コンカーは7月30日、都内で記者会見を開き、「中堅中小企業の間接費/間接業務に関する実態調査」に加え、中堅中小企業向けの出張管理業務の高度化を目的にエボラブルアジア、ボーダーと業務提携を発表した。

好調な中堅中小企業向けビジネス

冒頭、コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏は「中堅中小企業向けビジネスは極めて好調だ。また、昨年発表したクラウド型経費管理サービス『Concur Expense Standard』と請求管理ツール『Concur Invoice』の存在感が増してきた」と、胸を張る。

実際、2018年における年間契約額の中堅中小企業の構成比は前年比12ポイント増の22%、契約金額は同105%増の見通しになっているほか、契約件数では全体の52%を見込んでおり、大手企業向け事業を上回っているという。

  • コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏

    コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏

中堅中小企業における導入が急増しており、同社では中堅中小企業向けビジネスを拡大すべく、環境分析として実態調査を行ったというわけだ。三村氏は「直接費に対する問題意識が高いということは予見していたが、意外にも直接費以上に間接費に対する問題意識を持っていることが判明した」と、述べた。

実態調査では、従業員数30~999人の企業における経営者・経理部門(310サンプル)を対象にオンラインでのアンケート調査を行い、調査内容は直接比/間接費の業務プロセス改善の必要性、間接業務(経費精算、請求書管理、出張手配・管理)の各業務プロセスにおける課題など。

今回の調査により、特に経費精算業務、請求書支払業務においては約7割が業務プロセスの改善が必要と回答し、出張手配については、不正・違反防止のためのプロセスの厳格化と、手配の効率化という相反する課題を抱える企業が多数あることが分かったという。

具体的には、中堅中小企業の75%が直接費に関する業務プロセスの改善に必要性を感じると回答し、それとほぼ同数の76%が間接費に関する業務プロセスにも改善の必要性を感じると回答。昨今では経済環境の変動が多く、商品やサービスの開発・販売に直接紐づく直接費同様、経費精算や請求書管理など、本業との関連の薄い間接費に関する業務プロセスについても課題意識が高い傾向となった。

経費精算業務のプロセスについては、69%が改善の必要を感じると回答し、特に経理の負担、プロセスの標準化に対する意識が高く、中堅中小企業では経費精算に特化したシステム導入や人材が限られていると推測されることから、部門・個人に業務プロセスが依存し、経費精算の申請遅延の発生など経理担当者の負担が大きくなっていると指摘。さらに、59%が経費の可視化に課題を感じていることから、従業員への適切な経費使用の促進が実現できていないことが見受けられているという。

  • 経費精算業務の課題

    経費精算業務の課題

請求書支払業務のプロセスに関しては、67%が改善の必要を感じると回答し、特に請求書データの入力負担に対する意識が高く、経費精算業務と同様にシステムの導入が進んでおらず、人材が限られていると推測。紙の請求書データ入力が負担となり、ペーパレス化による業務軽減が望まれているという。また、58%が経費の可視化に課題を感じていることから、経費使用の把握や集中購買による戦略的な間接費削減に関心があると見受けられるとしている。

  • 請求書支払業務の課題

    請求書支払業務の課題

加えて、不正・違反を防止するために、出張手配プロセスを厳格化したいという企業は約半数の49%にのぼる反面、出張手配プロセスの簡素化を望む企業は54%であり、企業は厳格化と簡素化という相反する課題に直面している。

  • 出張手配の業務プロセス改善の必要性

    出張手配の業務プロセス改善の必要性

企業が問題意識を抱えているからこそ、支援することで事業拡大

調査結果を踏まえ、三村氏は「これまでは手組、パッケージ製品と経費精算システムは変遷してきたが、現在ではクラウドが主流になりつつある。これにより、利用システムに企業規模の差がなくなり、大手企業に見劣りするシステムを使う時代は終焉を迎え、これからは中堅・中小向け製品で妥協せずに全セグメント向け製品を有効活用していく時代だ」との認識を示す。

従来、経費精算システムは手書きやエクセル、単なるワークフローツールだったが、今後はワークフローツールを中核に据え、ペーパレス(領収書の電子化)、ガバナンスの強化、予算管理、分析ツール、トータルアウトソーシング、請求書管理トータルスペンドマネジメント、オープンプラットフォーム、出張管理ビジネスとラベルマネジメントを付帯した経費精算システムが付随した大手企業並みの高度なものへと進化が進むという。

そこでコンカーでは「欧米に遅れぬよう、最速のスピードで日本の中堅中小企業に世界標準のサービスを提供する」ことをビジョンとして掲げている。というのも、2017年に米国では中堅中小企業の売上構成比が56%、2018年上期はカナダでは83%、オーストラリアでは59%、英国では57%をそれぞれ占めており、急激に導入が加速していることが背景にある。

同ビジョンのもと、2022年に売り上げが2017年比19倍、企業規模別の売上構成比は46%、規模別の件数構成比は85%を計画し、中堅中小企業に強いブランドイメージを構築していく考えだ。

  • コンカーのビジョン

    コンカーのビジョン

事業拡大を図るためにエボラブルアジア、ボーダーと連携

では同社の製品戦略は、どのような方針で進めていくのか。この点について三村氏は「他社の中堅中小企業向け経費精算クラウドは、経費精算の自動化やモバイル化、領収書の電子化などカバー範囲が狭く、広範な間接業務の改革には向かない」と指摘。

これまで、同社のStandard版は経費精算の申請業務に「Concur Request Standard」、精算業務に「Concur Expense Standard」、経費支出分析をサポートする「Concur Business Intelligence Standard」の3つのモジュールを提供していた。

今後、2018年後半~2019年前半にかけて予算管理の「Concur Budget Standard」」(リリース予定は2018年後半)、経費精算ではアウトソーシング業務の「Concur Audit Service Standard」(同)、請求書管理ではアウトソーシング業務の「Concur Invoice Capture Standard」(同)、申請業務の「Concur Invoice Standard PO/PR」(2019年前半)、電子化業務の「Concur Invoice Standard e文書」(同)の5つのモジュールをリリースする予定だ。

  • Standard版の概要

    Standard版の概要

同氏は「これにより、中堅中小企業でも大手企業並みの業務品質を教授できる。経費精算から請求管理、出張管理において省力化、ガバナンス、可視化、ペーパレスを実現し、広範にカバーすることが可能だ。中堅・中小企業の間接費改革を支援する」と、強調した。

  • 広範な領域をカバーするという

    広範な領域をカバーするという

そして、事業拡大をより強固なものとするため、エボラブルアジア、ボーダーとConcur Expenseを連携させた中堅中小企業向けの出張手配から経費精算までの統合サービスの提供を開始する。

エボラブルアジアは航空会社とのアライアンスにより、国内航空会社全路線の料金比較サービスを提供し、安価、かつ出張者ニーズを捉えた出張手配サービスを提供している。一方、ボーダーは煩雑な海外出張手配をチャットベースで行うクラウド海外出張手配サービスを展開している。

両サービスとConcur Expenseと連携することで、自社の出張規程を遵守させつつ、国内外の出張手配を高度化、利用運賃の経費精算までを一括で処理するサービスを提供するという。ボーダーとは小規模事業者における出張の海外手配向け、エボラブルアジアとは小規模・中規模事業者の出張の国内手配向けで連携し、両社の実績データをAPI経由で経費精算に連動させる。なお、2019年にはConcur Expense Standardをリセールパートナー向けに展開していくという。

  • 連携の概要

    連携の概要

  • API経由で外部サービスの実績データと連動する

    API経由で外部サービスの実績データと連動する