米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)を3月20-21日に開催した。そこで、2015年12月以来6回目となる利上げを決定、政策金利であるFFレートの目標は1.50-1.75%に引き上げられた。

その結果、米国の政策金利は先進国のなかでも最高の部類に属することになった。「高金利」として有名なオーストラリアの政策金利が1.50%、ニュージーランドが同1.75%なので、米国がそれらの国に追いついた格好だ。

金融市場は今回の利上げをほぼ確実視していた。注目していたのは、今後の利上げのペースに関してヒントがあるかどうかだった。昨年12月のFOMCで発表された参加者の政策金利見通し(いわゆる「ドット・プロット」)の中央値は、18年中に3回の利上げを示唆していた。ところが、2月下旬の議会証言で、パウエルFRB議長は利上げペースが速まる可能性に言及した。

蓋を開けてみると、今回も「ドット・プロット」は3回の利上げを示唆した。また、声明文には、「家計支出や企業の設備投資は昨年10-12月期の力強い状況から軟化した」との評価もあった。そのため、FOMCの結果は「ハト派的(=利上げに慎重)」と判断され、直後に市場金利は低下、米ドルは軟調に推移した。

もっとも、声明文をよく読めば、FOMCは景気の先行きに自信を強めていることがわかる。1月の声明文にはなかった「経済見通しはここ数か月で改善した」との下りが加えられた。

また、1月の「インフレ率は今年に上昇すると予想される」が、今回は「インフレ率は今後数か月で上昇すると予想される」へと修正された。両者はよく似てはいるものの、「今後数か月」は「今年」よりかなり前倒しのイメージだ。

実際、昨春の携帯通話料金の大幅な引き下げがインフレ率を押し下げてきたが、その効果は今春にほぼ一巡する。それが強く意識され始めたのかもしれない。

FOMC参加者の経済・物価見通しは2018-20年の各年で概ね上方修正された。そして、「ドット・プロット」に基づく19年中の利上げ想定回数は、昨年12月の2回から今回は3回へ、20年中は同じく1.5回から2回へと増えた。

その一因として、パウエル議長はFOMC後の記者会見で、「少なくとも今後3年間は新しい財政政策の結果として需要が増加する」と説明した。昨年成立した税制改革(トランプ減税)や議会が今後2年間の歳出増加に向けて合意に近づいていることを指しているのだろう。

もっとも、「ドット・プロット」はあくまでも参加者個人の見解の集合体であり、見方はバラバラだ(例えば、19年末の政策金利予想は最低1.625%~最高3.875%)。とりわけ19-20年については「仮置き」程度に過ぎないだろう。

前提となる経済見通しについても不確定要素は多い。財政赤字や経常赤字の拡大が市場金利の上昇、いわゆる「悪い金利上昇」をもたらし、景気にブレーキをかけないか。保護主義的な通商政策が貿易相手国による報復措置を招き、世界貿易全体を縮小させないか。高値圏でのもみ合いが続く株価が何らかのきっかけでノーズダイブしないか、など。

2月に就任したばかりのパウエル議長にとって、FOMCの「初陣」は無難なものとなったが、今後その手腕が試される局面が訪れるに違いない。


編集部注
3月22日、トランプ大統領が中国の知的財産権侵害に対し、中国製品に高関税を課すと表明。これに伴いNY株が大幅安となった。米中の貿易摩擦については、西田明弘氏の2017年1月20日掲載のレポート「通商版『米中もし戦わば』」に詳しく記載されている。こちらも合わせて確認いただきたい。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。