2018明治安田生命J1リーグで、3分の1に当たる11試合を終えて3勝3分け5敗の勝ち点12、J2降格圏一歩手前の15位。これが鹿島アントラーズの現時点でのポジションである。

 4月28日も横浜F・マリノスに3点を食らって0-3で完敗。「常勝軍団」という本来の姿から大きくかけ離れた状態を露呈した。4月のJリーグはわずか1勝。総得点8・総失点13という数字も「1-0でしぶとく勝つ」という伝統を貫いてきたチームにとっては、想定外にほかならない。

「アントラーズはもともと『どっしり構えるチーム』なんだよね。それが今はちょっとできていない。先に点を取られるとバタバタとなるから。2点目取られてバタバタして、さらに点を取りに行くとカウンターでサクッとやられている」

「これまでは『1点くらい取られても、前線が点取るだろう』っていう変な余裕みたいなものがあった。『1点くらいくれてやるよ』くらいの雰囲気がね」と8年ぶりに古巣に戻ってきたDF内田篤人はタイトルを取り続けてきた当時との違いを如実に感じているようだった。

 内田がシャルケに移籍した翌年の2011年から鹿島でプレーするDF西大伍も似たような思いがあるようだ。「あの頃のチームをリードしていた(小笠原)満男さんたちの世代は技術も高いし、サッカー頭が頭抜けてよかった」と彼はしみじみ言う。確かに小笠原、GK曽ヶ端隼、MF本山雅志(現ギラヴァンツ北九州)、DF中田浩二(現鹿島CRO)ら黄金世代は90分間の流れの作り方や相手との駆け引き、どこで畳みかけるかというのを自然とピッチ上で表現できていた。それが内田の言う「どっしり構える」という意味だったのかもしれない。

 内田も西も先輩に引っ張られているうちはよかったが、今はともに30代。もはやチームを引っ張らなければいけない立場だ。「今日の先発ではかなり年長の方? レオ(シルバ=32歳)がいるじゃん」と内田は冗談交じりに話したが、「どうしたら鹿島を勝たせられるのか」と誰よりも多く自問自答しているに違いない。

 それも「自分が常勝軍団を復活させなければいけない」という使命感があるから。長く苦しんだ右ひざが回復し、3月から抱えていた右大腿部のケガもようやく癒え、4月14日の名古屋グランパス戦以降はJ1で4試合連続スタメン出場できる状態になったからこそ、自らが周りをけん引していく意識もより強まっているはずだ。

「(4月25日のヴィッセル)神戸戦の前にヤナギ(柳沢敦コーチ)さんが『アントラーズはいっぱいタイトルを取ってきたけど、その時々の人が頑張って取ってきたんだ』と言っていたんです。『(クラブの)名前で取れるもんじゃない』と。本当にそうだし、今出ているメンバーで勝たないといけないんだよね」

「ただ、こういう状況は何かきっかけがあれば変わる。1つのゴールだったり、1つ勝って、連勝したりすればね。一番ダメなのは、下を向くこと。俺みたいにメディアのみなさんと喋って気を晴らして帰るくらいがいい。暗くならずにやることだと思います」と内田は気丈に前を向くことの大切さを改めて口にした。

 横浜FM戦は守備リーダーのDF昌子源が負傷で控えに回ったこともあり、声を出して周りを鼓舞する人間もいなかった。守備の軸を担ったDF植田直通やMF三竿健斗は真面目な性格で、1つのミスを引きずりがちだ。が、それではポジティブな方向には進まない。植田も三竿もFW鈴木優磨も年齢は若いかもしれないが、ピッチに立ったら条件は一緒。それぞれが殻を破り、存在感を示さないといけない。そういうチームになれれば、常勝軍団は新たな段階に突入できる。内田はそう考えるから「みんなでやることが大事」だと強調したのだ。

 1つ提言するなら、泥臭く走るところからやり直してみてはどうだろうか。今季の鹿島のチーム平均走行距離は111.09キロで、J1平均の115.440キロを大きく下回る17位に沈んでいる。この日敗れた横浜は119.516キロでダントツのトップ。内田も献身的にラインの上げ下げを繰り返す40歳の大ベテラン・中澤佑二に対し「本当にすげえよ。あのラインの上げ下げがどれだけきつくて辛いか。あれ一番足に来るからね」と最大級の賛辞を送っていた。

 内田自身もトップコンディションだった頃のスピードや動き出しの速さ、体のキレをまだ完全には取り戻せていないものの、走行距離やスプリント回数を増やすことはできるだろう。実際、横浜戦62分間の7.062キロという壮行距離、12回というスプリント回数は相手のMF遠藤渓太やMF山田康太といった若手に比べてやや見劣りした。内田がよりアグレッシブなパフォーマンスを見せ、チーム全体に戦う姿勢を伝えていけば、必ず躍動感とフレッシュさを取り戻すきっかけになる。ドイツ時代にチャンピオンズリーグ準決勝など異次元のレベルを体感してきた男ならば、悪い流れをガラリと変えるきっかけを作れるはずだ。

 本人が「自分が入ったら協会とも選手ともメディアのみなさんともうまくやれる」と色気を見せる日本代表復帰も、そういう微妙な変化によって可能性が高まってくる。内田の一挙手一投足には日本中のサッカー関係者やファンが注目している。それを今一度、強く認識して、彼には鹿島の救世主になるべく、異彩を放ってほしいものである。

文=元川悦子