健康とおさいふ事情を天秤にかけた場合の「食品のリスク」の考え方について解説します。

◆安い食材は怖い?
昔から「安かろう悪かろう」などと安いものは粗悪なものと相場が決まっていました。しかし、安い冷凍食品や中国産うなぎなど、廉価な食品は庶民の味方です。高価なものの方がよいかもしれないけれど、給料の範囲内で生活するとなると高価なものばかり購入してばかりはいらない……。

健康とおさいふ事情を天秤にかけなければならない時、どんな風に考えて食品を選べばよいのでしょうか?

◆中国産の食品を食べたら命にかかわりますか?
厚生労働省の「平成24年度輸入食品監視統計(平成25年8月発行)」によると、「違反状況をみると、中国の221件(21.0%:総違反件数に対する割合)が最も多く、次いでアメリカの190件(18.0%)、ベトナム103件(9.8%)、タイ84件(8.0%)、インド63件(6.0%)の順であった」とありますから、違反状況の総数の中では中国は違反件数が多いのは間違いありません。しかし、「中国産の食品を食べたら命にかかわりますか?」については、「No」であると回答します。

今回、前述の統計から、食品の輸入件数に対する違反件数の国別の割合を計算してみました。すると、中国0.033%アメリカ0.081%タイ0.053%ベトナム0.207%インド0.477%という結果になりました。日本製品の逆輸入品に関してもデータが載っており、これも計算してみると0.084%。中国よりも多いという計算結果になっています。

ここで、中国に特化して考えてみます。0.03%といえば、約3300件に1件。これを多いとみるか少ないと見るか、ここが分かれ目になるでしょう。私個人としては「このくらいの割合は人間だもの」と考えていいと思っています。いくら機械化がすすんだといっても、細かい作業のすべてを機械化することはできません。人の手に頼る作業が皆無になったわけではないのです。自らを振り返ってみても分かるように、完璧な人間などいません。どんなに手馴れた人でもミスは起こります。

また、人件費の安い諸外国の労働力に頼るというのも、悪いことばかりではありません。労働者たちは、その仕事があるから食べていけるという側面もあります。賃金は日本と比べて安くても物価との兼ね合いで、生活には困らない場合もあるでしょう。

そう考えると、食事は毎日のことです。たまにご褒美として買う靴や洋服、映画のチケットと違って、毎日贅沢できるわけでもありません。こうした我々の生活を鑑みても、輸入食材を使うメリットはデメリットを大きく上回ると思います。

◆安い冷凍食品は怖いですか?
これも答えは「No」です。

冷凍食品が安い理由は、小売業者の思惑が1つ。冷凍食品を「目玉商品」として特売にかけ、お客様を呼び込みたいのです。なぜなら、冷凍食品は冷凍庫で保存ができるので買いだめが可能です。そうなると、安いときに買っておきたいと考えるのが消費者心理です。

実は、冷凍食品を目当てに来店したとしても、他のものも一緒に購入していくお客様がほとんど。仮に冷凍食品だけでは赤字であったとしても、冷凍食品と一緒に通常の値段のものを購入してもらうことで小売業者は黒字を出すことができます。

一方で、メーカー側も新商品などは値引きをして味見をしてもらうことで、当該商品のリピート客を欲している時もあります。ここで小売業者とメーカー側の思惑が合致して、冷凍食品の特売が行われることがあります。

もう1つの理由として、生産者側のコストダウンが可能なことがあげられます。土地と人件費が安価な場所(中国、タイ、ベトナムなど)で旬の時期に大量に生産し、安い人件費で一気に加工することができるため、冷凍野菜や冷凍果物などは市場に安く出回ります。

ここでよく考えてほしいのは冷凍野菜や冷凍果実を「旬の時期に大量に生産し」というところです。旬の野菜や果物は時期はずれのハウス栽培のものよりも栄養価が高いのです。そのため、冷凍食品を使えば、栄養価の高い旬の野菜を高い栄養価を保ったまま季節はずれにも食べることができるようになる、とも言えます。

野菜や果物は旬の時期に旬のものを食べるのが一番美味しいのは言うまでもありません。夏に体を冷やし、冬に体を温めるのは旬の野菜です。とはいえ、旬の野菜ばかりでは目が変わらず飽きてしまいます。一人暮らしや少人数の家庭でも使う分だけを小出しにして使うことができるのもメリットのひとつ。いろいろな食材を楽しむ知恵として、冷凍食品を上手く利用するのも悪くない選択だといえます。

◆残留農薬や添加物はどう考えればいいのでしょうか?
消費者にとって一番の心配事は残留農薬や添加物でしょうか。

残留農薬は、農薬や育てる過程で与えたお薬などが出荷後の食材に残ってしまったものです。むろん、残らないに越したことはありませんが、食材はもともと「生き物」です。病気になることもありますし、病気にならないように予防することも必要です。残留しないような農薬を使い、出荷時には限りなく残らないように配慮していても、どうしても残ってしまうことがあるのです。

添加物は食品を加工する際に食味や色合いを整えたり、保存性を高めたりするために使用します。しばらく前に、天然着色料の「コチニール色素」は昆虫から採取された色素なのに、それを消費者は知らされていなかった、といったニュースもありました。また、それ以前から、合成着色料は体に悪いと言われており、添加物も食品には入っていないほうがいいものと考えられてきた歴史があります。

しかし、残留農薬や添加物によって、農業や酪農などの「生産性」が上がり、摂れた食材を長期保存できるようになったからこそ、人々は餓えから逃れることができるようになりました。農薬を使うことや添加物を使うことは、人間が食品を安定して手に入れるためにどうしても必要なことだったのです。

もちろん、有毒なものを「生産性のため」とはいえ、許可しているのは許せないと考える人もいると思います。この点については、厚生労働省や消費者庁で、どの成分なら使ってもよいのか、どのくらいの量までであれば一生食べ続けても命に別状はないのか等の検討を行い、厳しく管理しています。また、市販されている食材も、さまざまな店舗におかれた食材から抜き打ち検査を行って基準を超えていないか厳しく管理を行っています。

◆日本のスーパーで手に入る食材は概ね安全です
以上のように、日本のスーパーや商店街等で手に入る食材は概ね安全と言えます。ただ、概ね安全と言っても、時々ニュースに上がるように「食品事故」はいつ起こるとも限りません。どんなに注意を払っても「食品事故」は一定の割合で起こります。輸入食材だから事故が起こる、冷凍食品が安いから事故が起こるのではありません。国内産の食材であっても、人の手がかかわっている以上、100%安全であるとは言い切れません。日本人でもミスはします(ミスをした後の謝罪は日本人同士のほうが気持ちが通じやすいようには思いますけれど)。

そんな現状を踏まえて、高くても日本産のものがいいというのもひとつの考え方ですし、安価な輸入食材を使うというのもまたひとつの考え方です。

日本の食材は厳密な管理を受けています。基本的にはどれを選んでも安全と考えていいでしょう。あとは、それぞれのおさいふ事情や考え方に応じて、食材を選んでいけばよいと思います。

◆リスクを上手にコントロールする
リスクには「実行するリスク」と「実行しないリスク」の2つがあります。やる・やらないのように、白黒はっきりできれば気持ちもいいのでしょうが、日常生活は白黒はっきりするものばかりではありません。また、誰しもが「白」のみを目指すといったことも現実的ではありません。

「時間もお金もあるから輸入食材も冷凍食品も使わない」という人がいれば、「時間もお金もないので輸入食材も冷凍食材も使う」という人がいてもいいのです。給料日前と給料日後で考え方を変えるというのも「アリ」でしょう。考え方はその家庭ごとに(または個人ごとに)違っていいのです。

ぜひ、自分にとって有益な技術を上手に取り入れながら、からだにも心にもそしておさいふにも優しい生活を送りましょう。

文=平井 千里(管理栄養士)