海上パトロールの時に大塚さんが乗船する巡視艇「ひこかぜ」

トラブルや事件に対処し、人々の安全を守っているのは警察官だけではありません。陸上の安全を守るのが警察官だとしたら、海上の安全を守るのが海上保安官です。
海上保安官となって4年、海上保安庁第七管区海上保安本部下関海上保安署(山口県)に所属する大塚翔平さんに、海上保安官の仕事や海と陸の警備の違いなどについてお話を伺いました。

■海上保安官は海の安全を守る警察官であり消防官

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。

下関海上保安署で巡視艇「ひこかぜ」の航海士補として勤務し、主に関門航路(*1)の警備や取り締まり業務を行っています。

警備や取り締まりの対象になるのは、海事関係法令違反(*2)などの海上犯罪、密輸・密入国者です。一般の方からの通報(118番)を受けて、緊急出勤したりパトロールや取り締まりを行ったりすることもあります。下関の沿岸は漁師さんが多いので、許可を受けずに漁を行う密漁者に関する通報も度々あります。

海上保安官は、分かりやすくいうと海の警察官です。海上における犯罪全般の取り締まりや警備以外に、海難救助、海洋環境保全、海上での災害対応、海洋調査、船舶の航行安全を守るなどの活動もあります。

下関の関門航路は国際航路に指定されているので、海外からの大型船の航行も大変多く、座礁や事故、油の流出などのトラブルが少なくありません。海上保安庁では事故災害の予防に取り組むとともに、災害が発生した場合には関係機関とも連携して迅速に対処し、被害が最小限になるよう努めています。

<一日のスケジュール>
07:30 登庁
08:00 当日の業務内容についてミーティング
09:00 巡視艇「ひこかぜ」にて出港、海上パトロール
12:00 昼食
13:00 海上パトロール
16:30 帰港
17:00 退庁(帰宅後に緊急出港するため呼び出されることも)

※巡視艇による海上パトロールだけではなく、車で沿岸をパトロールすることもある。


*1 関門航路:本州の西端・下関市と九州の北端・北九州市(福岡県)の間にある関門海峡を渡る航路のこと。

*2 海事関係法令違反:検査を受けていない船舶を航行したり無資格運航したりするなど、船舶安全法や船舶職員及び小型船舶操縦者法といった海事に関係する法令に違反すること。


Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?

映画『海猿』のイメージが強かったので、海上保安官の仕事は海難救助が主体だと思っていました。でも、実際の仕事は想像していたよりも幅広くて毎日変化があり、興味深く仕事をしています。

陸上でいえば警察や消防が行っている仕事を、海上では海上保安庁が担っている感じです。海の警察官と消防官を兼ねている(*3)ため覚えることがたくさんあって大変に思うことも多いですが、任される範囲が幅広いので面白いですね。特に好きな仕事は警備や取り締まり業務です。


*3 消防官を兼ねている:船舶で火災が発生した場合、海上保安官が消防活動や救難活動を行う。


Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?

入庁してまだ4年目ということもあって分からないことがたくさんあり、先輩たちのように現場で効率的に動けないことがあります。十分な知識や技術が身に付いておらず、先輩たちにできることが自分にはできないことがつらいというよりも悔しいです。

また、体力的にハードなので、仕事が終わった後にスポーツジムなどに通って体力維持向上に努めています。

■海上保安学校で船の扱い方について学んだ

Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?

警察官になるのが夢だったので採用試験を受けたのですが、その時、高校の先生に勧められて海上保安庁の採用試験も受けてみたんです。海上保安官は海の警察官であり、私は海が好きなので、警察官ではなく海上保安官の仕事を選びました。

海上保安庁の採用試験に合格すると京都の舞鶴市にある海上保安学校に入ります。この学校は全寮制で授業料はかかりません。高校を卒業してから海上保安学校で1年間学んだ後、初めての任地として山口県萩市に配属されました。萩には2017年の3月まで3年間おり、4月からは下関に転勤となりました。


Q5. この仕事に就くために何を学びましたか?

舞鶴にある海上保安学校には、船舶運行システム課程(航海コース、機関コース、主計コース)や航空課程、海洋科学課程、情報システム過程と全部で4つの課程(*4)があり、課程によって学ぶ期間が異なります。私は船舶運航システム課程の航海コースに所属し、ロープワークをはじめ、船の操縦の練習をしたり海上保安業務に関連する法律の勉強をしたりさまざまな訓練を行ったりと、1年間船の扱いに関することなどを学びました。


*4 4つの課程:管制課程が新設されるため、2018年4月より課程は5つとなる。


Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?

幼い頃からずっと警察官になりたいと思っていたので、高校生の頃は警察官を目指していました。海上保安官は海の警察官ともいえる仕事なので、夢をかなえたことになるかもしれません。

海上保安官の仕事にとてもやりがいを感じていて、責任は重いですが、毎日気を引き締めて楽しく仕事をしています。

■学校では給料をもらいながら勉強ができる

Q7. どういう人が海上保安官に向いていると思いますか?

海上保安官が仕事をするのは海の上という特殊な場所なので、やはり海が好きな人が向いています。それから、正義感が強い人、使命感を持って人助けができてそのことに喜びを感じられる人ですね。

あとは、海上保安官は採用試験に合格すると全員が寮に入ります。チームワークが必須なので、集団生活に抵抗があると厳しいと思います。


Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。

海が好きで、人の役に立つことや船の操作に興味がある人は、海上保安官の仕事がおすすめです。船を扱えるかどうか不安に思うかもしれませんが、多くの人が海上保安学校に入ってから船の勉強を始めます。スタートラインはみんな同じなので安心してください。

海上保安学校は国が作った学校です。給料をもらいながら勉強ができるので、その点でも優遇されていると思います。


海上保安官になるには、海上保安学校か海上保安大学校(*5)に行くのが一般的です。海上保安大学校は4年制の大学を卒業してからは行くことができませんが、大塚さんが通った海上保安学校であれば、4年制大学卒業後でも受験できる場合があります。海上保安官になりたいと思っている人は、進路を選択する上でいくつか道があることを覚えておくといいでしょう。


*5 海上保安大学校:海上保安庁の幹部職員になるために必要な知識と技術を身に付ける教育期間。広島県呉市にあり、教育期間は4年6カ月(研修科国際業務課程を含めると4年9カ月)。


【profile】海上保安庁第七管区海上保安本部下関海上保安署 航海士補 大塚翔平

海上保安庁第七管区海上保安本部 http://www.kaiho.mlit.go.jp/07kanku/