米Appleは3月29日 (現地時間)、iOS 11のアップデート「iOS 11.3」をリリースした。ARKit 1.5、アニ文字の新キャラクター、Business Chat、Health Records、データ/プライバシー情報の改善、Battery Health (ベータ)など、数多くの新機能や強化・改善を追加する大きなアップデートだ。

ARKit 1.5は、これまでサポートしていた水平な仮想平面に加えて、壁やドアなど垂直面を認識したマッピングをサポートする。それによって、壁に貼られたポスターや絵画、図版などを検知し、AR体験に組み込むことが可能になる。また、カメラでキャプチャしてiOSデバイスの画面に表示される現実世界の解像度が50%向上する。

  • ARKitが垂直面を検出

    ARKitが垂直面を検出できるようになって、大英博物館の展示物を教室で手に取って見るというようなことが可能に

アニ文字は、iPhone Xが備えるTrueDepthカメラの顔認識を用いて、「メッセージ」アプリでユーザーの表情に合わせて動くアニメーションのメッセージを作成できる機能。そのアニ文字のアニメキャラクターに、ライオン、クマ、ドラゴン、どくろの4種類が追加された。

  • 新しいアニ文字「どくろ」

    新しいアニ文字の1つ「どくろ」

Business Chatは、「メッセージ」アプリでの会話を通じたビジネスと顧客の直接的なやりとりを可能にする機能。たとえば、ユーザーが製品に関する質問をしたり、店舗でのサポートの予約、探していた製品をメッセージ内からApple Payを使って購入といったことを行える。初期設定では、ビジネスに対してユーザーの個人データが伝えられることはなく、連絡先を知らせることをユーザーが判断できるようになっている。iOS 11.3リリース時点でまだベータ段階であり、米国およびカナダのみの提供となっている。

  • Business Chatを通じて顧客をサポート

    DIY大手Home Depot、Business Chatを通じて顧客の質問に答え、製品をオススメ

Health Recordsは「ヘルスケア」アプリにおいて、複数の医療機関が提供する検査結果や投薬といった医療データや健康状態に関する情報をわかりやすくまとめたスナップショットを提供する。iOS 11.3リリース時点で、Duke、NYU Langone、Stanford、Yaleなど、40以上の医療機関が参加している。

Facebookの個人情報不正流用問題をきっかけに個人データの扱いに対する人々の関心が高まっているが、iOS 11.3ではユーザーの個人データがどのように利用される可能性があるか、ユーザーがこれまで以上に分かりやすく把握できるように「データとプライバシー」に関する情報がアップデートされた。Appleが個人情報へのアクセス許可を求める場面、プライバシーを示す新しいアイコンと詳細なプライバシー情報が現れるようになる。

昨年12月、経年などによるバッテリーの劣化で予期しないシャットダウンが起こる可能性への対処として、Appleが一部のiPhoneで端末のピーク性能を動的に変化させていることが明らかになった。その変更をAppleが事前に公表していなかったことから、影響を受けたユーザーが訴訟を起こす問題に発展した。Battery Health (バッテリーの状態)は、その問題への対処の1つだ。新品時と比較したバッテリーの最大容量、ピークパフォーマンス状態など、バッテリーの健康状態をユーザーが簡単に確認・把握できるようにした。バッテリーの劣化が使用体験に影響する可能性があれば、修理を推奨する。

  • iPhone Battery Health (Beta)

    デバイスの使用体験に大きく影響するバッテリーの状態を伝える「Battery Health」