京都大学(京大)は、動物の細胞外マトリックス成分であるグリコサミノグリカン(多糖類)を対象とした腸内細菌叢による分解様式を解析し、その分解細菌の中にプロバイオティクス(善玉菌)として知られるある種の乳酸菌を見出したと発表した。

同成果は、京都大学大学院農学研究科の河合桂吾氏(当時)、橋本渉 教授、摂南大学の村田幸作 教授らの研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

  • 研究のイメージ図

    研究のイメージ図 (出所:京都大学Webサイト)

ある種の常在細菌や病原細菌は、動物に共生または感染する際、動物の細胞外マトリックスを標的とすることが知られている。動物細胞が分泌する細胞外マトリックスの主要成分として、グリコサミノグリカン(GAG)が存在する。ヒアルロン酸、コンドロイチン、硫酸、ヘパリンなどは典型的なGAGであり、食品や医療分野で利用されている多糖類だ。

これまでに、ある種の病原細菌、腸内細菌(バクテロイデスなど)、および土壌細菌がGAGを分解することが報告されていたが、腸内細菌叢(集団)によるGAGの分解様式や健康に有益なプロバイオティクスによるGAG分解に関する研究は多くなされていない。

研究グループは今回、ヒト腸内細菌叢をGAGを含む栄養豊富な培地で培養した。その結果、腸内細菌叢は速やかに増殖を開始したが、しばらくはGAGを分解することはなかった。その後、培養数日目から両方のGAGが分解され始め、オリゴ糖を経て、13日後には完全に栄養源として利用された。

これらの結果から、腸内細菌叢には、コンドロイチン硫酸とヘパリンをそれぞれ分解する細菌が存在することがわかった。また、GAGが遅れて分解されることから、腸内細菌叢は、最初に食品由来の栄養成分を優先的に分解し、その後、宿主(ヒト)から分泌されるGAGを分解することが考えられる。

また腸内細菌叢を対象に、バクテロイデスのGAG分解酵素遺伝子を解析したところ、GAG分解酵素遺伝子が高頻度に検出されることを明らかになったとしている。

なお今回の成果に関して研究グループは「今後、腸内における細菌の生存戦略の解明に繋げたい」としている。