操る喜びを前面に、クルマに比べ割安なところも魅力

クルマのニューモデルの多くが電動化や自動化、情報機器化を前面に押し出し、走る楽しみが重視されなくなりつつある中で、バイクは今も、操る喜びを前面に押し出した車種が多い。これが新鮮に映っているのではないかという気もする。

しかも、高性能スポーツカーともなれば1,000万円以上が当然という四輪車に対し、二輪車で同等の加速性能を持つ車種ならば、10分の1くらいの価格で手に入るという割安感も魅力に数えられるだろう。

  • スズキ「SV650X ABS」

    操る喜びを前面に押し出す車種の多さがバイクの特徴(画像はスズキ「SV650X ABS」)

スポーツカーとは違う日本VS欧州の図式

前述したように、産業としての二輪車では日本車が主役である。これが四輪車との状況の違いに結び付いていると思っている。

欧州のものづくりは付加価値を与えて高価格で販売するのが得意で、それがスポーツカーの世界にも反映している。一方の日本は、安くて壊れず高性能が持ち味。同じ価格で脅威的なパフォーマンスを実現し、世界を驚かせてきた。

世界で最初に時速200キロ、300キロを実現した二輪の市販車は、いずれも日本から出ている。300キロのときは欧州勢が脅威に感じ、危険という理由でこれ以上の高性能車の販売を認めないという姿勢に出てきた。

ちなみに四輪車では欧州が先に300キロを実現したが、彼らが危険性に言及したことはないし、日本が文句をつけたこともない。

欧州勢にとってみれば、これが結果的に自分たちのものづくりを制限することにつながった。日本車を超える高性能車を高価で販売するという、四輪車と同じ図式が描きにくくなったのだ。よって現在、多くの欧米ブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっている。

  • トライアンフ・モーターサイクルの「ボンネビル ボバー ブラック」

    バイクにおける日本メーカーと欧米勢の戦いも面白い(画像はトライアンフ・モーターサイクルの「ボンネビル ボバー ブラック」)

日本車と外国車が優劣を競わず良いすみ分けができているし、外国車であっても飛び抜けて高価な車種は少ないから、同列比較もできる。機動性にも長けているけれど、趣味的にも好ましい。それがバイクの世界なのではないかとモーターサイクルショーを見ながら感じた。