SNSで拡散される口コミを利用したバズ・マーケティングは、いまやプロモーションの核の1つとなっている。とくに若い世代や女性を中心としたマーケットにおいて、その効果はひときわ高い。だが、F0層(女性13~19歳)、F1層(女性20~34歳)を中心としたコミュニティの感性に強く影響されるSNSのプロモーションに苦戦しているビジネスパーソンも多いのではないだろうか。

  • 現役女子大生でありながらも、すでにプランナー/アーティストとしてさまざまな仕事を担当している辻愛沙子さん

そんなSNSプロモーションの世界でいま注目を集めているのが、辻愛沙子さん。慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)に通いながら、株式会社カラスでプランナー/アーティストとして活躍しているという現役女子大生社員だ。「お台場ウォーターパーク」のウォールアートや、「那須りんどう湖 LAKE VIEW」のアートスポット、女性アイドルグループ「夢見るアドレセンス」の動画コンテンツなどを担当しており、若い女性を中心に両若男女からその感性が評価されている。

TikTokで撮影された短尺動画を繋ぎ合わせた「夢見るアドレセンス」の『桜』PV。女子高生でも再現可能な撮影方法にこだわったという

本稿では、そんな辻さんにSNSプロモーションの効果的な仕掛け方を聞いていきたい。

女の子が撮りたくなるフォトスポットの作り方

お台場ウォーターパークで辻さんが担当したのは、若い女性をターゲットとしたジェニックスタジオという写真撮影用ブースだ。こちらで撮影された写真は、一ヶ月半で約2万件のSNS投稿が行われたという。

ウォールアートにはハッシュタグ「#owp」を添えた羽のイラストが用意された。羽はウォールアートでしばしば利用されるイラストだが、ただかわいいだけでなく、写真を拡散してもらう理にかなった仕組みがある。羽を用意することで、文字で「フォトスポットです」「ここに立って」と明示しなくても、決まった立ち位置へ自然に誘導できるからだ。さらに、この立ち位置を確定させるために足元の芝をくり抜くという工夫も行われている。

  • ジェニックスタジオの壁には、水しぶきを羽に見立てたウォールアートを用意(イラストレーターのemiさんと共同制作)

ジェニックスタジオ内部は本格的なフォトスポットになっており、入り口から直接内部が見えない作りになっている。これは、撮影しているところをあまり見られたくないという女性心理に基づいたもの。ハート形の鏡は、撮影した際にアイキャッチが入るように用意された。

  • ジェニックスタジオ内部は本格的なフォトスポット。周りの目を気にせずに撮影できる(マーメイドのウォールアートは、イラストレーター雪下まゆさんと共同制作)

  • 撮影時、瞳にハート形のアイキャッチが入るよう用意された鏡台

「カワイイのは大前提です。そのうえで女の子たちが決まった位置で自然に撮影したくなるような、理にかなった撮影スポットを作りました」。

みんなが自然に溶け込めるフォトスポットの考え方

栃木にあるテーマパーク、那須りんどう湖 LAKE VIEWの事例では、男性同士やカップル、家族連れ、お年寄り、LGBTの方など、より多くのユーザーを対象としている。辻さんは「全ての人を受け入れるのがテーマパーク。人を選んではいけない。おしつけになってはいけない」という考え方でこの仕事に取り組み、テーマとして虹が用いられた。

  • 虹のテーマがいたるところに展開され、パーク内が七色に染まった