2018年度に60歳定年で退職者する人の公的年金支給開始は62歳。60歳定年後も公務員は再任用制度によって原則65歳まで働き続けられますが、退職後どんな行動をとったのでしょうか。あるアンケート結果から勤務形態や勤務日数・時間、給与、など実情をご紹介します。

◆国家公務員も「再任用制度」により65歳まで働けるように
平成25年4月1日施行の「改正高年齢者雇用安定法」により、民間企業の就労者は希望すれば原則65歳まで働き続けることができるようになりました。国家公務員も「再任用制度」により原則65歳まで働き続けることができます。「再任用」とは、国家公務員法に基づいて採用することを指します。

平成25年度の再任用職員は6864人で、短時間勤務が71.2%を占めます。生涯賃金と公的年金で民間サラリーマンより頭ひとつ抜きんでる(?)といわれる公務員は、60歳定年後の就業をどのように考えているのでしょう。人事院「退職公務員生活状況調査報告書(平成27年3月)」から、平成25年度に60歳で定年退職した一般職国家公務員が退職前と退職後にどう考えていたかをご紹介します。

◆無収入を避けるため、65歳までフルタイムで働きたい
まずは、退職「前」の考えを見ていきましょう。60歳定年退職後も「働きたい」は約78%、「働きたいと思わない」は約21%で、4人に3人強が退職後も働きたいと考えました。理由は「収入確保」。理由のトップ3は次のとおりです。

1.「年金支給開始年齢が61歳に引き上げられることに伴い、無収入となる期間が生じないようにする」 76.2%
2. 「生活費が必要」 69.4%
3.「健康によい」 28.4%

働き方は、「フルタイム」希望が54.4%、短時間勤務希望は36.4%です。短時間勤務では、「週当たりの勤務日数を減らす」働き方を約7割の人が希望しています。何歳まで働きたいと考えているのかというと、65歳までが60.1%、66~70歳は14.2%。65~70歳まで働きたい人が4人に3人もいます。

◆定年退職後の働き先は約7割が「国の機関」を希望
退職後の就業は、再任用希望が64.1%(うち7.9%はその後辞退した)。33.3%は希望しませんでした。その理由のトップ3は、「これ以上働くつもりがない」「再任用で新規採用が抑制される等、組織の迷惑になる」「他にやりたいことがある」でした。

就業希望先は、「再任用職員として国の機関」が70.6%でトップ。次いで「民間企業」8.8%、「問わない」8.5%、「政府関係機関・地方公共団体等」4.6%と続きます。一般職国家公務員が抱く定年退職後の姿は「フルタイムで再任用職員として国の機関で65歳まで就労」のようです。

◆60歳定年退職者の8割は実際に働き続けている
次に、定年退職「後」の就業状況を見てみましょう。60歳定年退職後、「仕事に就いている」が78.3%、「就いていない」は21.7%。退職前の調査とほぼ同率です。仕事に就いてない人のうち約半数は「しばらく休んだのち、また考えたい」と考えていますが、「自分自身の健康状態に不安」「家族の健康状態など家庭の事情がある」と健康上の問題を抱える人も少なくありません。

◆国の機関で働く人が8割。民間企業で働く半数は「紹介」で就職
就労先は、国の機関(再任用職員)が79.0%、民間企業等が23.3%です。民間企業等には「非特定独立行政法人等」「地方公共団体等」「特殊法人(公庫等)」「学校、医療機関」「公益法人」も含みます。純粋に民間企業で就業している人は14.3%に過ぎません。

民間企業等での職種は、役員(取締役・監査役等)、顧問・相談役などが11.1%、事務系業務(管理職を含む)が29.5%、技術系事務(管理職を含む)18.3%、専門職(医師、看護師、教師、税理士等)10.5%です。仕事を探した方法は半数以上が先輩・友人・知人の紹介。天下り的な色彩を感じます。

◆国の機関よりも民間企業のほうがフルタイムの割合は多い
再任用されて国の機関で働く人の50.2%がフルタイム勤務です。短時間勤務者は週3.7日、27.8時間働いています。一方、民間企業等で働く人はフルタイム勤務が77.4%を占めます。短時間勤務は週3.7日、24.8時間と再任用より3時間も短くなっています。

◆待遇などに不満も。半数が「定年の引き上げ」を希望
再任用で働いている人は、次のような不満や不安を持っています。

「給与・複利厚生の面での処遇が十分でない」 45.2%
「期待されている役割があいまいで戸惑うことがある」 34.3%
「定年退職前のようにモチベーションを維持できない」 34.0%

今後の高齢者雇用の制度については、「定年年齢の引き上げ」を約5割の人が希望しています。「現行の再任用制度で希望者全員を雇用」「定年制の廃止」を希望する人もいます。以下にそれぞれの理由をご紹介します。

●「定年年齢の引き上げ」 49.5%
<理由>
「満額年金支給年齢(65歳)までの雇用が保障されるから」 75.3%
「自分を含め周りを見ても、今の60歳台はまだまだ働けると思うから」 46.9%
「基本的に定年前と同様の仕事が続けられるので、これまでの経験や知識を十分活用できるから」 44.1%

●「現行の再任用制度で希望者全員を雇用」 38.9%
<理由>
「60歳以降は個々人の能力・体力・家庭状況に応じて柔軟な働き方ができるほうが良い」 64.1%
「たいていは60歳定年を前提にしてライフプランをたてており、定年後にやりたいと思っていたこともやりつつ、仕事もして、充実した定年後の生活を送りたいから」 53.2%
「希望すれば満額年金支給開始年齢までの雇用が保障されるはずだから」 34.5%

●「定年制の廃止」 6.0%
<理由>
「個人の能力・体力・生活設計等の状況に応じて退職の時期を自由に選択できるから」 75.2%
「年齢にかかわらず、能力・実績主義を徹底し、公務の能率向上を図ることができると考えるから」 40.4%

◆働いていれば黒字家計だが、働いていないと月10万円超の赤字に?
平成25年度の60歳定年退職者には「公的年金の空白期間」があります。実際の家計収支はどうなっているのでしょうか。60歳定年退職者の家族構成は、3分の1が夫婦2人暮らし、3分の1は夫婦と独身の子どもとなっており、日本の世帯構成のパターンとほぼ同じ。勤労世帯、働いていない世帯それぞれの平均収支は次のとおりです。

●勤労世帯
収入 38.6万円
・フルタイム勤務世帯 42.3万円(うち本人給与32万円)
・短時間勤務世帯 33.1万円(うち本人給与19.9万円)
支出 33.3万円

●働いていない世帯
収入 17.8万円
支出 31.1万円

働いていない世帯では13万円強の赤字。赤字は金融資産を取り崩して対応していますが、「節約を徹底する」人もかなりいるようです。

●赤字への対応方法
「退職手当の取り崩し」 74.3%
「退職手当以外の預貯金等の取り崩し」 55.5%
「節約を徹底する」 43.4%

「夫婦2人世帯でゆとりある生活を送るために必要な生活費はいくら?」という問いに対しては、33.1万円という答えが多数。定年退職後も働ければクリアできる金額ではあります。

◆退職前に知っておきたかったことは「お金」関係
退職後の生活や生涯設計について考えるようになった時期は「50歳代後半」が最も多く、きっかけは「自分の年金支給開始年齢を知って」でした。彼らが退職前に知っておけばよかったと思ったこと、上位3つは次のとおりです。

「年金、保険などの知識」 54.9%
「退職金などの資産運用の知識」 29.9%
「税金・相続などの法律知識」 22.9%

◆公務員の年金は平成27年10月から大きく変わる
民間企業に勤める人も同じですが、少なくとも公的年金や健康保険、税金、退職金に関する情報は、退職前に知っておくに越したことはありません。さらに共済年金は平成27年(2015年)10月に厚生年金と統合されます(=年金一元化)。統合後は年金給付や保険料の負担などが少しずつ変わっていきます。年金の給付内容、特に遺族年金、に関する情報は小さなことでもキャッチすることをおすすめします。リタイアメントプランイングに大きな穴が開く情報が含まれていることもあるからです。

文=大沼 恵美子