北海道大学(北大)は7月26日、耕作放棄地には湿地・草地性鳥類が多く生息していることを明らかにしたと発表した。

同成果は、北海道大学大学院農学研究院の中村太士 教授、森林研究・整備機構森総合研究所の山浦悠一 主任研究員らの研究グループによるもの。詳細は国際学術誌「Agriculture Ecosystems & Environment」に掲載された。

  • 左から、湿性耕作放棄地、乾性耕作放棄地 (出所:北海道大学Webサイト)

研究グループは今回、北海道中央部の石狩・胆振いぶり地方に調査地点を48か所設置し耕作放棄地を含むその地域の主要な6つの土地利用タイプ(湿地、草地、湿性、放棄地、乾性放棄地、農地森林)で鳥類の生息数を調査した。また耕作放棄地は、生育する植物種によって湿性と乾性に区別。観察された鳥類種は4つのグループに分類し土地利用タイプ間での生息個体数を比較し、周辺の開けている土地の面積割合が生息個体数に及ぼす影響についても調べた。

解析の結果、耕作放棄地に生息する湿地・草地性鳥類の個体数は本来の生息地である湿地や草地より少ないものの農地や森林より多い傾向があった。特にコヨシキリオオジュリンなどの湿地性種4種については農地よりも湿性耕作放棄地の個体数が顕著に多くそのため農地が放棄されることにより個体数が増加すると予想された。

さらに乾性放棄地で高い値を示す草地性種もみられた。一方で農地性または森林性鳥類の個体数は、それぞれ主な生息地である農地または森林で多く農地性と森林性鳥類の個体数はいずれも耕作放棄地や湿地草地では少ない傾向にあったとしている。加えて、周囲の開放地の割合が高いほど湿地草農地性鳥類の個体数が増加する傾向も見られた。

今回の成果を受けて研究グループは、今後、残された湿地や草地を守るだけでなくその周辺の耕作放棄地を生息地として評価することで、湿地・草地性鳥類の保全につながることが期待されるとしている。