筆者が最初に使ったATOKは、一太郎 Ver.3に付属したATOK6でした。一太郎 Ver.3の発売日は1987年6月ですので、かれこれ30年以上の月日を数えます。途中、VJEやWXなど他の日本語入力システムも併用しましたが、いつもATOKに戻っていました。

そして最新版、2018年2月9日に発売した「一太郎2018」に付属するATOKは、「ATOK for Windows 一太郎2018 Limited」として、2018年2月時点のATOK for Windowsと同等の変換機能を持ちます。加えて、ジャストシステムは、これまでパッケージ販売・ダウンロード販売していたATOK for Windowsを、「ATOK Passport」に統一しました。

■ATOK(エイトック) : ジャストシステムの日本語入力システム。下記の一太郎に同梱されているほか、単独でも販売している。
■一太郎 : ジャストシステムの日本語ワープロソフト。ATOKを同梱している。

  • 「ATOK 2018」レビュー

    日々、キーボードを叩く叩く叩く。実際は手首より先しかほとんど動かないんですよね

2011年11月から始まったATOK Passportは、サブスクリプション契約して月額使用料を支払う形式ですが、月額286円(税別)の「ATOK Passport[ベーシック]」と、月額476円(税別)の「ATOK Passport[プレミアム]」の2種類を用意しています。

両者の違いですが、プレミアム版はベーシック版に加えて、以下の機能が使えます。手書き入力やセパレートモードなどを備える「ATOK for Android [Professional]」、「広辞苑 第七版」「スーパー大辞林3.0」「ウィズダム英和辞典 第3版」「ウィズダム和英辞典 第2版」「三省堂 故事ことわざ・慣用句辞典 第二版」「敬語のお辞典」といったクラウド辞典、クラウド文章校正や8カ国語クラウド翻訳変換などのクラウドサービス。

筆者の場合、外出時は2in1 PCのバッテリー残量が気になることから、インターネットの常時接続は行っていません。インターネットにつながっていないと、クラウド辞典や各種クラウドサービスは使えないので、ベーシック版を契約しました。

ここでは、ATOK Passport[ベーシック]を使って、最新版ATOKの機能をチェックします(ATOK for Windows自体の機能は、ベーシック版もプレミアム版も同じです)。前バージョンとの比較を分かりやすくするため、最新版をATOK 2018と呼ぶことにします。

  • 「ATOK 2018」レビュー

    これまでパッケージ/ダウンロード販売していたATOK for Windowsは、ATOK Passportに統一しました

ATOK 2018の直接的な新機能は、「ATOKディープコレクト」「ATOKマンスリーレポート」の2つに集約できます。前者はキータイプ時に発生する入力ミスを自動修復し、後者は1カ月間の入力文字や変換文字種、入力ミスなどを月ごとに可視化するツールです。

ATOKディープコレクトから確認しましょう。すでに過去のATOKで似たような入力支援システムを備えていますが、以前はルールに基づいた修復を行い、2011年以降は確定履歴を併用した修復機能を提供してきました。

最新版のATOKディープコレクトは、深層学習(ディープラーニング)を用いて、頻繁に発生した入力ミスを正確な変換結果に置き換える入力支援機能です。ジャストシステムによれば、深層学習適用前のATOKと比較したとき、修復率が35%も向上したそうです。

例えば、「将来は」を「shourahia」と入力ミスした場合、ATOKディープコレクトは入力文字の分析に取りかかります。検出した「hia」は通常とは異なる並びであると判断し、他のアルファベットに置き換えた組み合わせを試しながら、最終的に「hia」ではなく「iha」だと決定します。

結果、変換内容が自動的に修復されるわけですが、ここまでで特別な操作は不要です。必ずしも自動修復結果が正しいとは限らないため、そのときは[Shift]+[BackSpace]キーを押せば、自動修復結果を破棄します。

  • 「ATOK 2018」レビュー

    ATOKディープコレクトではキー入力内容を元に自動修復を行います

  • 「ATOK 2018」レビュー

    この状態で[スペース]キーを押せば、「システム」に変換できます

キーボード入力に慣れたユーザーの場合、入力ミスする場面はそれほど多くないかもしれません。正確なキーボード入力をある程度マスターしているユーザーには魅力の乏しい機能に思えますが、筆者がATOKディープコレクトを便利に感じたのは取材時の速記です。

製品発表会などでは、まず登壇者が話す内容をほぼリアルタイムでテキストエディターに入力していきますが、早口な登壇者だとキー入力そのものに没頭するため、結構な入力ミスが発生していました。それがATOK 2018に切り替えたあとは、誤変換が減ったように感じています。プラシーボ効果の可能性もありますが、それを可視化するのがATOKマンスリーレポートです。