて原因を突き止め、治療を開始するまでに1カ月かかってしまい、毎月500ドルの保険料を支払うプランの場合、4回の診察と検査で200ドル(約2万2,000円)が診察と検査にかかる。

これが日本であれば、心臓の専門がある内科医に駆け込めば、診察から検査までがその場で30分もかからずに済み、健康保険がカバーされて、2,000円程度の費用だ。いかに日本の医療保険制度が充実しているかが分かる事例と言える。