ファンケル(<4921>東証1部)の株主優待は5000円相当の自社製品かファンケル銀座スクエア利用券です。業績はV字回復で、今後の見通しも良好であり、株主優待は魅力的です。株価が調整したタイミングでの購入が検討できます

◆好調な再スタートを切り、成長路線取り戻した化粧品メーカー
ファンケル(<4921>東証1部)は1980年の創業以来、防腐剤や香料など肌に負担となる可能性のある成分を一切配合しない「無添加」にこだわった製品を開発、製造、販売している企業です。売上構成比は、化粧品事業が60.6%、栄養補助食品事業が33%、その他が6.5%(18/3期)とバランスの取れた構造となっています。

同社の沿革を辿ると、創業者である池森氏がクリーニング店で集配達の仕事をしていた頃、訪問先の主婦が化粧品による肌荒れに悩まされていたこと、また池森氏の奥様も同じ悩みを持っていたことが、同社設立のキッカケとなったようです。同社HPで池森会長が話していますが、1970年代の日本では「化粧品公害」という言葉が使われるほど、化粧品を使って肌トラブルに悩む女性が激増して大きな社会問題になっていたといいます。

その原因の多くが化粧品を腐らせないために入れる防腐剤や香料であることに着目し、池森氏は「化粧品が腐らないうちに使えばいい」との考えで、一週間で使い切る量の5mlの小瓶に入れた「無添加基礎化粧品」を開発したのでした。この無添加基礎化粧品は肌トラブルで悩んでいた消費者の心をつかみ、急成長を遂げました。

その後、化粧品事業は「ファンケル」を主力に「アテニア」「ボウシャ」などを展開しており、加えて最近では年代別にターゲットを絞った製品展開で多角化を進めています。

また、1994年には、「アメリカのように低価格で日常的に使用できる商材を提供したい」との思いから、日本で初めて「サプリメント」という言葉を使って健康食品の販売を開始。低価格で高品質な日常使いができる、それまで日本になかった健康食品のイメージを作り上げることに成功しています。ダイエットサプリ「カロリミット」やアイケアの「えんきん」などが代表製品。

同年には、通信販売のショールームとして直営店舗の展開をスタート。現在では、通信販売、直営店舗に加え、2017年からは流通卸が加わり同社製品は一層身近なものとなっています。

海外は、現在、中国、香港、北米を中心に展開しており、海外売上比率は1割程度ですが、2030年度には海外売上比率25%を目標に掲げています。

◆広告先行成長戦略が成功、業績V字回復
2018年3月期は過去最高売上を記録した2007年の1010億円を超え、2019年3月期には更なる増収が予想されています。一時、776億円(2015年3月期)まで落ち込んだ売上高が回復した上に、成長を加速している要因は何でしょうか。

勝因は「広告先行成長戦略」です。同社では、2016年3月期から2018年3月期を最終年度とする中期経営計画において、顧客基盤の拡大など長期的視野に立った戦略的な広告投資を行う「広告先行成長戦略」を進めてきました。

この戦略的な広告投資は効果を発現。客数は中期経営計画前(2015年3月期)と比べると、ファンケル化粧品(通販)が+8%、サプリ(通販)が+51%、アテニアが+52%と、いずれも増加。ファンケル化粧品、サプリメント、アテニアともに過去最高客数を記録し、安定成長のための基盤を築くことができたと見られます。

また、広告戦略とともに、その広告効果を最大化するための販売チャネルについても、流通、店舗チャネルの拡大を図りました。2015年3月期末比でみると、ドラッグストアは化粧品が7700店→12000店(2017年12月末)、サプリメントが47000店→60000店に。直営店舗は164店舗から197店舗(2018年3月期末)まで拡大しました。この数年間で、ドラッグストアの他コンビニへの卸売も開始してきた同社ですが、一方で直営店展開については計画の350店舗には届きませんでした。

ただ、その一方、持ち株会社制へ移行したことで、各事業部が独立し、チャネル拡大を図った結果、直営店舗の存在意義が問われることとなってしまいました。こうした状況を踏まえ、同社は持ち株会社制を解消し、グループの総合力を生かすことができる新体制に組織改革を行いました。同社の行動はスピーディーでした。

◆構造改革:「紙(カタログ通販)」から「ウェブ」への転換で収益効率化
まず、組織改革で行ったのは、「通販営業部」の設置。それまで同社にはカタログ通販とネット販売を行う部署が別にあったのですが、これを一本化しました。この改変でどういう成果が得られたのか?

まず、販売促進の効率化が図られました。それまでの同社のマーケティングでは、すべての顧客に同じカタログを送っていました。化粧品、健康食品と月間でそれぞれ70万部を発行していたといいます。収益を圧迫する要因となっていたことは明確で、果たして全ての世代に同じ内容のカタログを送るのは効率としてどうなのかも疑問です。

こうした非効率性から同社はこの方法を転換。カタログを送付するのは50代以上の世代に絞り、20-40代に向けてはPCやスマホ、メールを中心とした情報提供を基本とすることにしました。

また、ドラッグストアやコンビニに販売チャネルを拡大したことで、直営店舗の存在意義が問われることとなりましたが、この課題についても、これまで直営店舗でも採ってきたセルフカウンセリングの方針から「カウンセリング」に転換を進めることで、来店動機を取り戻し、化粧品事業のターゲット別戦略と併せた価値が生まれそうです。

そして、同社では、一斉送付していたカタログ戦略からWebの活用に舵きりしたと同時に、年代別の製品訴求が目立つようになってきました。これまでも60代以上をターゲットとした「ビューティブーケ」の発売に続き、アラサー向け、アラフォー向けブランドを展開していく計画です。販売チャネルも20-30代をターゲットに、若者がよく行く商業施設への投入を図っており、若年層向けでは紙ベースの広告を全廃しています。健康食品でもダイエットサプリ「カロリミット」がヒット商品となりましたが、この後40代に向け「大人のカロリミット」、またアイケアサプリの「えんきん」など年齢別の悩みに応じた製品を展開しています。将来的に若年層、中高齢層、高齢者層向けと、バリエーションを増やしていく方針が示されています。

◆2018年3月期の売上高は2007年以来となる1000億円を突破
2018年3月期の業績は売上が13.2%増の1090億1900万円、営業利益が276.4%増の84億4800万円、純利益が20.3%増の61億9100万円となっています。主力製品の好調や新製品の好調な滑り出しに加え、ネットを活用したプロモーション活動がもたらした客数増が売上増に寄与。また利益面ではこの増収効果による粗利益増に加えて、広告宣伝費の効率化策が奏功し、大幅な営業増益を達成しました。

2019年3月期は売上が5.0%増の1145億円、営業利益が12.5%増の95億円、純利益が6.6%増の66億円を予想しています。そして中期経営計画では2020年度数値目標として、売上高1260億円、営業利益126億円、ROE(自己資本利益率)10%が掲げられています。

化粧品事業での注目点は、海外展開の加速に貢献する「ボウシャ」の動きです。2019年3月期を「グローバル化元年」と位置づけ、欧州・中近東に進出を図る計画です。すでに北米で約1000店舗、アジアで約300店舗を展開していますが、新たに、EU(19カ国)で約900店、中近東で約50店、イギリスで約2000店で導入を進める予定です。ボウシャは、今後3年間で2018年3月期比1.5倍の売上を目標としていることからも、海外展開の加速とともに化粧品事業のなかでも成長の伸びしろが大きいブランドだと思います。

サプリメントでの注目は「内脂サポート」。同社ではこれをスター製品に育てて、今期売上20億円(18/3期は4億円)を計画しています。

なお、同社は広告費を将来への投資と位置づけており、年間150億円台の広告宣伝投資を想定しています。具体的には、化粧品では基礎スキンケアの広告費を効率化し、「ビューティブーケ」「AND MIRAI」、メイク、ヘアケアに投下。サプリメントにおいては「カロリミット」「えんきん」などの広告費を効率化するとともに、「内脂サポート」に投下する計画です。

◆前中期経営計画での施策が短中期で継続的効果を発揮していきそう。株価が堅調に推移する期待感が強い中、株主優待は魅力的
業績は、化粧品、栄養補助食品が好調で、2018年3月期は11年ぶりの最高益を更新。2019年3月期も引き続き好調な業績が期待されます。広告の効率化により、客数は過去最高を記録し、コストも低減していることから、販売増による増収効果とコスト削減効果により大幅な増益が期待されます。

2018年3月末時点の財務内容は、自己資本比率81.0%で、有利子負債はゼロ。現金等にも366億円保有しており、長短ともに支払い能力に問題なく、優秀な財務基盤です。

さて、そんな株価の先行き見通しが明るい同社の株主優待ですが、100株以上を、6カ月以上継続保有した株主に、5000円相当の自社製品または「ファンケル銀座スクエア」利用券を贈呈となっています。権利確定月は3月末です。株価を5260円で100株購入し、株主優待を5000円で評価、1株あたりの現金配当を60円とすると、株主優待と現金配当を合計した利回りは2.1%となります。

なお、同社の株価推移を見ると長期では綺麗に上昇していますが、時折75日移動平均線まで調整することがありますので、そのような調整時に拾って長期保有をすると良いのではないでしょうか。

参考:日本株通信

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文=戸松 信博(マネーガイド)