コミュニケーションアプリの「LINE」上で、QR/バーコードによる決済や送金などが可能な「LINE Pay」。2017年5月時点で、すでに日本国内の登録ユーザーが3000万人を超えた。LINEの月間アクティブユーザー数が7500万人(2018年3月時点)であることを考えると、約半数がLINE Payのアカウントを開設している計算だ。

順調に登録数を伸ばしているようだが、LINE Payは手を緩めるどころか、キャッシュレスを浸透させるべく、2018年8月1日から“決済革命”を本格的に開始すると発表した。はたして、決済革命とはどのような取り組みなのだろうか。

最大5%のインセンティブでキャッシュレスを促進

同社の提案する決済革命は大きく分けて2つ。1つが利用者向け、もう1つが加盟店向けのサービス強化である。

2018年6月、LINE Payでは利用実績に応じてユーザーを4色にクラス分けする「マイカラー」制度をスタートさせた。今後1年間、LINE Payを利用すると、カラーに応じて「決済額の0.5%~2%」のLINEポイントが、インセンティブとして提供される仕組みだ。

決済革命が本格化する8月からは、付与率を「固定3%+マイカラーに応じた0.5~2%」へ変更することで、コード決済時のインセンティブを最大5%に増加。ポイント付与決済の上限額も10万円/月から100万円/月に変更された。なお、マイカラーは前月20日までのLINE Pay利用度によって決まるという。

インセンティブが最大5%にアップデートされる。カラーはホワイト、レッド、ブルー、グリーンの4段階

たとえばファミマTポイントカードは、最もポイントレートの高いゴールドランクでさえ200円につき3ポイント(1.5%)。それを考えると、期間限定とはいえ、最低でも3.5%受け取れるLINE Payのレートは魅力的だといえよう。

マイカラー制度で最もポイント付与率の高い「グリーン」になるには、「決済金額10万円/月以上:月間5人以上のユーザーへ送金」という条件をクリアしなければならないが、とりあえず今のうちに3.5%のポイントだけでも受け取っておくのが賢い選択かもしれない。

手数料無料化と決済コミュニケーションでSMBを取り込む

いかに利用者が使いたいと思っても、使える店舗がなければ話にならない。そこで同社は、加盟店向けの決済革命として、店舗用アプリをリリース。初期費用が無料なだけでなく、3年間の決済手数料無料化を発表した。

LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏は「いままで日本がキャッシュレス化できていなかった原因の1つに、コスト的な問題でSMBと呼ばれる中小規模事業者がキャッシュレス対応できなかったことが挙げられるでしょう。日本の小売りではSMBが大半を占めます。この課題を解決しない限り、おそらく日本のキャッシュレス化は進みません」と、日本でキャッシュレス決済が普及しなかった背景を分析する。

LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏

自分の生活圏内で利用できる店舗が少なければ、ユーザーはキャッシュレス決済を使う気にならないだろう。そもそも「この店はバーコード決済を使えるのだろうか」とイチイチ考えなければならないこと自体が億劫である。考える余地もなく、「当たり前に使えることがわかる環境」を整えることが必要なのだ。

「そこで、我々はいままでコストでしかなかった決済フローを、アセットに変えていきたいと考えました。たとえば、LINE Payのメッセージ機能を使えば、決済後自動的にお店のアカウントと友だちになれるので、継続的にアプローチできるようになります。今後もショップカード機能やクーポン作成機能を提供していきたいですね」(長福氏)

たとえ手数料が無料だとしても、スタッフの作業負担が増加するだけでは意味はない。顧客とのコミュニケーションを促進できるというわかりやすいメリットを提示することで、SMBもキャッシュレス化に取り組みやすくなるというわけだ。

店舗用アプリでユーザーのバーコードを読み取る様子。ユーザーが店舗用アプリのバーコードを読み取る決済方法も可能

また、そのほかの加盟店向けの施策として、LINE Payでオリジナルデバイスを開発していることを発表した。現在LINE Payでは、店舗用アプリに加えて、印刷されたQRコードを設置する「PRINTED QR」や、ATMのような見た目の「Star Pay 端末」、既存オペレーションを変えずに済む「POSレジ改修」といった加盟店向けのサービスを展開しているが、そこに卓上の決済デバイスが新たに加わる形だ。

「まだ開発中ですが、新デバイスはPOSの改修やお店用のスマホが必要ないので、従業員が2~10名程度の小規模店舗に使ってほしいと考えています。ポートフォリオを拡大することでよりさまざまなニーズに対応していければ」(長福氏)

オリジナルデバイスのイメージ
加盟店向けサービスポートフォリオ一覧

現在LINE Payと契約している加盟店は9万4000カ所。すでに非接触型の「QUICPay」に対応することが決まっており、今後は利用可能な店舗100万店を目指す。

いまや日本で最も使われているコミュニケーションツールといっても過言ではないLINE。アプリ自体はすでに7500万台のスマホにインストールされており、ユーザーの土台はできあがっているといえよう。利用店舗の環境整備とインセンティブのようなきっかけがうまくかみ合えば、そう遠くないうちにLINE Payの決済革命がキャッシュレス社会を実現させるかもしれない。

(安川幸利)