特集「Googleのお仕事」の第4回は、日本法人でWomenwill プロジェクトを統括するグーグル ブランドマーケティングマネージャー 山本 裕介氏に話を伺った。

【特集】Googleのお仕事。

スマートフォンを通して、多くのユーザーが Google のサービスを利用している。Google 検索はもちろん、Google マップや Gmail、果ては YouTube とさまざまな Google 製品が人々の生活に浸透しているはずだ。一方で、その製品を提供するグーグルの正体を知らぬ人も多い。
アメリカのネット企業は日本で働いていない……なんてことはなく、もちろんさまざまなグーグル社員が、さまざまな職種で六本木ヒルズに居を構える日本法人で働いている。この特集では、その彼ら、彼女らが日本法人でどんな仕事を、どういうモチベーションで、どうやってこなしているのか、問うた。
  • グーグル ブランドマーケティングマネージャー 山本 裕介氏

Womenwill - 誰もが柔軟に働ける環境を築いていくためのトライアル

2014年10月、日本を含むアジア太平洋地区の4カ国が中心となり、Google に新しいプロジェクトが誕生した。その名は「Womenwill」 - 家庭と仕事という2つの役割をこなすために多くの困難や課題に直面している女性たちをテクノロジの力で支援し、誰もが柔軟に働くことができる社会を実現していこうとする Google の強い意志(will)が込められた活動である。

活動開始から約3年半が経過し、現在は「Womenwill」として継続している本プロジェクトだが、これまでどんな成果を挙げてきたのか、そして Google にとってこのプロジェクトはどんな位置づけなのだろうか。

テクノロジによるイノベーションは人々の生活や世界をより良くする - Google はこの理念の下、Womenwill プロジェクトを始動させた。現在はその趣旨に賛同した1200を超えるサポーター企業/NGOが参加し、女性の社会進出を支援している。

国や地域によって女性たちが直面する課題はそれぞれに異なるが、日本の場合、とくに大きな社会的問題となっているのが、出産後に多くの女性たちがこれまで積み重ねてきたキャリアをあきらめざるを得ない状況に追いやられているという点だ。

仕事と家庭の両立を切に願いながらも、「通勤に長い時間をかけられない」「子供を預けられる施設が少ない」「子供の病気や事故に備えるために重要なプロジェクトに関われない」といった制約は、出産前と同様に仕事を続けていくという選択を女性たちから奪い、キャリアの道から遠ざけていく。

この残念な状況をテクノロジのパワーで変えるべく、Google は2014年10月からその環境づくりや新しい働き方の提案を行い、「未来の働き方トライアル」として国内パートナー企業とその社員とともに実証実験を重ねてきた。

2016年に同トライアルに参加したパートナー企業は31社、参加社員は2000名を超える規模で、参加組織では損保ジャパン日本興亜やコクヨ、ナイキ、広島県庁などが名前を連ねる。業種も規模もさまざまだが、「誰もが柔軟に働ける環境を作りたいという思いは同じ」(山本氏)だったことから、多くのトライアルが行われ、その効果が測定された。

トライアルで示された3つの働き方

では具体的にこれらのトライアルはどういったかたちで行われたのだろうか。Google は参加企業に以下の3つのテーマに則したトライを依頼している。

  1. Work Anywhere … 在宅で仕事をする
  2. Work Simply … 会議の無駄を減らす
  3. Work Shorter … 決めた時間に帰る

1の「在宅で仕事をする」は2カ月間のトライアル期間中、女性に限らずすべての従業員(モデル部署のメンバー)が一度は在宅勤務を実施するというもので、推奨ツールはテレビ会議システム。在宅勤務はとかく、育児中の女性など一部の社員のためだけの制度と思われがちだが、そうした固定化された概念や働き方を打破するきっかけになったという。

2の「会議の無駄を減らす」では、会議時間の短縮や無駄な会議の削減、事前準備/事後フォローの効率化などを目標に掲げ、推奨ツールとして共有ドライブなどを用い、会議のグランドルールを設定、テレビ会議やペーパーレス化を並行することで、会議の効率化を図っている。無駄な会議は時間だけでなく人件費などコストの無駄にもつながるので、事前/事後の比較も行われた。

3の「決めた時間に帰る」は、世界的に見ても問題点が多く、柔軟な働き方の実現を妨げる大きな元凶でもある日本の長時間労働を解決するための施策。トライアルでは推奨ツールのスケジューラで退社時間の入力と共有を徹底し、チームで予定を可視化することで主体的なワークデザインと柔軟な働き方の両立を目指した。

これらのトライアルの成果に関する詳細はGoogle Japanのブログに掲載されているので、興味があればぜひ一読いただきたいが、総じてこれらの取り組みは女性だけでなくすべての従業員にとって実りある結果をもたらすことになっていることに注目したい。

例えば、在宅勤務やテレビ会議などは最初は嫌がる男性社員も少なくなかったが、実際に試したことでその効果の大きさに驚き、いまではすっかり推進派に転じているケースもある。山本氏は「女性にとって働きやすい環境、柔軟な働き方を選べる環境は、男性にとっても良い環境のはず、という確信があった」と言うが、実際、男女や役職の違いを超えて、多くの参加者がWomenwillのトライアルを「テクノロジによる恩恵」を実感することにつながった。

Google は現在、これらのトライアルの結果をもとに働き方改革をサポートするためのトレーニングコンテンツを提供しており、約800社が利用中だという。