アクセンチュアは5月29日、グローバルにおける2017年フィンテック投資額についての調査結果を発表した。

同調査によると、2017年のフィンテックベンチャーへの投資額は、アメリカ、イギリス、インドの投資にけん引された結果、前年度18%増の274億ドルに達したという。案件数も1805件から2694件に増加。金融イノベーションの実需要が増えてきていると、とらえることができるだろう。

  • グローバルフィンテック投資の推移

    グローバルフィンテック投資の推移

上記、アジア・パシフィックエリアが2017年度に前年を下回っているのは、2016年度にあった大きなディールの反動だと考えられている。

国別にフィンテック投資の推移をみると、フィンテック投資の金額が大きな国は、年成長率40%前後の安定した成長を見せており、投資規模の小さな国は案件数の平均成長率が高い傾向にあることがわかった。

事業別では、「決済」や「融資」といった領域はさまざまな国で伸びているが、「預金」や「保険」といった領域は、アメリカやイギリスといったフィンテック先進国を中心に拡大しているという。

  • 国別のグローバルフィンテック投資

    国別のグローバルフィンテック投資

  • 事業領域別の動き

    事業領域別の動き

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 テクノロジー戦略グループ日本統括 マネジング・ディレクターの村上隆文氏は「グローバルにおいて、日本の投資額はまだまだ小さい。成長も非常に緩やかである」と指摘。一方で「活性化の余地は大きい」と分析する。

  • アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 テクノロジー戦略グループ日本統括 マネジング・ディレクターの村上隆文氏

    アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 テクノロジー戦略グループ日本統括 マネジング・ディレクターの村上隆文氏

また、同社では、2010年から継続的にフィンテックに関するデータを分析している。その流れをみると、フィンテックのもたらす意味合いも変化してきているという。

「2016年からは社会構造変革にリーチするスタートアップを目にする機会が増えた。産官学連携も増加し、フィンテックの発展期と位置付けることができるだろう」と、村上氏はフィンテックの進化を振り返る。

  • スタートアップエコシステムと金融イノベーションの進化

    スタートアップエコシステムと金融イノベーションの進化

さらに、フィンテックの進化について「日本ではATMの数が多く、手数料などもそこまで高くない。高度な金融サービスが提供されていたため、イノベーションを起こす必要性は高くなかった。ただし、エコシステムによる金融高度化や社会構造変革については、大きな潜在的ニーズがある。そのため、産官学が一体となった社会解決型ビジネスにおける成長の余地が大きい」と、村上氏は日本のフィンテック市場の発展の道筋を示す。

そのうえで「さまざまな文化を持った人が出会うことによってイノベーションは生まれる。グローバルで見てもトップクラスの経済規模と人口密度があることから、日本はイノベーション促進には地の利があるといえる。日本の金融機関は、新しい持続性のあるビジネスモデルを模索していくことが大事だろう」と、金融機関が進めるべき取り組みを提示した。

  • 日本市場発展の道筋

    日本市場発展の道筋