ある時はDV夫、ある時はゆるふわモテ男……そんなカメレオン俳優・中村倫也が日本テレビ系ドラマ『崖っぷちホテル!』(毎週日曜22:30~)で演じているのは、“競艇狂い”のスーシェフ・江口竜二だ。

総料理長・鳳来ハル(浜辺美波)とのコンビは“えぐハル”と呼ばれ、SNSではファンがオリジナルのイラストを次々に掲載するなど大人気。そんな同作に臨む心境や、主演・岩田剛典をはじめとする共演者との裏話など、たっぷりと話を聞いた――。

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    中村倫也
    1986年生まれ、東京都出身。05年、映画『七人の弔』で俳優デビューし、さまざまな映画、ドラマ、舞台に出演。2018年、ドラマは『崖っぷちホテル!』のほか、『ホリデイラブ』(テレビ朝日)、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』など。映画は『伊藤くん A to E』『孤狼の血』『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』に出演。

スタッフを驚かせようと…

――今回は「競艇狂いのシェフ」という特徴的なキャラクターを演じていますが、どのように役作りをしていったのですか?

“職人気質なやつ”というのをテーマにやってますね。一見とっつきにくいんですけど、話せば悪いやつじゃなくて、自分の職に関してプライドを持っている。そのプライドが邪魔をしていたところから、第3話で成長を見せられるように。あと厨房は(浜辺美波演じるハルとの)コンビ芸なので、ハルとの掛け算でよりこの作品が面白くなるようにというのを考えてやっています。

――浜辺さんとは今作が初共演ですが、印象はいかがですか?

みんなで「べーさん」と呼んでいるんですけど、すごく大人っぽくて、17歳に見えないです。本人いわくすごい人見知りらしいんですけど、僕がそれを気にせずズカズカしゃべっちゃうんで(笑)。でも、すごく真面目なんですよ。ハルという役は動きを付けられることが多くて、セリフもやって料理もやって、その上テンション高くということまで求められるので、「厨房の撮影の前日はしばらく眠れませんでした」って言っていました。いい子ですね。

――「べーさん」というあだ名は、中村さんが考案したんですか?

そうですね。人見知りだと言っていて、大人数でいた時もおとなしくしてたので、なじんだほうが楽しいと思って、みんなの前で「『べーさん』って名付けました!」って発表しました。その後、川栄(李奈)ちゃんがレギュラーになって、「『えーちゃん』って名付けました!」って言ったんですけど、それは全然浸透しなかったです(笑)

――浜辺さんとは掛け合いが多いですが、結構打ち合わせなどをしているんですか?

ほとんどしてないですね。特に、最近はお互いがだんだん役をつかんで気も楽になってきてるんで。ドライ(段取り確認)の時に、スタッフを驚かせようと思って、「これ言ったらこれやってよ」って話をすることもあります。

――例えばどんなことをやったんですか?

「雨が降りそうだな」みたいな会話の後に「『それって告白ですか?』って聞いてみて。そしたら俺ツッコむから」って提案して。それを本番でやってみたんですが、監督から、「今のパターンはもらえましたので、ないパターンもください」って(笑)。そんな感じで、みんなでワイワイしながらやる現場なので、スタッフを含めて楽しくやっています。

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    浜辺美波(左)と中村倫也=6月10日放送の第9話より (C)NTV

“ツン”から入る役「得してます」

――江口とハルの関係で意識している点はありますか?

江口は、ハルのことを認めていないところからスタートしたんですが、台本を読んでいると、ハルに対して「うるせーな!」って言いながらいちいちツッコミを入れるんですよ。それで、「さてはこいつら仲いいな?」と思って。こういうキャラクターなので、セリフはキツイですけど、実はハルのことを面白おかしく思っている。そういう空気感の方が、見ている人もきっと楽しいだろうなと思って。それを意識していますね。

――以前、インタビューで「ハルが一番かわいく見えるように頑張ろう」とお話しされていましたよね。

具体的に見た目がどうこうっていうのは僕の範疇じゃないので、空気感だったり、「こういう出方をするなら、こう入れておいたほうがより愛嬌があって見えるな」という、ちょっとしたチューニングを調整している感じです。

――実際にかわいくできている手応えはありますか?

できてるんじゃないですかね(笑)。元があんなにいい素材ですから、邪魔をしないように、僕は脇で生える雑草のように、花を咲かそうと思っています。

――江口とハルのコンビは“えぐハル”と評判になってます。

そんな話をこの前、西尾まりさん(清掃員・吉村尚美役)としていたんですが、そしたら「このコンビは、ボケとツッコミがハッキリしているから見やすいんじゃない?」と言われて、あぁなるほどなって思いましたね。

――江口のツンデレぶりも、好評です。

“ツン”から入っているので、ちょっとしたことでギャップが作りやすいですし、いろんな意味で見ている人の感情を動かしやすいという気がするんです。少しコミカルになっただけで、面白さが生まれやすいし、ちょっと優しい顔しただけで「いい人」と言われるんで、得しています(笑)