キングジムは7月25日、クラウドファンディングにより市場ニーズを把握し、実際に商品化を行うプロジェクトを同日より開始した。

  • 7月25日午前、プロジェクトはスタート

クラウドファンディングにより、製品化の判断を行う商品は、新感覚の電子ツール「カクミル」で、同社がすでに製品化している卓上メモ「マメモ」の後継ともいえる製品。

  • 電子ツール「カクミル」

4.3インチの液晶を搭載し、手書きメモのほか、ToDoリスト、カレンダー、電卓、時計の機能を持つ。重要なメモに対しては、時間になるとアラームが鳴るように設定できる。

  • 搭載する5つの機能

単三アルカリ乾電池(あるいはエネループ)4本で駆動し、加速度センサーも内蔵し、入力と表示で画面表示を自動で反転する。

  • 乾電池駆動で加速度センサーも内蔵

価格は1万円から1万数千円を想定しているという。

同社は10人に1人がほしいと思う商品を製品化することにしているが、今回の製品は、社内では、スマートフォンでいいのではないか、1万円デバイスを買うのかといった、製品化に反対する意見が大きかったという。しかし、開発側には製品化したいという強い意向があったため、今回、クラウドファンディングでどれくらい人が買いたいと思うかを調査し、実際に製品化するかを検討するという。

クラウドファンディングの目標額は1000万円で、募集金額として10000円、11000円、12000円、13000円、13500円の5つのコースが設定され、1000万以上出資があった場合に製品化する(最大3,960万円)。製品化の際には、応募者に対して「カクミル」が渡され、製品化しない場合は、全額が返金される(購入型クラウドファンディング)。募集期間は7月25日~10月30日。

出資額による差はなく、早く申し込んだ人から低額なものを選択できる仕組み。すでに、10000円、11000円、12000円のコースは募集定員に達している(7月25日 15時時点)。

  • 5つの金額を設定。早く申し込むほど安い金額で製品を手にできる権利を得る

同社がクラウドファンディングを利用するのは、昨年10月のモニタリングアラーム「トレネ」に次いで今回が2回目。

前回は製品化が前提だったが、今回は目標額である1000万円に達しないと製品化しない点が大きく異なる。

キングジム 常務取締役 開発本部長 亀田登信氏

キングジム 常務取締役 開発本部長 亀田登信氏は、同社のクラウドファンディング活用について、「前回は3時間で目標金額に達したが、最終的には目標額に対して1200%という資金を調達できた。また、市場ニーズやお客様のダイレクトの反応を確認でき、大きな収穫があった。前回はすでに開発中であった商品をいち早く情報発信し、商品に対する反応や要望を得ることで、商品の仕様や販売促進に反映することが目的だったが、今回はクラウドファンディングの活用をさらに進めて、クラウドファンディングの結果で製品化するかしないかを決める。今後は新規概念、社内で反対があった商品の開発において積極的に活用していきたい」と述べた。

Makuake 取締役 木内文昭氏氏

今回、キングジムはクラウドファンディングサービスとして「Makuake」(マクアケ)を利用しているが、同社 取締役 木内文昭氏はクラウドファンディグの動向について、「企業でクラウドファンディグを使うことが一般的になってきた。最近はイノベーションの必要性が叫ばれているが、実際にアウトプットされる数は少ない。そういう意味で、今回のチャンレンジが一般的になっていくのではないかと思っている。背景としては、スマートフォンが普及し、ユーザーニーズが多様化する中で、経営側がユーザーニーズを把握するのが難しくなっている点や、ガバナンスの関係で、気軽に『やろう』と言えなくなっているという点がある。また、失敗した場合の経営責任も問われる。イノベーションの種はいっぱいあるが、チャレンジして、それを発芽させる場所はそれほど多くない。今後は、クラウドファンデイングにより市場の評価を取り入れながら製品化するのが一般的になっていくのではないか」と述べた。

  • 製品化に市場調査を組み込む