macOS MojaveとiOS 12で実現するアプリの共通化は、特にMac、そしてiPadにもメリットがもたらされることになり、Mac、iPad双方のアプリストアも活性化することになるはずだ。

しかし、Mac App StoreとiOSのApp Storeは引き続き、それぞれは別々の存在として独立した状態を維持していく。

iPhoneでアプリをダウンロードすると、iPadにも自動的にダウンロードされ、大きな画面でも新しいアプリをスムーズに使い始められる。またApple TVでのアプリダウンロードもiPhone/iPadへの自動ダウンロードに対応しており、ビデオストリーミング系のアプリをテレビでも、モバイルでも楽しめるようになる。しかし、iPadとMacの間では、こうしたアプリの自動ダウンロード機能などは用意されないという。ストアが違うため、もちろんiPad側で買った有料アプリは、通常のままであれば、Macでも購入しなければならない。

これについては開発者側が複数の種類のデバイスをどのように連携して使ってもらうか、というユーザー体験とビジネスモデルの設計次第の部分もあるが、アプリだけでなく、体験の共通化、ワークフローの中での円滑なデバイス活用も視野に入れながら、Appleが環境整備をもう一歩踏み込んで取り組むべきではないか、と筆者は考えている。

AppleはiCloudでのデバイス間のデータ共有の枠組みを提供しており、デバイスにまたがって活用するアプリが増えれば増えるほど、より大きなiCloudの追加ストレージが必要になり、Appleの毎月のサービス売上が増加することになる。デバイス間連携の促進は、Appleにとっても重要な効果をもたらすことは確実なのだから。

松村太郎(まつむらたろう)


1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura