齋藤社長が使った言葉のなかに、「情熱品質」がある。

齋藤社長は、「モノづくりにこだわった『情熱品質』を発信しつづけているのがFCCL。モノづくりは我々の価値そのもの。愚直に、最新のテクノロジーを、いち早く、お客様が手に取れるようにし、それによって差別化したモノを作り上げる社内風土は、37年間に渡って培ってきたものだ。我々は、この財産を手放すようなことはしない」と断言してみせた。

その「情熱品質」を実現するのが、川崎での開発、島根や福島での生産体制ということになる。

  • 会見で登壇した富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の齋藤邦彰社長

「数を追うビジネス」から「個人と向き合うビジネス」へ

もうひとつ、印象的だったのは、齋藤社長は、レノボとの戦略的提携を、結婚に例えてみせたことだった。

「世界トップクラスの出荷台数を持つレノボとの提携は、頼れるパートナーと結婚したのと同じ。しっかりものの女房がいるから、旦那は思う存分やんちゃができる」として、「我が家もそうなりたい」と冗談を加えてみせた。

齋藤社長は「やんちゃができる」という意味を次のように示す。「コモディティの世界でありがちな数を追うというビジネスだけでなく、より個人個人への深さを追求できるようになる。ボリュームをあまり気にすることなく、我々しか持っていない強みを生かして、深堀りすることができるようになると考えている」。

そして、「コンシューマPCは買い換えサイクルが長くなり、自分にあった、いいものを買いたいという傾向が高まり、15万円以上のPCも売れ始めている」と市場環境を捉えながら、「そこに向けた商品を投入できることは、むしろ差別化になる。我々の強みがさらに強固なものになると考えている。富士通のPCは、お客様に満足していただけるものを世の中に送り続けてきた自負がある。それはこれからも変わらない。これまで同様に、人に寄り添うことをさらに磨き上げたい」と語った。

  • 5月16日の会見では、法人向けのEdge AIプラットフォーム「Infini-Brain」が初公開された。DAY1000(1,000日後)までの商品化を目指すという

FCCLが目指す「人に寄り添う」製品づくりとは

FCCLでは、「人に寄り添う」ことを、キーワードに掲げ続けている。

「コンピュータは、均一で、一様の道具ではなく、一人ひとりにあわせた使い心地を追求していくことが大切である。そして、単なるモノではなく、お客様にとってかけがいのないものを提供してなくはならない。これが、人に寄り添った商品ということになる。FCCLは、個人の行動を自由にし、個人の暮らしを楽しくする。体と心の両方に寄り添った商品を作り上げていく」とする。

さらにこうも語る。「我々は、もっとお客様に寄り添うために変わる。すべての主語に『お客様』をおき、お客様のためになにができるかということに、全従業員が一丸となって突き進む」。

齋藤社長が会見のなかで使った「Made for you」という言葉は、「人に寄り添う」ことを意味している。これをグローバルに使っていくつもりだ。

では、「人に寄り添うコンピューティング」とはなにか。そして、FCCLは、今後、どんな形で「人に寄り添う」コンピューティングを具体化していくのだろうか。

その答えは、2つの観点から見ることができそうだ。次回以降、その2つの取り組みを追う。