総務省の「家計調査報告」(2017年調査)から、実際の貯蓄事情を紐解くと、必ずしも年収が高いから貯蓄が多いとは言えないことが見えてきます。年収による平均貯蓄額をみていきましょう。

◆平均年収355万円で貯蓄は795万円
総務省が発表した2017年の「家計調査報告」から、平均貯蓄額について複数の観点からレポートしています。二人以上世帯の平均貯蓄額は1812万円(貯蓄保有世帯の中央値は1074万円)、そのうち勤労者世帯(無職の高齢者世帯、自営業者、自由業者を除く)の平均貯蓄額は1327万円(中央値792万円)でした。

年代別では、40歳未満で602万円、70歳以上では2385万円と大きな開きがありました。しかし、負債を差し引いた純粋な貯蓄額では、平均でもマイナス237万円、40歳未満では1360万円ものマイナス、60歳以上でも743万円と老後資金としてはかなり厳しい現実が浮かび上がる結果になりました。では、年収別ではどうなっているのでしょうか。

年収階級別・貯蓄と負債の関係(二人以上世帯のうち勤労者世帯)

年収区分は、年収の低い世帯から高い世帯へと順番に並べて5等分されたもので、年収の低い方から第1階級となっています。二人以上の世帯のうち、勤労者世帯の貯蓄現在高は、年収が高くなればなるほど多くなるという結果で、第1階級で795万円、年収が最も高い第5階級では2184万円という結果です。一方、負債も第1階級では384万円ですが、年収が高い第5階級では1051万円と、年収が高くなるにつれ、負債も大きくなっています。

確かに、年収別で貯蓄と負債をみると、年収が高ければ、貯蓄も多いが負債も多いということになりますが、貯蓄から負債を差し引いた純粋な貯蓄額をみると、第1階級で411万円なのに対して、第2階級で260万円、第3階級で247万円と逆転現象が起きています。

◆年収が高いから貯蓄意欲が高いとは限らない
お金が貯まらない、貯められない、という世帯のなかには、収入が少なく、貯蓄に回せるお金がない、というケースが多く見られます。確かに、働き始めて間もないころは、生活費のやりくりだけで精一杯かもしれませんが、5年、10年たっても貯蓄が増えないとしたら、それはお金に対する意識に問題があるのかもしれません。

年収によって消費行動が変わりますから、年収が高くなった分、まるまる貯蓄が増えるという単純なものではないでしょう。また、住宅購入にあたっては、購入物件も違ってきますので、年収が高ければ負債が多い、というのも当然かもしれません。

しかし、貯蓄に対する意欲ともいえる「貯蓄倍率(年収に対する貯蓄の割合)」は、年収が低い第1階級が2.24倍と最も高く、年収が最も高い第5階級で平均以下の1.76倍となっており、年収が低いからお金が貯められない、年収が高いから貯蓄意欲が高いとはならないわけです。

この年収別のデータは、年代区分で掛け合わせしていないため、すべての年収階級での平均年齢は50代前後になっています。定年までのあと10数年でどれだけ貯蓄を増やすことができるのかで、老後生活に大きな影響を与えます。最も年収が高い第5階級であっても、純粋な貯蓄残高は1133万円にとどまります。現状の貯蓄額では、退職金を合わせたとしても、不安が残るでしょう。

一見、老後は安泰のように思えても、消費行動を現役時代のまま変えられないとしたら、現状の貯蓄ペースで本当に大丈夫なのか、節約すべきことはないのか、といった点も重要になってくるでしょう。現在の貯蓄額が少ないのは、子どもの教育費負担が重い、住宅ローンの返済が厳しいということもあるでしょう。平均貯蓄額1812万円!に踊らされることなく、これらのデータを参考に、自分の資産状況を把握し、貯蓄プラン、ローンの返済プランを考えて直すきっかけにしてみてください。

文=伊藤 加奈子