故・渡瀬恒彦さん主演の『警視庁捜査一課9係』(2006~17年)を引き継ぎ、装いも新たにスタートしたテレビ朝日系ドラマ『特捜9』(毎週水曜21:00~)。ここに、新メンバーの若手刑事・新藤亮役として、俳優の山田裕貴が加入した。主演のV6・井ノ原快彦演じる浅輪直樹を筆頭に、ひと癖もふた癖もあるメンバーたちが顔をそろえる中、山田は、積極的で実直ながら、ゆとり世代的な若者気質の持ち主という新藤の役柄を、うまく乗りこなしている印象だ。

映画12本、ドラマ5本に出演し、一気に飛躍を遂げた2017年を経て、俳優としての真価が問われる2018年。12年かけて培われたチームワークができあがっている『特捜9』という作品に、どのような心境で飛び込んでいるのだろうか――。

  • 001のalt要素

    山田裕貴
    1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2011年に俳優デビューすると、その後数多くの作品に出演し、主演舞台『宮本武蔵(完全版)』では読売演劇大賞作品賞を受賞。今年はドラマ『ホリデイラブ』『特捜9』(いずれもテレビ朝日)、映画『となりの怪物くん』『万引き家族』『虹色DAYS』に出演。今秋、主演映画『あの頃、君を追いかけた』が公開予定。来年4月スタートのNHK連続テレビ小説『なつぞら』への出演も決まっている。

"熱血新人刑事"にはなりたくなかった

――今回は先走ったり効率を考えたりと、今どきの若者的な新人刑事という役どころですが、どのようにこのキャラクターに臨んでいますか?

まず、よくある刑事モノの"熱血新人刑事"みたいには絶対になりたくないと思ったんです。だから、先走っちゃうのは熱いからじゃなくて、事件を早く解決してあげたいからということが原動力になって、その中で生意気なことを言っちゃうような刑事に見えたらいいなと思って。吹越(満)さんに「成長させない方が難しくて面白いじゃんって」と言われて素敵な言葉だなあと思ったんですけど、僕、結構ドラマでも映画でも、どの役も成長を考えてキャラクター作りをしてきたんです。でも、もしこの新藤というキャラクターが長く続いていくとすれば、やっていくうちに成長の伸び率がどんどん減っていくと思うんですよ。だから1話1話で気づきはあっても、性格そのものは変わらずに、前の話でできていたのに、また同じようなミスをしてしまうようなキャラクターになればいいなと。ただ、こういう役作りが一番難しいですね。

――いわゆる"ゆとり世代"というキャラクターですよね。

僕自身は、ゆとり世代でありながら、ゆとり世代と感じてないタイプの人間なんです。ずっと野球をやってとても厳しい環境にいたから、全然"ゆとられてない"んですよね(笑)。だから、正直その感じが分からないんですけど、最近の若者らしさは、スマホで音声検索したり、一人称が「僕」とか「俺」とかそろわなかったり、「先輩!」って言っちゃって「あー主任だあ」ってなっちゃうとか、そういう細かな部分で若者らしさみたいなものを出していければと思ってます。

――そうすると、役に共感できる部分は…

ないですね(笑)。でも、共感できないキャラクターをやるのは、すごく面白いです。僕だったらもうちょっと先輩とうまくやれるように考えるはずだって思ったり。新藤は思い立ったらすぐ行動に移しちゃうんですが、僕は思い立っても考えてから突き進むので。僕の方が反射と思考がうまく噛み合ってると思います(笑)。だから台本を読んで、「もう~新藤!」ってあきれることがよくあるんです(笑)

  • 002のalt要素

自分ならもっとうまくやれる(笑)

――そうしたご自身とは違うキャラクターを演じるにあたって、役作りの参考にしている作品や周囲の人などはいるんですか?

僕はあまり、何かを見て役作りの参考にするというのは、マネになっちゃいそうなのでしないんです。だから、自分の中にある新藤っぽい部分を見つめて考えて膨らませて、こういう若い子だったら嫌だなとか、こういう生意気さは警察官としてはありだけど人としてどうかなとか、そういう日常的な部分の中で節々に思ったことや感じたことを、新藤に当てはめていってるという感じです。

――具体的に、どんな言動に生かされていますか?

僕は「絶対こうだと思います」って意見を通そうとするとき、結構食い下がらないので、そういう部分は新藤っぽいと思いますね。僕自身は、その意見に対して何か言われたら受け止めて「そういうこともあるかもしれないな」という考えを持てるタイプなんですけど、新藤はそれができないので、その部分を1個外せば新藤になれるっていう組み立ての仕方をしています。でも、ただ不快感を与えるだけの生意気さは良くなくて、その中に愛らしさというものがないと、『特捜9』のメンバーにはなれないと思うんです。青柳さん(吹越)だって、破天荒なところがあるけど、恋人の妙子さん(遠藤久美子)に対してすごくカッコよかったり、主任(=浅輪直樹/井ノ原快彦)だったら大きく包み込む柔らかい感じがあったり、そういう愛される部分が皆さんにありますからね。

――そんなベテランの先輩キャストに囲まれたチームに入ると、役者として吸収することも多いでしょうね。

12年という本当に長くシリーズを支えているのは、スタッフさんはもちろんですけど、あのキャラクターを作り上げてきた個々の俳優さんたちの影響ってすごくあると思うんですよ。そこに、新人として入らせてもらうと、井ノ原さんをはじめ、皆さん本当に優しくて温かい。だから、2~3話を撮影しているときに、これは絶対打ち上げで言おうと思ったんですけど、皆さんの良い部分をぜんぶ吸収したら、僕、最強になれると思ってるんです(笑)。あの人のこういうところを盗んでみようとか考えていると、毎日がすごく楽しいですね。それこそ新藤と一緒で、先輩たちの技を1個1個拾っていくような部分を重ねながら、自分も成長していくという感覚ですね。