AppleはMacintosh発表当時から、教育市場に対して熱心であった。また家庭の中でMacがデジタルライフスタイルの中核を担う「デジタルハブ」というアイディアも存在していた。

人間の生活がデジタル機器の影響で変化していく中、このコンセプトは大きな変更を迫られることがなかった。人が家族を構成するということと、育てる子が教育を受けるということに変わりはないからだ。

もちろんスマートフォンによる変革は大きい。これまで一家に1台という台数に甘んじていたPCが、1人1台へと急増し、GoogleのAndroidは20億アクティブユーザー、Appleも10億台のアクティブデバイスを手にするまでになった。その上で、スマートフォンが個人のデジタルハブとなり、コミュニケーション以外の様々な領域をポケットの中で結びつけている。

情報やメディアの消費の単位が個人になったからこそ、Appleが堅持している「家族」にフォーカスした施策が光ってくる。AppleはWWDC 2018でiOS 12を通じて、テクノロジーが前提での家族の会話の在り方を再提案していた。

今年のシリコンバレーのトレンドの1つとなったのがスマホ中毒への対処だ。Googleは5月に開催したGoogle I/O 18で、Android Pにスマホ利用を一覧できるダッシュボードと、アプリの1日あたりの制限時間を設定できる機能を用意した。AppleもiOS 12にスクリーンタイムとアプリ制限という同様の機能を搭載している。

AppleがGoogleよりも一歩踏み込んだと思われるのは、スマホを手に取るきっかけを与える通知のカスタマイズ強化や、夜の時間端末使用自体を制限するベッドタイム機能の追加があった。加えて、子どものiPhoneやiPad利用を親がきっちりと管理できるようにする仕組みを取り入れた。

Appleはこれまで、「家族」という集団に対してApple IDを通じて様々なサービスを提供してきた。ファミリー共有では、家族全員にApple IDを割り振り、「家族」という単位で紐付け、購入したコンテンツやApple Musicの購読、写真アルバム、リマインダー、カレンダーの共有などを自動的に行えるようにしている。

このファミリー共有の機能を通じて、親のアカウントで子どものアカウントのデジタル利用を制限できるようにしたのだ。iOS 12にアップグレードされたデバイスを使う子どものアカウントのスクリーンタイムを、親のiPhoneやiPadから閲覧し、使いすぎているアプリに制限時間をかけたり、就寝時間以降の端末使用そのものをロックできるようになる。

こうした制限は、スマホ中毒の根本的な対処とはならないかもしれない。しかしAppleは、ただ制限をかけるだけでなく、家族で話し合ってルール化し、それを確実に守れる仕組みを目指していた。家族に対しても、テクノロジー利用を教育的に改善する提案は、Appleらしい取り組みの1つと評価できるだろう。