海外旅行保険では、持病や既往症があると加入に制限があります。保険の加入前の持病や既往症に制限があるのは当然ですが、海外旅行に行くならきちんと補償をつけておきたいところです。海外旅行保険と持病・既往症について解説します

◆持病があるなら海外旅行保険は必須
海外旅行に行く際に持病(既往症)がある人は、事前の対策が必要です。日本よりも医療費が高額な国ならなおさらです。海外旅行保険は加入以前の持病(既往症)があるケースでは、契約にどうしても制限がでてしまいます。海外旅行保険と持病(既往症)をテーマに取り上げて、補償や加入のポイントについてお話します。

◆海外旅行保険でいう持病(既往症)とは?
最初に持病について確認しておきましょう。持病(既往症)とは、海外旅行前から疾病があり、医師・医療機関で治療を受けていることをいいます。

現在、医師にかかって治療、継続して薬を投薬して治癒しているかがポイントです。持病(既往症)を気にする人はほとんどのケースで該当するでしょう。念のためですが、持病があるのを黙って海外旅行保険に加入するのは告知義務違反です。言わなければ分からないというのは甘い考えで、後で面倒なことになるだけですから注意してください。

◆海外旅行保険で持病(既往症)は補償されない?
海外旅行保険での持病の取扱いについてですが、通常は補償されません。そもそも海外旅行保険の契約の引き受けができないケースもあります。仮に海外旅行保険の契約ができても、持病の悪化を保険金支払の対象とはしないケースがほとんどですから、通常は持病があるとそこに補償をつけることが難しいということになります。

基本的な考え方として保険事故の発生原因が、保険契約の前にすでに起きていますから発症する可能性が非常に高く、保険の引受リスクも高くなるのです。保険上の考えだけで言えばその分の割増を取ればいいのですが、それでもリスクが高いということです。

◆海外旅行保険の主な免責条項
海外旅行保険で一般的に保険金支払いの対象とならない、加入に制限がある事項について主なものをいくつか列挙します。
保険契約者・被保険者・受取人の故意
妊娠・出産・早産・流産
歯科疾病
加入前の持病(既往症)などです。

心臓に持病があるというようなものでなくても、歯科疾病なども補償の対象からは通常外れています。たかが歯の痛みと言っても痛くなってからでは旅行どころではありません。妊娠や歯科治療なども特約を付帯して補償するものもでてきていますが、加入前に内容を必ず確認するようにしてください。

◆海外旅行保険で持病(既往症)を補償する商品は?
もともとAIU(現AIG損保)が海外旅行保険で持病(既往症)の悪化に対応する補償を発売していましたが、このところ全社ではありませんが広がりをみせています。「疾病に関する応急治療・救援費用担保特約」などの付帯で持病に対応しています。興味のある人は「疾病に関する応急治療・救援費用担保特約」をインターネットで検索してみてください。

おおよその目安として旅行期間31日位まで、保険金額300万円程度など、加入できても何らかの制限は残りますので規定をよく読む、説明をよく受けることは忘れないようにしてください。これらの制限から考えられることは、持病にかかる補償は一般的な短期の海外旅行を想定したものです。現地に長期滞在する旅行や、留学や駐在となると事情が変わってきます。

◆持病(既往症)を補償する場合の注意点
仮に短期の観光目的の海外旅行で、持病を補償する海外旅行保険に加入できたとしてもまだ気をつける点があります。こうした持病に対応する海外旅行保険の補償は、一般的に旅行前から発病している持病が、「海外で急激に悪化」した結果、渡航先で治療を受けた場合などに対応するものです。

つまり日本国内にいるときから海外旅行中も健康上必要となる薬の費用、あるいは日常生活から旅行中も継続して必要な投薬などは対象外のこともあります。つまり旅行前からの持病に関わるものなら、どんなものでも保険金が支払われるわけではないということです。持病のある人は、何がどこまで対象になるものなのか事前によく確認してください。

◆海外旅行保険で対処できないならどう対処するの?
海外旅行保険だけでなく、旅行前に現地の情報収集やできることなどはきちんと準備しておきましょう。

■主治医に相談
まずはかかりつけの医師に相談してください。渡航先の事情や旅行期間などによってもさまざまなことが考えられます。また現地に知り合いがいるとか、現地の事情をよく知った国に行くのとそうでないのとでは大きな違いです。

■常備薬、旅行用の英文カルテなど
海外でも薬の処方は当然受けられるでしょうが、使いなれた薬があればそれが一番です。旅行期間も考えて余裕を持った量を持参するようにしましょう。また持病の悪化となれば緊急のこともあります。このとき英文カルテ(要は現地で使えるもの)などがあるかないかではかなり違います。こうしたことも主治医によく相談してください。

常備薬が必要なケースでもスーツケースを間違えて運ばれた、紛失したなどのことも考えられます。あれこれ考えたら海外旅行に行けませんが、薬が常時必要なら可能なリスクヘッジはしておきましょう。

また海外旅行に同行する家族や知人もあなたの持病や既往症のことは知っているでしょうが、これらの薬や英文カルテに関する情報も同行者と共有しておいてください。自分一人が分かっていてもその自分が倒れてしまったら役に立ちません。

現地の医療事情などに詳しくない場合は、事前によく確認しておきましょう。外務省のサイトで現地の事情を調べることができます。

◆海外療養費の支給
海外で受ける診療が日本国内で認められている医療行為や保険診療のものであることが必要ですが、国民健康保険の適用で海外療養費の支給を受けることができます(日本国内に住民票のあるもの)。簡単に言うと渡航先で自己負担した医療費について、帰国後に請求して取り戻すというものです。

海外旅行で出国する前に、市区町村の窓口で診療内容明細書・領収明細書の用紙を取りつけます。渡航先で病院にかかった場合、この書類を記入してもらいます。帰国後にその書類と翻訳文を添付して提出し、海外療養費の支給を受けます。事前に書類をもらっておいて、現地で記入してもらうのと帰国後の請求に翻訳文も必要なので少々手間はかかります。

負担した医療費のすべてが払われるわけではありませんが、こうした制度を知らずに渡航して帰国してしまったら、後からの請求は現実問題厳しいものがあります。医療費の負担を少しでも軽減できるように、こうしたこともしっかり準備しておきましょう。

持病(既往症)がある場合、海外旅行保険で補償できるか、補償する特約などはあるか、さらに補償されるならその内容などしっかりチェックしておきましょう。以前よりもこれらの補償の特約などは少しずつ増えていますが、気をつけたいことです。

※損害保険会社ごとに、海外旅行保険の内容、名称、特約名など異なることがあるのでご留意ください。

文=平野 敦之(マネーガイド)