統合型動画プラットフォームを提供するブライトコーブは2018年7月6日、都内でカンファレンス「PLAY Tokyo 2018」を開催し、動画配信に関する事例を紹介した。本稿では基調講演後に開催したメディアブリーフィングで語った「CAE(Context Aware Encoding)」など各新ソリューションの概要をお伝えする。

Brightcoveは2004年に米国で設立した企業である。動画配信プラットフォームとして数々の製品をリリースし、放送局などの動画配信企業の支援を続けてきた。今回都内で開催したカンファレンスでは、ブライトコーブ CEO兼代表取締役社長 伊崎洋児氏にとどまらず、2018年4月にCEOとして就任したBrightcove CEO Jeff Ray氏や、製品開発チームを束ねるBrightcove CTO Albert Lai氏が登壇し、Brightcoveおよびブライトコーブの戦略や新製品の概要説明を行った。

Ray氏は自身の役割を「顧客重視のCEO」と説明し、自社製品/ソリューションを利用する顧客企業に対する手厚いサポートを約束した。また、日本市場に対しては、自身がCEO就任前に日本の企業と関わっていたことを背景に、「日本のビジネスは基準の高さが特徴的。我々はその基準で卓越性を目指す。日本の顧客は製品/サービスの改善を望む意味で意見を述べてくれる。その結果がグローバルでより良い製品を提供可能できる理由」(Ray氏)と日本市場に感謝の意を述べた。

  • Brightcove CEO, Jeff Ray氏

この他にもGYAOや朝日新聞社、コンデナスト・ジャパン、日本マクドナルド、プレゼントキャスト 、ソニー・ミュージックマーケティングといった顧客企業担当者が登壇し、ブライトコーブ製品の利便性や関係性強化について述べている。

さて、今回紹介すべきブライトコーブ製品は次の4つ。動画ポータルを作成やライブ動画のストリーミングなどを可能にするBrightcove Galleryにパーソナライゼーション機能を追加した「Gallery with Personalization」のベータ版を、2018年後半から2019年前半にリリースする。配信動画を異なる区分に提供可能にし、「メールやSNSキャンペーンに利用することで、新規獲得費用を50%削減、売り上げは15%拡大、マーケティングコストを30%効率化できる」(Lai氏)と説明した。

  • Brightcove CTO, Albert Lai氏

ライブストリーミングに特化した「Brightcove Live」は、APIベースでクリップ作成やSNSへの配信を行うプラットフォームである。既に7万イベント250万時間の実績を持つBrightcove Liveは、SSAI(サーバーサイド広告挿入)技術で広告ブロッカーの影響を抑止し、「広告主に高い価値を提供する」(Lai氏)とブライトコーブはアピールした。新たな機能は、これまでAPIベースで制御していた部分をGUI化するLive UIの提供を、2018年第3四半期内に予定している。

ブライトコーブはOTT(Over The Top)企業向け製品として、「OTT Flow」をリリース済みだ。放送局やテレビ局がOTT動画サービスを提供する際のフレームワークとして稼働し、既に180以上のアプリケーションと、75万人のアクティブユーザー/月を持つ製品だが、2~3カ月内に新バージョンとなる「OTT FLOW X」を提供することを明らかにした。

「柔軟なUIカスタマイズやサードパーティとの統合も容易に実現可能。複雑なユースケースに関しては、グローバルサービスチームがサポートを提供する」(Lai氏)という。

そして「CAE(Context Aware Encoding)」は、動画配信に欠かせないエンコードに関わる新製品だ。アルゴリズムが動画の内容を分析し、機械学習モデルを通じて作成したプロファイルを多数用意する。例えば、サッカーとアニメでは保持すべきビットレートは異なるが、動画配信企業は差異を気にすることなく、動画を視聴者に提供可能。本機能についてブライトコーブは、「ロサンゼルスのとある企業はストレージ容量を23%削減し、CDN(コンテンツデリバリネットワーク)の使用量を35%軽減した。(圧縮に伴う)視覚的な犠牲は不用」(Lai氏)と説明する。CAEはブライトコーブの動画配信プラットフォームである「Video Cloud」経由で本日2018年7月6日から日本でも使用可能だ。

既に日本市場でも約300社が採用するブライトコーブ製品だが、日本市場の動画トレンドについて、「メディア企業はグローバルトレンドと類似し、事業として動画配信に取り組んでいる。特にスポーツのライブ配信がこの1年で増えた印象だ。それ以外の一般企業は米国が先導している状態」(伊崎氏)。日本が遅れているというより、米国のみ頭1つ飛び抜けている状態だという。同社は続けて、「海外の企業はマーケティング自動化ツールとの連携や、経営層からのメッセージ発信、トレーニングツールなど多様な目的で動画を活用しているが、日本は社内コミュニケーションなど単一的な利用傾向が多い」(伊崎氏)。

  • ブライトコーブ CEO兼代表取締役社長 伊崎洋児氏

この日本市場に対してブライトコーブは、「Video Cloudでメディア企業の動画配信ビジネスを支援し、一般企業のマーケティング分野は(動画マーケティングソリューションの)Video Marketing Suite、社内コミュニケーションは(セキュアな動画プラットフォームとしてセールストレーニングなどに活用できる)Enterprise Video Suiteと、異なる要件に合致した製品を提供する」(伊崎氏)。

さらなる注力ポイントとして、メディア企業に対する手厚い保護を目的に、技術コンサルティングとカスタム開発の提供と、時間帯を超えた日本語によるカスタマーサポートを提供する予定だ。同社は、「日本の顧客は購入後のサポートを重視する。弊社製品の開発・運用は米国のため、欧州や米国に日本語対応可能なスタッフを用意し、(日本のサポート)時間外に問題が発生した時も安心して使って頂く」(伊崎氏)ためだと理由を説明した。