俳優の山崎賢人が主演するフジテレビ系ドラマ『グッド・ドクター』(毎週木曜22:00~)が、初回視聴率11.5%、2話も10.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)と、好調なスタートを切った。自閉症スペクトラム障がいでコミュニケーション能力の発達に偏りを抱える一方、驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群の主人公という難役に挑む山崎をはじめとする出演者たちに、「すべての役者さんが本当に魅力的でした」「お芝居が素晴らしすぎました」「命の尊さを改めて教えられた」など、視聴者から絶賛の声があがっている。

そんな今作を裏側で支えているのは、実は通常のドラマ制作スタッフだけではない。医療という高度な専門分野を描くため、「医療監修」として、複数の現役医師が携わっている。小児外科分野で医療監修を担当する杏林大学医学部の浮山越史教授に話を聞くと、リアリティにこだわる制作側と、それに応えようとする医師たちの共同作業によって、作品が作り上げられていく姿が見えてきた――。

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    山崎賢人=『グッド・ドクター』7月26日放送の第3話より (C)フジテレビ

クランクイン前から入念に指導

そもそも「医療監修」とは、どんな役割なのか。浮山教授は「『グッド・ドクター』では、台本の専門的な部分が『○○で△△する』となっていることがあるので、そこを埋めていく作業。それから、手術シーンの1人1人の動きをつける作業。執刀医については、皮膚を切る時のメスの持ち方とか、反対の手の置き方とか、最初に何と言って手術を開始するのか、そういう指導もしています」と説明する。

さらに、クランクイン前には、出演者たちにハサミの持ち方や糸結びの仕方といった、手術における基本的な動作を指導。藤木直人演じる高山誠司は、小児外科医として日本トップクラスの腕前の持ち主という役柄であることから、特に入念に教えたという。

そんな藤木は、今回で医者役がテレビドラマ10作目ということもあって、かなり筋が良いそう。事前に指導用のビデオを見て練習しており、「第1話では、藤木さん本人が糸結びしているシーンが放送で使われました。すごくうまいと思います」と絶賛している。

一方、山崎と上野は、浮山教授の勤める杏林大学病院に見学に来た。「小児外科の外来や病棟で実際の患者さんに会ったり、手術室でどんな器具や機器があるのかとか、お産の際に赤ちゃんを取り上げて置いておく台を見たり。それから救急外来の現場も見ていかれました」と、さまざまな質問をぶつけながら勉強していたそうだ。

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    手術シーンの藤木直人(中央)=『グッド・ドクター』7月12日放送の第1話より (C)フジテレビ

山崎の演技に「非常に好感」

山崎の演じる役は、そうした小児外科としての知識に加え、自閉症スペクトラム障がいという要素もある。この部分は別の医師が医療監修を担当しているが、浮山教授は「相当お話を聞いて役を作っていますよね。1つのことをやってるときには他のことには目がいかないといった原則を曲げないようにしてるんですが、僕らが担当するリハーサルの時にも、『これだと湊がいっぺんに2つのことをやってしまうんですけど、それでいいんですか?』と監督に確認したりしています」と感心した。

現実の世界でも、コミュニケーションで苦労している小児外科医の先生はいるそうだが、「小児外科医は家族の方に信頼してもらわないと手術もできないですし、子供の命を預かるというプレッシャーも非常に大きいですから、精神的にタフじゃないとやっていけない部分があります。だから湊は本当に大変ですよ」と思いやりながら、「とにかく山崎くんは非常にうまい」と太鼓判。「子供のためならガイドラインを破っても、上司のことを気にしなくても、助かる生命の可能性を追求するということは、どんな医者も最初は持っているんですよ。その純粋な気持ちを、山崎さんはそのまま出してくれるので、非常に好感が持てます」と評価した。

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    第3話より (C)フジテレビ

また、撮影当日の動きなどを見て、医療監修としてセリフなどを変えたい部分が出てくることがある場合、役者によっては、事前に覚えた台本に変更が生じることに難色を示す人もいるそう。だが、山崎、上野、藤木の3人については「本番当日にセリフを難しい言葉に変えてもフレキシブルに対応してくれるので、本当に助かります」と感謝する。