かけるべきところにお金をかけたクルマ達

では、木村氏の社長就任時、ボルボ・カー・ジャパンはどのような状況であったのか。

「まずボルボ車に乗って、どれも素晴らしいと思いました。最初に前型の『XC60』に乗り、その全てがよかった。今の新型と違い、フォードグループ時代の共通プラットフォーム(車台)で前型は作られていますが、ボルボの味を持っていました」

  • 前型のボルボ「XC60」
  • 現行のボルボ「XC60」
  • 木村社長は前型の「XC60」(左、画像提供:ボルボ・カー・ジャパン)に乗ってボルボ車のよさを再確認したという。右は現行の「XC60」

「例えばシートは、国産車の商品企画にいた経験からすると、原価低減の種が山のようにあるのですが、技術者がこうでなければならないという良心により、お金をかけるべきところにかけているので、その積み重ねで座り心地だけでなく、座席としての良さが現れていました。車体の剛性も、かけるべきところにきちんとお金をかけていないと、ここまでは出せないでしょう」

「他にも、(現行の)「V90」のリアサスペンションは20年前と基本的に同じ形式です。本来あるべき重量や性能、車体で必要な空間の確保など、クルマが目指すところは不変なので同じ結論に至り、同じ形式で進化させている。各担当技術者の考え方がしっかりしている証ではないでしょうか」

  • ボルボ「V90」

    ボルボ「V90」(画像提供:ボルボ・カー・ジャパン)

「20数年来国産車に乗ってきましたが、性能が全く違う。ここまで欧州車に引き離されているとは…正直に言って驚きました」

台数を追った“安売り”がブランドイメージに影響

これから扱う商品に間違いはない。そこに安堵と確信を持ったはずだ。一方、改めるべき点はどうであったのか。

「商品は良いのですが、ブランドがガタガタでした。『V40』を安売りすることで販売台数を追いかけたため、当時の平均単価が350万円に届かないくらいでした。『V40』を含めた全体で低く、さらに『V40』を安売りしていたからです。『何をやっているのか!』というのが、正直な印象でした」

3年半後の現在、平均単価は530万円へと改善されている。