地球温暖化による農作物への打撃や、災害や異常気象による被害などを抑えることを目的とした「気候変動適応法」が6日、参院本会議で可決、成立した。同法は、温暖化の影響は既に国内で表れているとの前提で国のほか、地方自治体や事業者が担う役割を明確化した。国には「気候変動適応計画」の策定を求めたほか、自治体にも「努力義務」として地域の状況に応じた「地域気候変動適応計画」づくりを求めている。

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    図 環境省が作成した「気候変動適応法案の概要」から法案作成の背景(環境省提供)

気候変動適応法は、「適応の総合的推進」「情報基盤の整備」「地域での適応の強化」「適応の国際展開等」の四つが柱。「適応の総合的推進」としては、政府に「気候変動適応計画」の策定を、環境相に気候変動の影響をおおむね5年ごとに評価することを、それぞれ義務付けた。政府は既に同計画を策定(2015年11月27日閣議決定)しているが、今後最新の影響評価結果を基に計画内容を見直す。

また、「情報基盤の整備」として、国立環境研究所(茨城県つくば市)を、気候変動の影響や適応の情報収集・提供に関する国レベルの拠点と位置付けた。「地域での適応の強化」としては、都道府県や市町村にも気候変動影響や適応の情報収集・提供をする「地域気候変動適応センター」としての機能を担う努力を要請している。気候変動による影響や適応策は地域によって異なるための措置で、被害抑制のために地域にも対応を求めた形だ。このほか、「適応の国際展開等」として、適応に関する国際協力を推進し、事業者には、気候変動への適応に寄与する「適応ビジネス」を促進してもらうことなどを求めている。

環境省は同法成立前の法案概要説明の中で「日本の年平均気温は、100年あたり、1.19度の割合で上昇している。今後さらなる上昇が見込まれる」と明示。気候変動による影響として、コメが白濁する「水稲の白未熟粒化」やミカンの皮が浮く「ミカンの浮皮症」などの農作物被害例を挙げた。既に進んでいるサンゴの白化など生態系への影響のほか、将来、強い台風や熱中症患者の増加する可能性なども例示している。

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