2017年に世界で販売されたクルマのうち、3分の1がSUVだったといわれている。SUV市場の拡大は20世紀後半にはすでに予想されていたが、ここまでシェアが広がることを予測できた人は少数派なのではないだろうか。

その少数派に含まれる自動車メーカーがある。ドイツのBMWだ。BMWは1999年に同社初となるSUV「X5」を発売。それまで、セダンやスポーツカー、コンパクトカーなどを手掛けてきたメーカーが、SUVのカテゴリーに乗り出したのだ。日本の自動車メーカーは「RV」と呼ばれるようなクルマを多く生み出してきたが、BMWがこうした方向に舵を切ったのは大きな出来事だった。

SUVラインアップは6車種に

BMWのすごいところは、その後のラインアップ充実に関する加速度的な取り組みだ。2004年には「X3」を追加し、2008年の「X6」、2009年の「X1」、2014年の「X4」と次々にSUVの新作を用意。2010年にはMINI(ミニ)ブランドにも「カントリーマン」というSUVを追加設定している。

そうした中、さらにラインアップを充実させるために追加したのが「X2」だ。BMWのセダン、クーペ、カブリオレ、ロードスターのモデルは1~8までのラインアップで構成されているが、このX2の登場により、SUVのラインアップは「X1~X6」までとなった。世の中で売れているクルマの3分の1がSUVだと冒頭に述べたが、BMWのラインアップにおけるSUV比率は、世の中のシェアを遙かにしのぐことになったといえる。

BMWが生み出した6番目のSUV「X2」

低い車高が特徴、スタイリッシュな「X2」

BMWではSUVのことをSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼んでいるが、X2についてはSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)というジャンルだと主張している。

X2は同じSUVであるX1をベースとし、スタイリッシュなボディを与えたモデルだ。ホイールベース(前輪と後輪の車軸を結んだ距離)はX1と同じ2,670mmとなっている。ただし、X1が1,600mmの全高を持つのに対し、X2は1,535mmと車高が低め。スタイリングはもとより、機械式駐車場への入庫確率の向上などを行っているのだ。ただし、全幅は1,825mmと1,800mmを超えるので、車幅で制限を受けることもあるだろう。

この車高であれば機械式駐車場に入れられる可能性も高まるはずだ

全体のスタイリングを見ると、X1は2ボックス車を大きくしたようなシルエットだが、X2はスポーティな4ドアを大きくしたようなイメージとなる。BMWのアイデンティティでもある「キドニーグリル」(キドニーとは腎臓の意味。BMW伝統の形)には、上下の高さを抑えたクーペライクなデザインを採用。サイドウィンドウはリヤに向かって絞り込まれた形状で、翼断面を思わせるスタイリッシュなものとなっている。

キドニーグリルは高さを抑えてクーペライクに

ユーザーの若返りも大事な使命

X2はSUVのラインアップを充実するということ以上に、BMWのユーザーを若返らせるという大きな役割も担っている。スタイリッシュなSUVとしたのもその一環だし、プロモーションに香取慎吾さんを起用していることにも大きな意味がある。そして、忘れてはならないのがコネクティッド機能の部分だ。

プロモーションには香取慎吾さんを起用

X2には「BMW コネクテッド・ドライブ」が標準装着されている。深刻な事故が発生した際、クルマ側から自動的に緊急事態をコールセンターに知らせる「SOSコール」のほか、クルマの整備関係データをディーラーに発信し、的確な整備を受けられるようにする機能などが備わっており、万が一のトラブルの際にも迅速な対応が可能となっている。

さらに、オーナーはスマートフォンに専用アプリ「My BMW」をインストールすることにより、乗車前に車外から空調を作動させたり、ドアの解施錠を行ったり、パソコンやスマホで設定したドライブコースをナビに連動させたりすることができる。車内通信モジュールを利用すれば、ニュースの閲覧やTwitterのディスプレイ表示・読み上げなども可能となる。

室内・荷室は充実の広さ

SUVというジャンルである以上、ユーティリティの部分もしっかりと確保する必要があるだろう。X2を真横から見ると、リヤゲートにはそこそこ傾斜した形状が与えられている。ラゲッジルームの容量を少しでも多く確保するなら、この部分は垂直に近いほど有利なのだが、あまり垂直にしてしまうと、スタイリングを台無しにしてしまう。この傾斜したリヤゲートでありながら、ラゲッジルームの容量は470リットルと広大だ。ちょっとクラスは違うが、トヨタ自動車「C-HR」のラゲッジルーム容量が318リットルだから、かなり広いことがわかると思う。

ラゲッジルームはかなり広い

ラゲッジルームの使い勝手は容量だけでは決まらない。リヤシートをどのように倒せるかがとても重要になる。多くの国産車は、6対4でシートバックを前倒しにできるタイプのクルマが多いのだが、X2は4対2対4の3分割方式になっている。なので、右を4倒すこともできるし、そこに2を足して6倒すことも可能だ。センターの2だけを倒して長尺物を搭載することもできる。この自由度の高さは、さまざまな遊びに対応すること間違いなしだ。

シートの倒し方にも多くのバリエーションがある

室内の広さも余裕がある。フロントシートはたっぷりとしたサイズで、視界も開けているから、クルマを走らせているときも、ゆったりとした余裕のある雰囲気が伝わってくる。自分とパートナーというドライブならベストなパッケージングといえる。リヤシートも足元の広さは十分にあるのだが、シートクッションの前後長が少し短く、ヘッドルームも窮屈ぎみなので、長距離ドライブではちょっと疲れるかも知れない。

BMWなら当たり前? 走りはスポーティーで気持ちいい

試乗車は2リッターの4気筒ターボエンジンを搭載する「xDrive20i」というグレードだった。エンジンの最高出力は192馬力。トルクカーブがフラットなので扱いやすい特性だ。ミッションは8速とクロスレートなので、パドルシフトを使ってこまめにアップ&ダウンを繰り返しながら、ワインディングを走るとなかなかの気持ちよさだ。

ワインディングでは気持ちのよい走りを楽しめた

ハンドリングはBMWらしいシャープなもの。ステアリングを切ればススッとノーズがインを向いていく。しっかりした直進安定性を示しながらも、そこからのステアで機敏に向きを変えるところは、SUVの「S」の部分(スポーティーであること)を十分に表現しているというイメージだ。車高がある程度は高いので、ロールはそれなりに発生するのだが、ロールによる不安感などがない部分には、BMWのノウハウがいきているのだろう。

(諸星陽一)