Tim Cook氏のインタビューからは、シリコンバレーにあっても、Appleが長年にわたって、プライバシー問題や、コンテンツのキュレーションに対して信念を持って取り組んでいることが分かった。では、これからどうするのか、が問題となる。

インタビューの中では、データを不正に流出させたFacebookが、プライバシーを大切にするAppleのApp Storeでまだダウンロード可能な状態だ。おそらくAppleは、Facebookアプリ自体をシャットアウトすることはないだろう。プラットホームに責任を持つ一方で、過剰な規制を良しとしているわけではないからだ。

ただ、今後も同様の事態が続けば、行動を起こす可能性がある。これはFacebookにとっては、大きな損失になり得るし、GoogleにとってはAndroidへの勧誘をする絶好の機会にもなる。つまりは、人々の議論と認識を細かく読み取りながら、あるべき姿を見つけていく必要があるのだ。

繰り返しになるが、こうした議論や判断は、シリコンバレー内の企業が、米国の人々の意向を中心に行われる。もちろん日本のユーザーも主張に参加すべきだが、そのためにはまず、なぜ現在Facebookが米国で問題になっているのか、詳しく知る必要があるのだ。

松村太郎(まつむらたろう)


1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura