Amazonプライム・ビデオにて2016年に「Season1」(全13話)、2017年に「Season2」(全13話)が配信され、ついに5月19日には"完結編"となる劇場版が公開される『仮面ライダーアマゾンズ』シリーズ。ハードなアクションのみならず、重厚なストーリー、そしてそれぞれにドラマを抱えた魅力的なキャラクターが、多くのファンの心を掴んだ。『アマゾンズ』はどのようにして作られていったのか。配信ドラマのSeason1、Season2で手腕をふるい、劇場版を手がける石田秀範監督にお話をうかがった。(前後編の後編/前編)

石田秀範監督 撮影:大塚素久(SYASYA)

――『アマゾンズ』演出にあたって、核にされたのはどのようなことなのでしょう。

どんなことでも、オブラートに包まず表現するってことです。見ごたえをあえて悪くする、わかりやすくしない、すぐに答えを出さない。映像そのものや、役者の芝居に実感を持たせる。登場人物の痛い、辛い、苦しいといった生々しい感情を実感させる、というところですかね。

――人間同士の感情がむき出しになった生々しいドラマを見せていくためには、演じる俳優の方々にも高いレベルを要求することになりますね。そうなりますと、キャスティングについても石田監督ならではのこだわりがあったのではないですか。

"芝居がちゃんとできる人"というのは絶対条件でした。でも、いいものを持っているけれど、出し切れていない人もいるんですよ。だから、"実現力のある人"というのも大事です。プロデューサーや監督、スタッフの期待にどこまで応えられるか。自分の殻を破って、新しい世界に飛び込んでいけない人もいますので、そのあたりの見極めはオーディションにおいて大切なことでした。

――十分なキャリアを持った谷口賢志さんがアマゾンアルファ/鷹山仁を演じるというのは、石田監督にとっても「期待に応えられる人物」という条件に見合っているのではないですか。

谷口くんはベテランの域ですので、たぶんこの役(仁)は出来るな、と思いました。まあ、いざ演じてみるとあそこまでエグい芝居をするとは、正直想像していなかったな(笑)。もちろん、こちらから"空気"は入れましたけれどね。撮影に入る前は、彼自身も「仮面ライダー」のブランドを意識して、いかにもな「ライダー」の芝居をしようと思っていたかもしれない。何しろブランドなので、各方面からの注目、期待もすごいでしょうからね。そういう部分を砕いてやって、"空気"を吹き込んでみました。ただ、こちらが期待していても、応えられる人と応えられない人が出てくるんですが、その点、谷口くんは一流の俳優ですから、見事に応えてくれました。

――もう一人の主人公・水澤悠を演じる藤田富さんの起用についてはいかがですか? "野生"な大人の仁との対比で"養殖"を思わせる繊細さを備える藤田さんは、見事に悠を自分のものにされていたように思えます。

藤田くんは、演技経験のなかったまったくの新人でした。彼は白倉(伸一郎/プロデューサー)さんが選んだ、イチオシ中のイチオシだったんです。白倉さんは彼を見た瞬間、一発で決めたっていうんです。僕は気づかなかったですけれど(笑)、白倉さんの"メガネ"はこれまでにも曇ったことがないですからね。撮影に入ると、あの芝居でしょう。演技経験がなくてあの表現力ですから、彼の感性は凄いです。でも、僕はいまだにあいつの人間性が分からない(笑)。理解不能なんです。それが魅力なのでしょう。

――藤田さんは映画『最後ノ審判』では、台本どおりではなくご自分なりのアイデアを生かして芝居をしたい、と石田監督に提案されたそうですね。

そう。Season1やSeason2のときはそういうこと言わなかったですからね。富がその後、他のドラマや映画などの仕事をこなすようになり、役者としての自覚が出てきたのでしょう。他人からこうしなさいと言われるだけでなく、自分からもこうしたいという提案をしなきゃいけないということが、わかってきたんだと思います。