シュナイダーエレクトリックは5月18日、都内で事業戦略説明会を開催した。説明会にはSchneider Electric International Operations Executive Vice Presidentのリュック・レモン氏と、シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏が出席した。

IoT関連の売り上げが約半数に

冒頭、レモン氏は「グローバルでは2017年度に247億ユーロの売り上げとなり、IoT関連の売り上げの割合は45%となった。われわれでは、デジタル(Digitizing)と電力(Powering)を融合していきたいと考えている。AIとAR(拡張現実)、IoTなどのデジタル化と今後見込まれる電力需要の拡大を見据え、IoTに対応したプラグアンドプレイ機能を備えるオープンアーキテクチャ『EcoStruxure』で対応していく」と述べた。

  • Schneider Electric International Operations Executive Vice Presidentのリュック・レモン氏

    Schneider Electric International Operations Executive Vice Presidentのリュック・レモン氏

日本について白幡氏は「グローバルと同様に、日本でもデジタル化への早急な対応が必要なDigitaizingと、エネルギーおよび運用効率を改善するPoweringに取り組む。それに加えて、日本ではグローバル展開と世界標準への対応と共存を実現するGlobalizingも重要なテーマとなる」との認識を示す。

  • シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏

    シュナイダーエレクトリック 日本統括代表の白幡晶彦氏

同社が日本で注力するセグメントは、IoTを支えるハイパフォーマンスの「データセンター(DC)」、IIoTに対応する「スマートフファクトリー」、効率・安全を実現する「デジタルプラント」の3つだ。

  • 日本では3つのセグメントに注力

    日本では3つのセグメントに注力

DCは、近年の企業システムや個人サービスのクラウド化やIoT/AIの普及によるIT需要の拡大への対応、スマートファクトリーはグローバル展開、自動化への対応、デジタルプラントは安全な製品から安全なシステムにデジタル化によるライフサイクルの改善が、それぞれ求められている。

そこで同社が提案しているのがEcoStruxureだ。同アーキテクチャは第1の層「ネットにつながる製品」、第2の層「エッジコントロール」、第3の層「アプリケーション、分析、サービス」の3層を相互に連携させ、オープンなIPプロトコル上でベンダーに依存せず、多様なハードウェアやシステム、制御環境での稼働を実現することを可能としている。

同アーキテクチャをベースにDCには「EcoStruxure IT」、スマートファクトリーには「EcoStruxure Machine」、デジタルプラントには「EcoStruxure Plant」で対応する。

そのほか、同社では電力グリッド向けの「EcoStruxure Grid」、ビル管理向けの「EcoStruxure Building」、電力供給向けの「EcoStruxure Power」の各フレームワークを提供している。

  • 「EcoStruxure」の概要

    「EcoStruxure」の概要

500kVA~1500kVAまで拡張可能な三相UPS「Galaxy VX」

EcoStruxure ITは、DCの運用においてはIT機器に注意を払いがちだが、ダウンタイムが許されない安定的な運用が必須となる性質上、それを支えるインフラが重要となり、インフラ最適化のエネルギーマネジメントを可能としている。

  • 「EcoStruxure IT」の概要

    「EcoStruxure IT」の概要

同社が提供しているUPSや空調機器、ラックシステムなどのハードウェアがネットにつながり、オペレーションソフトウェアにより適切にリアルタイムに最適化され、効率化と安定運用を両立するとともに、得られたデータを高度なアナリティクスで設計段階、予知保全などに活用することができるという。

今回、EcoStruxureアーキテクチャの第1の層であるネットにつながる製品の新製品として発表されたのが三相UPS「Galaxy VX」だ。

新製品は電力を供給するためのパワーキャビネットを段階的に増設できるモジュラー型の設計により、500kVA~1500kVAまで拡張を可能とし、ECOnversionモードという運転モードを新たに備える。同モードは従来のダブルコンバージョンモード(常時インバータ給電モード)とECOモード(効率性を重視した運転モード)それぞれのメリットを有する。さらに、バックアップ用のバッテリーとして鉛蓄電池のほかにリチウムイオンバッテリーが選択できる。

  • 「Galaxy VX」の外観

    「Galaxy VX」の外観

白幡氏は「リチウムイオンバッテリーは鉛蓄電池に比べ、機器の設置面積を最大60%縮小できるほか、バッテリー寿命は約3倍、充放電回数も約10倍となっており、TCO(総所有コスト)では最大50%削減することを可能としている」と、説明した。

  • 「Galaxy VX」の概要|

    「Galaxy VX」の概要

「シュナイダーARアドバイザー」の販売パートナー契約を拡充

EcoStruxure Machineは、スマートファクトリーを実現するために必要となるスマートマニュファクチャリング・マシーンに対し、製品の設計、構築、運用、保守にまたがったハードウェアとソフトウェアを組み合わせたアーキテクチャとしてのソリューション。

  • 「EcoStruxure Machine」の概要

    「EcoStruxure Machine」の概要

UPSやセンサ、ドライブなどの各種機器がIOを持ち、リアルタイムに接続され、PLC(Programmable Logic Controller)やHMI(Human Machine Interface)を介してソフトウェアに接続し、設計、運用、保守を提供する。

EcoStruxure Machine関連では、昨年にAR(拡張現実)技術を活用し、工場などの生産現場における保守作業の効率化を可能とするソリューション「EcoStruxure Augmented Operator Advisor(シュナイダーARアドバイザー)」を提供開始した。

すでに同ソリューションはカリモク家具が採用し、作業の標準化により、保全員のスキルに頼らない故障原因の検出や、紙のマニュアルを探さずに装置の作業を可能としている。

そして今回、シュナイダーARアドバイザーの販売パートナーとして10社とパートナー契約を締結し、販売パートナー専用の開発用ソフトウェア「シュナイダーARビルダー」の提供開始を発表した。

  • 「シュナイダーARアドバイザー」のパートナー10社には開発用ソフトウェアを提供

    「シュナイダーARアドバイザー」のパートナー10社には開発用ソフトウェアを提供

これにより、自社のサービスや製品へシュナイダーARアドバイザーの組み込みができるようになるという。販売パートナーは因幅電機産業、サンセイテクノス、スズデン、高木商会、鳥居電業、日伝、北菱電興、マナ・デザインワークス、明治電機、ライト電業となる。

  • パートナー企業の一覧

    パートナー企業の一覧

「One Shneider」実現のために各部門のシナジーを活用

EcoStruxure Plantは、ライフサイクルを通じた運用段階における知見を設計段階に反映できるほか、設計段階から保守の在り方に反映させることができるという。

  • 「EcoStruxure Plant」の概要

    「EcoStruxure Plant」の概要

日本の重電設備メーカーなどは海外展開していることが多く、過去・現在・未来を通じた重要なパートナーのため、同社では世界標準の製品・ソリューション、100カ国を超えるネットワーク、サービス体制を組み合わせて提供することで、ともにグローバル市場で成長していくことが大きなミッションだという。

最後に白幡氏は「これら3つの領域に対して、われわれがが目指すことは『デジタル化による技術の継承』『横断的なインフラ統合管理システムの提供』『グローバリゼーションを顧客とともに加速』していくことだ。Digitizing、Powering、Globalizingを推進し、今後は“One Shneider”として各部門のシナジーを活かしつつ、顧客とともに成長していく」と、強調していた。