爪が黒くなる主な病気と、爪のがんである「悪性黒色腫(メラノーマ)」の特徴・違い・見分け方を解説します。

◆「爪が黒くなってきた=皮膚がん」は稀
最近はテレビなどでの報道が多かったためか、「爪が黒くなったら皮膚がんの可能性がある」という知識が一般の方にも広く浸透しているようです。

ニュースや健康番組などで、爪に関する特集が組まれると、翌日には爪の黒さを気にして受診される患者さんが数人はやってこられます。しかし、爪が黒くなってきたからといって必ずしも深刻な病気とは限りません。深刻なケースは稀で、多くは問題のないものです。

ここでは爪が黒くなってくる主な病気と原因、対処法・治療法について、それぞれの症例画像を挙げながら解説し、さらに悪性なものの特徴・見分け方についてもご説明します。

◆爪下血種(そうかけっしゅ)の症例画像・原因・治療法
爪が黒くなってきたという理由で受診する患者さんで一番多い原因は爪の下の出血。このように爪の一部が赤黒くなる。
爪が黒くなってきたという症状で圧倒的に多いのは、爪の下で内出血しているケースです。医学的には「爪下血腫(そうかけっしゅ)」、英語ではsubungual hematomaと言います。

爪と、爪の下の皮膚(爪床)の間に血液が溜まることで起こります。爪下血種は、爪を強くぶつけてしまった後や、登山やマラソンなど強い運動をした後、ドアに指をはさんでしまった後などに、爪の下に出血が起こってしまうことで起こります。

爪の広範囲が突然黒くなるのが特徴ですが、部分的に黒くなるものから、爪全体が黒くなるものまで、程度は様々です。色も真っ黒なこともあれば、部分的に赤いものまで、差があります。

◆爪下血種の症状・治療法……数カ月で自然治癒
通常は無症状ですが、ドアに挟んだ場合や強くぶつけて出血が出た場合にはジンジンした痛みがあることがあります。多くの場合は無症状なので、その場合は自分でできる治療などはありません。様子をみるだけで大丈夫です。

足の爪の場合であっても2~3カ月ほど待つと、爪が伸びるにつれて黒い部分が外に押し出されていき、半年もすれば黒い部分は全て外に出て消えてしまうことがほとんどです。

■爪下出血から2カ月後の写真
左足の小指に2カ月前から出現した黒いシミ。爪の下の出血が原因。強い運動やぶつけたあとにできることも多いが、原因ははっきりしないことも多い

■爪下出血から6週間後の経過写真

6週間経過後。黒い部分が爪の先の方に移動してきているのがわかる。爪の下の出血の場合、時間とともに黒い部分が外に押し出されてくるので、治療の必要性はない
痛みがある場合は冷やすのがよいです。あまりに痛いときは血が爪の下にたまりすぎて圧迫されていたり、爪の下にキズができたり膿が溜まったりしている場合があります。皮膚科を早めに受診しましょう。

血で圧迫されている場合は血を抜く必要がありますし、感染が疑われる場合は抗生剤で治療します。

また、爪と爪の下の間にたまった血の量が多いと、その傷害で爪が途中で剥がれてくることがあります。無理に剥がさずに自然に剥がれるのを待ってください。

ぺらぺらと爪が浮いた状態になってしまい靴下などにひっかかってしまうようであれば皮膚科を受診してニッパーで切ってもらいましょう。剥がれると一過性に爪が変形することがありますが、通常はしばらく待てば元の正常な爪が生えてきます。

もし爪の黒い部分が押し出されて外に出てこないようであれば、以下で解説する他の爪の病気も疑って下さい。

◆爪が茶色く変色することがある爪水虫
爪の水虫になった場合は白く分厚くなることが多いですが、色がついて茶色や黒っぽくなることがあります。水虫でこのような色がついた場合はたいてい爪も厚くなっているので、診断は比較的簡単です。

◆爪の色素沈着・ホクロ……黒色線条とは
爪が黒くなる原因として他に多いものとして、爪の下に茶色や黒い色の成分であるメラニンが沈着している場合や、ホクロの細胞がある場合が挙げられます。

この場合は爪の中の出血と違い、細長く、爪の根元から爪の先まで一直線にキレイな黒い線が入っています。医学的には黒色線条(こくしょくせんじょう)と呼ばれます。

一つの爪だけにあることもあれば、複数の爪に同じような線が入ることもあります。線は細く、境界もはっきりしていて、途中で途切れたりせず、色むらがないことが良性の色素沈着やホクロであるサインです。長い間、太さや色が変化していないことや、患者さんの年齢が若いといったことも、良性のサインになります。

これらの点が当てはまれば、たとえ複数の爪に同じような茶色や黒の線があったとしても心配はなく、経過を見れば大丈夫です。その場合でも、長い間経過観察をして太さや色が変わってくるような場合は、皮膚科医に相談して下さい。

皮膚科では「ダーモスコピー(dermoscopy)」という拡大鏡を使った専門の検査が受けられますので、より正確に診断できます。

◆爪のがんである悪性黒色腫・メラノーマの特徴・見分け方
冒頭に挙げた通り、爪のがんを心配して皮膚科を受診する方は少なくありませんが、実際に皮膚がんであることはそれほど多くありません。クリニックで皮膚科医として診察していて実際に爪のがんだったケースは、経験的には年間で一人いるかいないか、という程度です。

爪の下の黒いがんは「悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)」と言います。英語ではmalignant melanomaというので日本語でも「メラノーマ」とよく呼ばれています。

上記で解説したホクロの細胞の悪性バージョンになりますが、ホクロがあるといずれがん化するというわけではありません。先程述べた爪の色素沈着やホクロについては、がん化する可能性はほとんど心配しなくて大丈夫です。

悪性黒色腫の場合も爪の根元から爪の先まで一直線に黒い線がありますが、良性の場合と違って線が太く、色むらがあり、線の一部がとぎれている場合が多いです。

爪自体も一部が破壊され、変形していることがあり、悪性のサインになります。また、ハッチンソンサイン(Hutchinson sign)といい、爪の根元や指先の皮膚まで黒い色が広がっているのは悪性を示唆するサインの一つです。
爪の下にできたホクロのガン、悪性黒色腫。黒い縦線の幅は広く、途中で線が途切れ、爪の根元の皮膚まで黒さが広がっている。
患者さんの年齢は50~60代以降と高く、数カ月~2年程度と比較的短期間に広がってきたという場合が多いです。速く広がったといっても数日前に出現したというような、速すぎる場合は、ほとんどが爪の下の出血です。

悪性黒色腫は爪以外でも体のどこにでもできますが、アジア人などの有色人種では爪の下を含めた手足に出現しやすいことが知られています。皮膚がんの中でも質の悪いがんと言え、早めに取り切れなかった場合には次々とリンパ節やほかの臓器に転移していく心配があります。

◆悪性黒色腫だった場合の治療法・転移・予後
爪に関わらず、悪性黒色腫の治療でまず行う治療は通常手術です。爪の場合も、爪を含め、その下の皮膚を広い範囲で切除して、土踏まずなどの他の部分から皮膚を移植します。

爪の変形がなく、爪の狭い範囲が黒いだけの段階で手術を行うことができれば、爪下の深い部分まで悪い細胞が入り込んでいないことが予想されるので、悪性黒色腫を取り切ることが可能です。

ただし、爪の変形が進んだり、爪の広範囲が黒色になっている場合にはすでに深い場所まで悪い細胞が広がっていて手術では取り切れない場合もあります。

いずれにせよ周囲のリンパ節や臓器に悪性黒色腫の細胞が広がっていないことはCTなどの画像診断を使って調べることをすすめます。

手術で取り切れた場合は定期的に病院でフォローすれば大丈夫ですが、リンパ節や臓器に転移が見つかった場合にはその他の治療法も考慮します。

転移の確率や予後は悪性黒色腫の場所や大きさ、深さなどによって様々なので一概には言えませんが、転移が見つかった場合には最近認可された注射薬の使用も考慮します。

転移した場合には手術で取り切れた場合に対して予後が著しく悪くなりますので、もし悪性黒色腫だった場合は早めに取り切ることが非常に重要です。少しでも疑った場合は早めに皮膚科医に診てもらいましょう。

◆まとめ
上記で解説した通り、実際に皮膚科で診療する「爪の黒さ」の原因は、ほとんどが爪の下の出血、水虫、メラニンの沈着やホクロなどです。

しかし、50代以上と比較的高齢で、爪の黒い線が太く、色むらがあり、色が途切れたようなサインがある場合には、ホクロのがんである悪性黒色腫を疑うことがあります。

太くなるスピードが速い、爪の変形を伴う、というのも悪性の兆候です。このような場合には早急に手術が必要になりますので、皮膚科医を必ず受診するようにしてください。

文=野田 真史