2016年11月に1stシングル「叫べ」でアーティストデビュー、2017年6月に1stアルバム「My LIVE」をリリース、同8月にはソロライブツアーとデビュー直後から怒涛の活動をしてきた声優・沼倉愛美。そんな彼女の3rdシングル「彩 -color-」が6月6日にリリースされた。

  • 沼倉愛美(ぬまくらまなみ)。1988年4月15日生まれ。神奈川県出身。アーツビジョン所属。主な出演は『アイドルマスター』我那覇響役、『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』タカオ役、『SHOW BY ROCK!!』レトリー役、『恋愛暴君』緋山茜役など

表題曲「彩 -color-」は好評放送中のTVアニメ『かくりよの宿飯』エンディングテーマとして、沼倉自身が作詞を担当している。また、カップリングにはEDMテイストの「RELOAD」と、スカテイストの「Checkmate」を収録。アーティストとしての幅の広さ、多彩な表情を見せる1枚だ。今回は、それぞれの楽曲に込めた思いや制作秘話など、たっぷりお話をうかがった。

▼感謝の気持ちをとても感じる1年でした

――今回の「彩 -color-」は1stアルバムから約1年ぶりのリリース、ライブツアーからでも約10ヶ月ぶりとなりますね。

そうですね。1stシングルの時点でライブツアーまでは計画を立てていたんです。初めてのことだらけの割にすごく速いスピードでいろいろ作っていったので、充電といいますか、改めてこれまでの経験をきちんと自分の中に落としこむ時間と、新しいものをインプットする時間が欲しいとスタッフさんにお話しまして。それで昨年はライブ以降アーティスト活動をお休みさせていただき、年が明けてから「彩 -color-」の制作に入りました。

――以前のインタビューでは、徐々にアーティストしての自分の捉え方に慣れてきて“日常になった”と話していました。充電してさらに感じ方が変わったりしましたか?

(アーティスト活動が)自分のやりたいことのひとつであるという認識は同じですが、楽曲制作に対していい意味で構えることがなくなり、自分のために動いてくれる人たちのことがすごく見えるようになりました。さらにお休み中にいろんなことを思い返していくうちにも、感謝の気持ちを去年はすごく感じたので、それが今回の制作や歌詞にも表れたかなと思います。

――そういう意味では、やはりライブは大きかった?

すごく大きかったですね。皆さんがライブを成功させるためにそれぞれのセクションでお仕事を頑張ってくださって。しかも、お仕事の大部分が私のサポートということですから。今までもイベントやライブに参加させていただきましたが、作品やキャラクターに絡んでいる時には意識しなかったものがたくさんあったんだなって。前回のライブでダイレクトに人の優しさに触れた気がしました。

――改めて、ライブを振り返ってひと言で表すと?

最高でした!!(笑)

――逆に課題などは見つかりましたか?

課題はたくさんあります。この4月にファンクラブイベントとしてのライブをやったんですが、同じことをしても面白くないなと思って。それはこの先続けていく上で毎回ぶち当たる課題なのかなと。成功していいものが出来た反面、次はそれを超えていかなきゃという悩みが次々くるわけで……でも、贅沢な悩みだと思っています。

▼成長して心が豊かになることは、"心が彩られていく"こと

――それでは、今回のシングルについてお聞きします。アニメのエンディングテーマをご自身で作詞されるということで、どのような感じで書かれたのでしょうか?

「叫べ」(TVアニメ『魔法少女育成計画』オープニングテーマ)の時と同じで、最初にシナリオをいただいて読み、曲があがってきて……という流れで書きました。先ほど話したように、自分の中にすごく感謝の気持ちがありましたので、今回はテーマが早く決まったんですよ。

――曲を最初に聴いた時の印象を教えて下さい。

候補が2曲あって、「彩 -color-」の元になった曲とよりスローな曲から私が選んでいいと言われたんです。この曲は疾走感や勢いがありつつ、すごく優しさや柔らかさみたいなものがあって、今までにないテイストだと思ったんですね。そういうのを表現出来るようになったら、より広がりが出るかなと思ってこちらを選びました。そこに感謝の思いを入れられたらなって。この曲の方が歌詞を書くのは難しそうだったんですけどね(笑)。

――実際に書いてみてどうでした?

『かくりよの宿飯』は主人公が“隠世(かくりよ)”という異世界に行ってしまい、そこでいろんな“あやかし”との関係をいちから築いて自分の居場所を作っていくんです。でもそれって普通にあること、アニメ風に言うと“現世(うつしよ)”でもありふれた状況ですよね。入学や入社もそうですし、ゼロから関係を築いて絆を作っていくのは共感出来ることだと思ったので、そういうシチュエーションを書いていこうとテーマを決めました。

それをどう表現するか考えた時に、「人と関わっていろんなことに気づくことで、成長して心が豊かになっていく」というのを色に例えてみようかなと思ったんです。ただ、それってすごく感覚的なことですよね。感覚をどういう色に例えるかは状況次第だから、赤・青・黄のように色を限定するのは違うなと。なので、「彩」という言葉を入れようと思って出来上がりました。

――歌詞を読むと、作品らしい単語がありつつ自分たちにも共感出来る内容だと感じました。それを「色」に例えたのはとても印象的ですが、すんなり出てきたのですか?

すんなり出ましたね。「心が豊かになる」というのをどう表現するか、色が増えていく心……彩られていく心。「彩る」という言葉を入れるなら、あまり限定した色はやめようという流れですね。

――では、「叫べ」の時のようにタイトルに悩むこともなく?

タイトルは基本的に最後につけるんですけど、今回は悩まなかったです。悩んだのは読み方だけですね。和風の作品ということもあって、「彩」という漢字を入れるのは決めていましたから。

東山奈央ちゃんが歌うオープニングテーマがまさに“隠世”の世界を表現していて、エンディングテーマは“現世”っぽいテイストで現代的な音で作っているとプロデューサーから聞いていたんです。それならば、明確に“色”を表現したとわかるように、読みを「color」にしてもいいかなって。そこは若干ひねったところですね。普段は歌詞に英語を入れるのがすごく苦手なんですけど……。

――英語自体が苦手なのですか?

英語は全然出来ないです(笑)。

――これからやってみようという意思は?

できらたらいいとはもちろん思いますけど、作品としてお届けするものを中途半端にしてはいけないと思っていますので、詞では基本使わないと思います。

▼ふわっと横に広がる感じ

――歌い方は柔らかさを感じつつ意志の強さも感じたのですが、歌う時に意識した点はありますか?

やっぱり優しさですね。勢いや強さはすでに曲の中に入っていて、自然と出てくるものだったんです。そこにどれだけ“ふわっと横に広がる感じ”を入れられるか。縦にグッと盛り上げるのはこれまでもやってきたので出来るんでが、横に広げるのは日によってとか曲によってというところがあって難しかったですね。

――横に広げる歌い方とは?

感情をふくよかにして歌うというか。それはアルバムを作っていた時も思っていたことですね。

――初回限定盤にはMusic Videoが封入されています。撮影はどうでしたか?

白いスタジオに映像を投射して撮影したパートとロケのパートがあり、今回初めて2日間かけて撮影しました。(撮影の)物量的にはこれまでと同じなんですけど、2日間というだけで一番大変だった気がします(笑)。特に海のシーンが寒くて。3月の頭ぐらいに朝早くから撮影して、海は風も強いですからね。でも、ロケのシーンはいまいちイメージが掴めず「何をしたくて私はここにいるんですか?」と監督に聞いたんですよ(笑)。

――監督はなんて答えていました?

三角の水晶をかざしているのは、「いろんな色を集めている」ということらしくて。撮っている間はピンとこなかったんですが、出来上がった映像を見て「そういうことか!」と思いましたね(笑)。

――それは曲の内容にも繋がっていますね。

そうですね。何もないという意味の“白”から始まり色が増えていくんですけど、光っていろんな色が集まるとまた白い光に戻るじゃないですか。それは“より大きな輝きになる”ということなんです。監督がすごく曲を理解してくれて、このようなMVになりました。