日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部長 桐生 卓氏

日本オラクルは4月4日、人工知能(AI)を搭載した拡張アプリケーション「Oracle Adaptive Intelligent Applications for Enterprise Resource Planning」を発表した。

同製品は、財務、調達、業績管理、発注管理、生産管理など「ERP Cloud suite」の機能を強化するように設計されている。具体的には、「Oracle Data Cloud」やパートナーから得たデータに、データ・サイエンスや機械学習を適用することによって、取引業務の自動化やビジネス・プロセスの合理化を支援する。

常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド事業本部長の桐生卓氏は、「われわれは最近、IoT、AI、ブロックチェーン、RPAといった新たなテクノロジーを、企業のビジネス・プロセスを支えるSaaSに組み込んでいくことに注力している。SaaSはプロセスが標準化されているため、こうしたテクノロジーを組み込みやすい」と語った。

「Oracle ERP Cloud」においては、「新たな業務機能を適用し、自動化の対象業務を拡張」「AI/機械学習による自動化の範囲を拡張」を進めていく。具体的には、取引収集では「グループ間取引」、業務処理領域においては「連結管理とリコンサイル(勘定照合)」「リスク管理と不正検知」、財務分析領域では「組み込み型BIとアラート」「予算管理と管理会計」の自動化に取り組む。

  • 「Oracle ERP Cloud」における自動化の取り組み

現在の経理・財務業務は、データ収集・加工・検証・修正に時間をとられているため、データ分析や課題に対するアクションの実施に時間を割くことができていない。同社としては、経理・財務業務の自動化を進めることで、業務の時間配分の逆転を目指すという。

日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM ソリューション部 部長 久保誠一氏

製品の詳細については、クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPM ソリューション部 部長の久保誠一氏が説明した。同氏は、Oracle Adaptive Intelligent Applicationsの最大の長所について、「従来のAIプラットフォームと最も違う点は、事前に定義されたAIが組み込まれていること。そのため、データ・サイエンスの専門家がいなくても、必要に応じて、ビジネスや業務の視点から、AIを即座に利用できる。また、クラウドサービスなので、スケールメリットを享受できる」と述べた。

久保氏は、Oracle Adaptive Intelligent Applicationsのさらなる長所として、「サードパーティ・データのマーケットプレースであるOracle Data Cloud(50億を超える消費者と企業のIDを有し、毎月7兆5,000億以上のデータ・ポイントからデータを収集)を活用できること」と「広範囲なデータ領域とつながったインテリジェンス」を挙げた。

Oracle Adaptive Intelligent Applicationsでは、自社のERPデータと信用情報やニュースサイトといったサードパーティのデータに機械学習を適用して、インサイトを提供する。例えば、支払期日前割引、仕入れ先選定、入金消込、在庫などに対し、インサイトを提供する。また、「Oracle SCM Cloud」「Oracle HCM Cloud」といったサービスとも相乗効果も見込めるという。

  • 「Oracle Adaptive Intelligent Applications for Enterprise Resource Planning」の仕組み

  • 「Oracle Adaptive Intelligent Applications for Enterprise Resource Planning」で利用可能なサードパーティのデータ

続けて、久保氏は「RPA」と「ブロックチェーン」に関する取り組みについても説明した。

RPAは「Intelligent Process Automation」といったコンセプトの下、機能を拡張していく。久保氏は、「われわれが考えるRPAは、単にマニュアル入力を自動化するということではない。アプリケーション組み込み型のRPAにより、業務プロセス全体を自動化することを目指す」と語った。

RPAにより、「Adaptive Intelligent Planning」(計画・予算管理業務の自動化)、「Touchless Transaction」(取引データのタッチレス処理)、「Automate Financial Controls」(データ・サイエンスや機械学習を利用した不正検知)といった機能を実現する。

例えば、Touchless Transactionでは、請求書などのスキャニングおよび取引情報の自動生成を行う。今後は、例外処理、係争対応、監査・不正検知、承認といった領域で、自動化を強化していくという。

一方、ブロックチェーンは、「会社間取引」「価値の交換」「企業間取引のネットワーク」「記録用ストレージ」において活用していく。例えば、グループ会社内の「会社間取引」に、ブロックチェーンによる会社間元帳を導入することで、決算とレポーティングの早期化、単一情報源による照合コストの削減といった連結業務の解決を図っていく。久保氏によると、この会社間取引におけるブロックチェーンの導入のPoCは既に始まっているという。

  • 会社間取引におけるブロックチェーン導入の仕組み