昨今のAppleの取り組みや主張から、Lisa Jackson氏とともに晩餐会に出席したということに、政権を牽制するという意味を見出したくなる。しかし晩餐会の翌日、Tim Cook氏はトランプ大統領と会談しており、ここでの主題はもう一つの、Appleが懸念を示している問題にあった。

それは、米国と中国の貿易戦争だ。

強いアメリカを標榜する中で、トランプ大統領がは他国との間に生じている貿易赤字の解消を一つの政策的なゴールに設定している。つい先ごろも中国や日本、欧州を対象にした鉄とアルミニウムの高関税を課したばかりだ。これに中国は、米国産農作物125品目に対する関税を課すという対抗措置で応酬している。

また米国は、中国の知的財産侵害に対する制裁として、1,300以上の品目に関して、25%の関税をかける案を提出した。市民生活への影響と貿易額の大きさを鑑み、スマートフォンは含まれていないものの、スマートフォンを構成するタッチパネルディスプレイは関税対象となった。

例えば、ここで影響を受けるのはApple Storeやスマートフォンの修理ショップだ。iPhoneそのものに関税はかからなくても、その交換部品であるディスプレイは関税対象となり、修理部品のコストが上昇することを意味する。

加えて、米国の中国通信機器企業に対する措置は新たな火種となる。ZTEに続き、中国通信機器大手でスマホブランドとしても急成長するHuaweiが、イランへ米国の通信機器を違法に輸出したという嫌疑をかけられ、米司法省による捜査が行われている。

2012年には中国企業の通信機器が「中国政府によるスパイ行為の可能性がある」として、米国の国防総省や通信会社による調達を禁じた。加えて2018年2月には、FBI、CIA、NSAといった米国の捜査当局や諜報活動に関連する6機関が、HuaweiやZTEを名指しで批判し、米国の通信キャリアでの取り扱いなどで圧力をかけるという事態が生じたばかりである。

貿易戦争とは異なる文脈だったが、事実上、Huaweiは米国でのスマホ展開を制限される形となっており、他の貿易摩擦方面の事案とともに、AppleのiPhoneが中国国内、あるいは中国から米国への輸出品として、不当な扱いを受ける可能性は想像に難くない。