会社を退職をすると、今まで加入していた健康保険が使えなくなります。退職時には扶養家族の分まで含めて健康保険証を返すことになります。退職翌日から再就職して社会保険に加入、ならば何も考えることはないのですが、再就職までに間があったり、リタイアとなると今後の健康保険について考えなくてはなりません。

◆会社退職後の健康保険、入り方は3種類
退職後の健康保険は、大きく分けて次の3種類から選択することになります。

・家族の扶養に入る「被扶養者」
・今までの会社の保険を継続する「任意継続」
・市区町村で加入する「国民健康保険」

◆「被扶養者」は保険料がかからない
家族が会社勤めしていれば、扶養に入ることができる場合があります。扶養に入ることができれば保険料負担がありませんから、真っ先に検討するとよいでしょう。ただし、扶養に入るためには、今後の年収見込みが130万円未満(60歳未満、60歳以上は180万円未満)であることが必要になります。

ここで注意が必要なのは、扶養の範囲は「所得」ではなく「収入」である点です。営業収入や老齢年金や個人年金などをはじめ、非課税所得である遺族年金や障害年金のほか、雇用保険の給付もここに含まれてしまいます。

一般的に「雇用保険をもらうと扶養には入れない」と言われることがありますが、厳密には雇用保険の日額が60歳未満は3,611円(130万円÷360日)、60歳以上は5,000円(180万円÷360日)未満であれば、ほかに収入がなければ扶養に入ることができます。退職後雇用保険をもらう人は、扶養に入れなかった場合の健康保険料の負担についても押さえておきましょう。 手続きはお勤めしている家族の会社経由で行います。

◆「任意継続」は今までの会社の健康保険をそのまま継続できる
任意継続をするための条件は、

・退職後の時点で2ヶ月以上継続して健康保険に加入していたこと
・退職後20日以内に加入の申し出をすること

の2つです。保険料は、原則として今まで天引きされていた額の倍になります。これまで会社が半分負担してくれていた分を自分で払うということですね。ただし、計算ベースとなる標準報酬月額が28万円を超えていた人については28万円で計算されます。高給取りだった人は、今までとそう変わらないということもあります。

手続きは、退職後20日以内にこれまで加入していた健康保険の保険者(協会けんぽや健康保険組合)に任意継続したい旨の申し出を行います。任意継続は2年間継続します。再就職で社会保険に加入する場合などを除いて任意にやめることはできないことになっていますが、1日でも保険料の支払いを滞納すると、その時点で失効となってしまいます。2年たったら任意継続は終了し、その後は国民健康保険に加入することになります。

◆「国民健康保険」は誰でも加入できる
「国民健康保険」は、ほかに健康保険制度に加入していない人は誰でも加入することができます。保険料の計算方法は市区町村によって若干異なりますが、前年所得で計算された所得割額に、世帯でいくらの平等割、一人当たりいくらの均等割、資産の額に応じた資産割などが加算されて算出されます。

限度額がありますので、前年所得が高い人がべらぼうに高額の保険料を取られるということはありません。また、リストラなどにより失業を余儀なくされた人などについては軽減がある場合もありますので、市区町村の窓口に確認してみましょう。

渋谷区ホームページより

上は東京都渋谷区の国民健康保険料の計算方法をホームページで確認しまとめたものです。渋谷区の場合は世帯単位の資産割や平等割はないようですね。手続きは前の会社の健康保険を抜けたことを証明する書類をもって市区町村役場の窓口で行います。

◆結局どうするのがいいの?
3種類のどれに入っても、もらえる給付内容はほぼ同じです。したがって、入れる中で「どれが一番安いか」という観点で選択をすることになります。保険料が最も安いのは、負担のない被扶養者です。家族の扶養に入れる場合は、扶養に入るのが一番よいといえそうです。特に60歳未満の人が配偶者の扶養に入れば、国民年金についても保険料負担がいらない第3号被保険者となれるので、一石二鳥です。

雇用保険を一定金額以上もらう場合や、家族がお勤めをしていない場合など扶養に入れないときには、任意継続と国民健康保険を天秤にかけることになります。どちらが安くなるかは人それぞれなので、

・今までの健康保険料の倍(標準報酬月額が28万円超の人は28万円×保険料率)
・前年所得による国民健康保険料額

を調べて、安い方を取るということになります。国民健康保険料額については、お住いの市区町村に問い合わせをすれば教えてもらえます。その際には前年の源泉徴収票などを手元に用意して問い合わせるとスムーズです。市区町村のホームページなどに計算方法が掲載されていることもありますので、チェックしてみるのもよいでしょう。

金額の比較をするときは、原則として任意継続の2年分と、国民健康保険料の2年分で、トータルで安くなる方を選択するということになります。任意継続は原則2年間は継続するからです。ただし、国民健康保険については、1年目に所得が少なければ2年目の保険料はガクンと下がることになりますので、注意して比較してください。

もう一つ注意しなければならないのは、扶養している人がいるかどうかです。任意継続の場合は配偶者や子供などを扶養に入れることができます。扶養に入れた人の保険料負担は、これまでの会社の健康保険同様ありません。一方、国民健康保険は扶養という考え方がないので、家族一人一人について保険料がかかります。自分一人だけなら国保の方が安いけれど、家族を入れると任意継続の方が安くなるケースもありますので注意しましょう。

ちなみに、任意継続の扶養に入れた60歳未満の配偶者は、国民年金については第3号被保険者にはなれず、第1号被保険者として保険料が掛かりますので、こちらにも注意しましょう。

文=綱川 揚佐