もっとズームアップがしたい、遠くの被写体を引き寄せて撮りたい――。ソニーの高級コンパクトデジカメ「Cyber-shot DSC-RX100」シリーズのユーザーなら、そんな望遠撮影への憧れを一度は感じたことがあるはずです。特に、「DSC-RX100M4」や「DSC-RX100M5」といった近年のモデルではAFや連写性能が大きく向上し、動きモノの撮影に強くなっているからこそ、望遠で撮りたく感じるケースは多いでしょう。

そうしたユーザーの声に応え、シリーズ共通のアイデンティティーである小型軽量ボディを維持したままズーム倍率アップを図ったのが、今回取り上げる話題の新製品「DSC-RX100M6」です。

  • ソニーが6月末に発売した「Cyber-shot DSC-RX100M6」。実売価格は税込144,000円前後

レンズは、35mm判換算で24~200mm相当の光学8倍ズームレンズを搭載。24mm相当というワイド端の広さを損なうことなく、テレ端の長い焦点距離を実現しています。既存モデルのDSC-RX100M5と比較しながら、その進化ポイントを見ていきましょう。

“胸ポケサイズ”を維持しながらズームを高倍率化

RX100M6の実機を触ってとにかく感心したのは、RX100M5の2.9倍ズームから8倍ズームへと大幅に高倍率化したにもかかわらず、ボディのサイズと重量がほとんど同じであることです。これまでと同様の薄型ボディに8倍ズームを搭載したRX100M6を手に取った瞬間、その凝縮感が伝わり、物欲を強く刺激されたのは筆者だけではないでしょう。

  • 外形寸法は、RX100M5(左)が幅101.6×高さ58.1×奥行き41mmで、RX100M6(右)が幅101.6×高さ58.1×奥行き42.8mm。奥行きがわずかに増していますが、幅と高さはまったく同じ

  • 重量は、RX100M5(左)が約299gで、RX100M6(右)が約301g。デザインはほぼ共通ですが、レンズバリアのサイズや前面にあるレンズ名の刻印の位置がやや変化しています

電源ボタンを押すと前面のレンズバリアが開き、レンズが勢いよくせり出します。起動時間はRX100M5の約1.7秒から、RX100M6では約1.4秒へと高速化しました。いっぽうで、終了時間は少々遅くなっています。電源ボタンを押してからレンズが格納されるまでの時間は、RX100M5が約1.5秒で、RX100M6は約1.9秒(どちらも実測値)です。もちろん、シャッターチャンスを逃さないという点では、起動時間が短くなったことを評価したいと思います。

  • 起動直後のズームワイド端の状態。この状態では、RX100M5(左)よりもRX100M6(右)のほうが奥行きが短くなっています

  • ズームをテレ端にした状態。RX100M6(右)は、レンズ部が大きくせり出します。ズームスピードは「標準/高速」の2段階から選択可能。動画の撮影中は、自動的にズームスピードが低下し、作動音が静かになります

レンズの開放値は、RX100M5がF1.8~2.8であるのに対し、RX100M6はF2.8~4.5。ワイド端/テレ端ともに約1と1/3段、暗くなっています。高倍率と小型軽量を両立するには仕方ないところです。弱点というよりは、機種ごとの個性といったほうがよいでしょう。

50mm相当の焦点距離でも8cmまで寄って撮れる

レンズの最短撮影距離(レンズ先端から被写体までの距離)は、RX100M5がワイド端で5cm、テレ端で30cm。RX100M6はワイド端が8cmで、テレ端が100cm。

この数値だけを見ればスペックダウンしたよう感じますが、実際にはRX100M6はズームの中間位置(50mm相当付近)でも約8cmまで近寄ることができるので、最大の撮影倍率はむしろ向上しています。植物や小物などのクローズアップ撮影用にも好適だと感じました。

  • 細かい部分では、ズームレバーの改良が見逃せません。RX100M5(左)ではレバーの突起が指に当たってやや痛く感じますが、RX100M6(右)では指の当たる部分の面積が拡大し、そこに小さな凹凸が加わったことで感触がよくなっています