ヴイエムウェアは4月18日、同社の主力製品であるサーバ仮想化ソフトの最新版「VMware vSphere 6.7」、ストレージ仮想化ソフトの最新版「VMware vSAN 6.7」を発表した。

「VMware vSphere 6.7」の新機能と機能強化

ヴイエムウェア チーフストラテジスト(SDDC/Cloud) 高橋洋介氏

「VMware vSphere 6.7」については、ヴイエムウェア チーフストラテジスト(SDDC/Cloud)の高橋洋介氏が説明した。同氏は、今回のVMware vSphereのバージョンアップは、「さまざまなアプリケーション要件」「データセンターからクラウド、エッジにわたる広範な実行環境」「リスクを最小化するセキュリティ」という、ITインフラに対する3つの要求に対応するため行われたと説明した。

VMware vSphere 6.7の新機能、強化された機能の目的は、大まかに「管理の簡素化と効率化」「包括的な組み込み型セキュリティ」「万能なアプリケーション・プラットフォーム」「シームレスなハイブリッドクラウド」に分けることができる。

「管理の簡素化と効率化」を実現する新機能・機能強化

組み込みPSC(Platform Services Controller)において、最大15のvSphere環境に対応可能なリンクドモードがサポートされた。これにより、複数のvSphereが混在する環境の統合を実現する。

「シングルリブートとクイックリブート」はホストの再起動における課題を解決する新機能。高橋氏によると、これまでvSphereはアップグレードが難しく、これら2種類の方法で、メンテナンスおよびアップグレード時のダウンタイムの最小化を図る。

「シングルリブート」はVMware ESXi 6.5からVMware ESXi 6.7へのアップグレード時に再起動の回数を減らす。また、「クイックリブート」はVMware ESXiホストの再起動の所要時間を短縮する。本来、VMware ESXiホストの再起動は、ハードウェアの初期化、バイナリの読み込み、起動という3つのプロセスを踏むが、クイックリブートではハードウェアの初期化が初期化される。高橋氏によると、3つのプロセスのうち、ハードウェアの初期化が最も時間がかかるという。

高橋氏は、「将来的には、サーバの再起動の時間短縮を実現したい」と述べた。

  • クイックブートによる効果の例

「VMware vSphere Client」は、新機能を含め95%がHTML 5に対応している。HTML 5非対応の残り5%の機能は、パートナーのプラグインであり、今後のメンテナンス・アップグレードで対応していく予定とのこと。

  • VMware vSphereクライアントがHTML 5に対応

「包括的な組み込み型セキュリティ」を実現する新機能と機能強化

セキュリティについては、「TPM(Trusted Platform Module)2.0」と仮想TPM 2.0によって、ハイパーバイザとゲストOSの保護が強化されている。仮想TPM 2.0は、仮想マシンやホストの改竄、許可されていないコンポーネントのロードの防止に加え、ゲストOSを保護する。

高橋氏は、仮想TPM 2.0のメリットについて「チップセットがTPM 2.0に非対応でも利用でき、vSphereの暗号化機能と連携する」と説明した。

加えて、バージョンが異なる2つのvCenter Server間のvMotionの暗号化にも対応した。

「万能なアプリケーション・プラットフォーム」を実現する新機能と機能強化

アプリケーション・プラットフォームに関しては、PMEM(Persistent Memory)に対応した。PMEMは、DIMMスロットに装着可能な不揮発メモリながら、DRAM以下の価格で、SSDよりも高速とされている。加えて、DRAMよりお省電力だ。

今回、PMEMをブロックストレージとして仮想マシンを公開すること、PMEMをバイト単位でアクセス可能なゲストOSとして公開することが可能になった。

また、NVIDIA GRID vGPUにおいて、サスペンドとレジューム機能に対応したほか、NVIDIA GRID Virtual PC/Virtual Apps、NVIDIA Quadro Virtual Data Center Workstationへの対応も強化されている。

  • 「VMware vSphere 6.7」の主な新機能

「シームレスなハイブリッドクラウド」を実現する新機能と機能強化

ハイブリッドクラウドについては、「VMware vCenterハイブリッド リンク モード」により、VMware Cloud on AWSやIBM Cloudなどパブリック クラウドで稼働するVMware vSphereの異なるバージョン間にわたって共通の可視性と管理を実現する。

そのほか、クラウド間のホット/コールドマイグレーション、仮想マシン単位のEnhanced vMotion Compatibilityが利用可能になった。

「VMware vSAN 6.7」の特徴「VMware vSAN 6.7」

米国ヴイエムウェア ストレージ&アベイラビリティ事業部 製品担当副社長 リー・キャズウェル氏

「VMware vSAN 6.7」については、米国ヴイエムウェア ストレージ&アベイラビリティ事業部 製品担当副社長のリー・キャズウェル氏が説明を行った。同氏は、vSANを導入している企業の数は1万社に上るが、vSphereの顧客企業の数からすると、まだまだ市場拡大の余地があると述べた。

「VMware vSAN 6.7」においては、「運用に対する直感的な操作性」「一貫性のあるアプリケーション環境」「プロアクティブなサポート」の実現に向けて、機能拡張が行われている。

操作性については、vSphere 6.7と同様に、管理ツールのインタフェースがHTML 5に対応した。キャズウェル氏は「vSANにおいては、ユーザーインタフェースの機能拡張が必要だった。HTML 5に対応したことで、ユーザーはオンプレミスとクラウドにおいて共通の作業が可能になった」と語った。

また、新たなダッシュボードにより、単一の画面で複数のHCI環境のモニターと制御が行えるようになった。具体的には、VMware vRealize Operations 6.7の機能から、VMware vCenter Server 6.7内に組み込まれた新しい6つのダッシュボードによるVMware vSAN 6.7環境のグローバルな運用ビューが提供される。

これまで必要だったvRealize Operationsのライセンスは不要になり、VMware vSAN AdvancedまたはVMware vSAN Enterpriseライセンスを利用しているユーザーであれば、この機能を利用できる。

アプリケーション環境については、Cassandra、Hadoop、MongoDBといったアプリケーション、フェイルオーバークラスタリングが実行されたWindowsサーバ環境への対応が拡張された。Windows serverのフェールオーバークラスタについては、iSCSIにより対応する。

サポートについては、HCI環境のサポート体制を強化する「vSAN ReadyCare」を提供する。同サービスでは、健全性診断サービス、テレメトリベースの分析機能を提供するほか、サポートスタッフを2017年の2倍に増やすという。