芝浦工業大学は、同大システム理工学部機械制御システム学科の伊東敏夫教授が、「確率共鳴」という現象を用いて、より遠距離、広範囲にある物体を認識する新技術を開発したことを発表した。

  • 提案手法と確率共鳴

    提案手法と確率共鳴

現在、自動車の自動運転技術における物体認識技術が進んでおり、歩行者などを認識するため、主に用いられるレーザーレーダー(LiDAR:light detection and ranging)が用いられているが、遠距離にある物に対しての認識精度は低い。

伊東教授はこの課題に対し、信号にノイズを加えることで、ある確率の下で信号が強まり、検知能力が向上する現象である「確率共鳴」を用いることで、最適なノイズを発生させることにより物体を識別できる距離を延ばす技術を開発した。これは、ザリガニが外敵や水流の動きを感知する際に用いられる現象である。

これにより、LiDARの遠距離認識性能の改良や遠距離での反射点群密度の向上が可能となり、計測地点から20メートル以上80メートル以内の歩行者、二輪車、車両に対して実験を行い、認識性能の改善がみられた。

  • 実用化イメージ

    実用化イメージ

同技術は、自動車だけでなく、自動運転ドローンや自律移動ロボットの外界センサへの使用も期待される。確率共鳴を応用することで、LiDAR以外の画像処理やレーダーへの展開も可能となり、運転支援システムや自動運転技術のさらなる発展向上が期待される。

また、実用化の一歩として、シニアカーに装置を後付けして自律移動モビリティを開発し、複数の研究室との共同プロジェクトとして2020年の完成を目標に研究を進めているという。

なお、この物体認識装置および物体認識方法は、7月5日(13:20〜15:55)に東京・市ヶ谷のJST東京本部別館1Fホールにて行われる、新技術説明会にて発表される。