現在、テレビ朝日系全国ネットにて好評放送中の特撮テレビドラマ『仮面ライダービルド』と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の劇場版が、2018年8月4日より全国ロードショー公開される。
2018年2月から始まったテレビ放送が半年間の折り返し地点を迎える時期にきた『ルパパト』の映画タイトルは『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャーen film(アン フィルム)』。ギャングラーの作戦によってルパンレッドとパトレン1号が異世界に飛ばされ、両戦隊にかつてない危機が訪れる。そして、事件の鍵を握る「名探偵」エルロック・ショルメの秘密とは……?
今回ご登場いただくのは、本作のメイン監督としてテレビシリーズ第1、2話をはじめ主要なエピソードを手がけた杉原輝昭監督。「仮面ライダー」と「スーパー戦隊」それぞれの作品で助監督を務め、今回で初めて劇場映画の演出に挑む杉原監督に、作品の見どころや「ヒーロー」を描くことのやりがい、面白さを語ってもらった。
――杉原監督は「スーパー戦隊」と「仮面ライダー」、両方のシリーズに助監督としてつかれていたとうかがいましたが、2つのシリーズの「違い」というものがあれば、どんなところでしょうか。
作品的に大きく違うのは、対象年齢層でしょうね。やや「仮面ライダー」のほうが上に設定されています。たとえば「仮面ライダー」のほうは、変身したキャラクターになってからも、しっかりしたお芝居がある。そういった部分でスーパー戦隊とは違うなと感じました。
――「スーパー戦隊」の場合、クライマックスには巨大化した怪人と巨大ロボットが戦いますから、そこでお芝居をひっぱるというより、戦いに特化している部分がありますね。そういった作風の違いがそれぞれの個性となって表れていると思いますが、今回の『ルパパト』のメイン監督を務められるにあたって、杉原監督なりに巨大ロボ戦のアイデア出しなどはやられていたりしますか。
僕が「戦隊」の現場に来て、ロボ戦というものに携わらせてもらったとき、以前からずっと疑問に思っていたことが明確になったんです。それは、巨大ロボットと周辺のビル・建物との比率の問題です。アクションの都合上ではあるのですが、建物に比較してロボットがデカすぎるんですよね。最近の都会だと、どのビルも大きいじゃないですか。だから、ビルの高さがロボットの腰くらいしかないと、それはとんでもない大きさのロボじゃないか、って印象になってしまうんですよ。反対に、ロボ基準で考えると今どきそんな低いビルばっかりじゃないでしょうってね。
――巨大怪人とロボットの格闘を見せるにあたって、ビルの大きさは「見え方優先」で低いものが使われていたということですね。
ロボットの動きも、ゆっくりと重厚にというよりは、街の中をスピーディに駆け回り、乱立しているビルの合間をぬって敵と戦うという、高速移動のイメージがあったほうが、新しくてカッコいいかなと思ったんです。そこで特撮監督の佛田(洋)さんと相談して、ロボ戦はミニチュアよりもCGの割合の多い画面にしていただきました。
――先ほどのお話ですと、もはやステージに建てたミニチュアのビル街にロボットを立たせるのでは、動きの面でも移動スペースの面でも撮影しきれないですね。
そうなんです。もちろんミニチュアセットの実在感も大事にしていまして、今までは普通に飾っていたビルでも、アクションのギミックとして使えるようにというところを考えて撮影を行っています。
――今回は快盗と警察という2つの戦隊が「VS」の関係にあるという、テレビシリーズでは過去に例のないパターンを導入していますが、パイロット(第1、2話)を撮るにあたって杉原監督が考案したアイデアは、どういうところに生かされているのでしょう。
今年の「スーパー戦隊」が「VS」だというのは、僕が監督をやることに決まる前から固まっていました。「VS」もそうですし、すべてにおいて「新しいことをやろう」という意気込みで始まった「スーパー戦隊」なので、ヒーロー像も今までにない「斬新さ」を打ち出そうと考え、それをルパンレンジャーのほうに集約させてもらいました。ルパン側でアクションの見せ方や、芝居の仕方などに新しい要素を盛り込んでいる一方で、今までの「スーパー戦隊」の歴史の中で良いところ、伝統的な部分を受け継ぐ、というのをパトレンジャー側に入れ込んでみました。それがそのまま、2つの戦隊の対比になれば、と思っています。
――放送前では、VS戦隊にすることでルパンレンジャー、パトレンジャーのどちらかに子どもたちの人気が偏ってしまったら大変だな、とわずかに心配しましたが、いざ番組が始まると、作り手のみなさんの狙い通り好対照な2つの戦隊が絡みあって、ルパンレンジャーもパトレンジャーも魅力的なヒーローとしてすぐに親しまれていたようです。
それはうれしいですね。2つの戦隊で3人×3人、そしてこれから新たにノエルという人物が加わって、子どもたちも大人のファンの方も、自分たちの"推し"を見つけるのが楽しいかもしれないですね(笑)。