こんにちは!
2018年イグノーベル賞の受賞予想ブログ第二弾は、今年からイグノーベル賞担当メンバーになりました綾塚がお送りいたします。

イグノーベル賞は、「笑い、そして考えさせられる」業績に対して送られます。
今回は3人の科学コミュニケーターが受賞しそうで面白い研究を1つずつ紹介しております。イグノーベル賞は何賞があるのかさえ年によって変わるので、当てようというよりも、こんなに面白い研究があった!と言わずにはいられない......というのが本音です。

今回はその第2弾となります!


■イグノーベル受賞予想2 「鼻で天気がわかる?雨が降る前のにおいの正体は?」

雨が降りそうなときのにおい、感じたことはありますか?
雨が多い日本では、このようなにおいをかぐ機会が多いかもしれません。
未来館のトークイベントで「雨のにおいをかいだことはありますか」とお聞きすると、結構な割合で手が上がります。


ですが一体、なぜにおうのでしょうか?


このにおいの仕組みを明らかにした研究が、当時マサチューセッツ工科大学にいたYoung Soo Joung氏らによる研究、「Aerosol generation by raindrop impact on soil」です。


20180903_ayatsuka_01.jpg

Young Soo Joung氏
(淑明女子大学)


研究によると、雨がふりそうなときのにおいの正体は、別の場所の土や草などのにおいなのだそうです。

「え、雨そのもののにおいじゃない!?」


■別の場所のにおいがやってくる仕組みとは

雨雲は移動しますよね。
つまり、雨が降りそうな空模様のとき、近くの別の場所ではすでに降っている、ということがあります。

降っている雨粒の様子を見てみると...?

20180903_ayatsuka_02.jpg

雨粒が落ちてきます。茶色の部分が地面で、地面の中の白丸は土中のスキマです。

20180903_ayatsuka_03.jpg

雨粒が地面に着地しました。雨粒は平たくなります。

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雨粒が土に沁み込むと同時に、土のスキマにあった空気が雨粒の中に入ります。

20180903_ayatsuka_05.jpg

雨粒の中に入った空気の端の一部が小さい粒(エアロゾル)としてはじき出されます。

20180903_ayatsuka_06.jpg

はじき出された小さい粒(エアロゾル)は風に乗って飛んでいきます。

以上の流れはほんの一瞬のうちに起こる出来事です。

雨粒を通して、エアロゾル、という小さい粒、いわば"においのカプセル"が発生していたのです。
このにおいのカプセルに土のにおいが閉じ込められます。
風に乗って私たちの鼻に届き、

「あ、雨がふりそうなにおいだ!」

となっていたのです。


■笑わせられるポイントと考えさせられるポイント

今回の研究はすべて、ハイスピードカメラを使って行われたものです。
下の動画の30秒あたりから水滴の動画が流れます。



MIT News (http://news.mit.edu/2015/rainfall-can-release-aerosols-0114)より


しかも、28種類の多孔質素材を使って、600回ほどの実験をくりかえしたそうです。

仮に、「雨のにおいの正体を明かしたい!」と強く思ったとしても、600回はちょっと...。

色んな素材を集めてきては水をポタポタとたらし、じーっとハイスピードカメラで撮る姿を想像すると...。

よくやるなぁ、と笑えてきます。


一方で、ふだん私たちが"何となく"感じていることは科学技術で解明できるかもしれません。
しかも、その"何となく"に大きな意味があるとしたらどうでしょう。
実際、今回の研究では、遠くの地にいる細菌やウイルスの飛散経路にもなりうるのではないか、と言及していました。
(まだこのことが実証されたわけではありません。)

理由はわからないけど、なんとなく感じること。
そこに、新しい可能性が広がるかもしれない。
このような気づきを与えてくれる研究でもあります。


■おわりに
いかがでしたでしょうか。

今年のイグノーベル賞はいったいどんな研究や取り組みが選ばれるのか、気になりますね!

2018年のイグノーベル賞の受賞者発表&授賞式が下記日時で行われます。
9月14日(金)朝7時(日本時間)

ニコニコ生放送で放送予定ですので是非ご覧ください。
「イグノーベル賞2018 授賞式 生中継<日本語同時通訳>」
また、放送中のコメントは私たち科学コミュニケーターが書きます!

日本科学未来館のイグノーベル賞に関するイベント
9月8日、9日、15~17日の土日祝 科学コミュニケーター・トーク
「笑い、そして考える 2018年のイグノーベル賞!」

9月23日(日)科学コミュニケーター・トーク特別版
「仕掛け人にあえる!きける! イグノーベル賞って何!?」

ニコニコ生放送「イグノーベル賞のすべて!~ 仕掛け人マーク氏に聞く 【日本科学未来館×ニコ生】」
出演:マーク・エイブラハムス氏、未来館の科学コミュニケーター


2018年イグノーベル賞を予想する
その① 現代版"風が吹いたら桶屋が儲かる?"事例集
その② 鼻で天気がわかる?雨が降る前のにおいの正体は?(この記事)
その③ 鏡で自分を見ると食事をおいしく感じる



Author
執筆: 綾塚 達郎(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
科学のおもしろさを教育に活かしたい、という思いで教育業界から科学コミュニケーターへ。なぜ、傘は水をはじくのだろう?この雑草の名前は何?整髪剤を自作できないか?日常的な疑問やアイデアをいつも大切にしています。一緒に世界を探求しましょう!