皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、現在育休中で、体調不良と待機児童が多いことから職場復帰が難しいと悩む29歳の会社員女性の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆妻が退職して夫の給与だけでやっていけるでしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、現在育休中ながら職場復帰に悩む29歳の会社員女性の方。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談はすべて無料になります)。
https://sec.allabout.co.jp/post-form/form/22

◇相談者
待機ママさん(仮名)
女性/会社員/29歳
関東/持ち家・一戸建て

◇家族構成
夫(公務員/28歳)、子ども(1歳)

◇相談内容
育休中ですが、私の体調不良と待機児童数が多いことで知られる市に住んでいるため、復帰が難しい状態です。住宅ローンは共働き前提で組んでおり、私の会社では復帰すれば会社からローン支援金として1万5000円があと7年間、毎月支給されます。しかし、産後の体調不良が続き、育児と仕事の両立ができる気がしません。退職したとしても、主人だけの給与でやっていけるでしょうか。また、貯金から繰り上げ返済をした方が良いのか悩んでおります。よろしくお願いいたします。

◇家計収支データ
相談者「待機ママ」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)育児休暇について
育休は延長した。2018年4月が復帰目標。復帰できなければさらに延長予定。最大3年が可能。ただし3年目は無給。

(2)妻の治療、健康状態について
定期的な通院はしていない。ただ、月2回ほど体調を崩し、その度に通院投薬をしている。また、仮に退職したら子どもが幼稚園に入る頃にパート勤務を考えている。

(3)データにない支出について
(相談者コメント)「通院と投薬で大体5000円~7000円、義両親が遊びに来た際の滞在費として3ヶ月に一回ほど3万円、急な出費(固定資産税や冠婚葬祭、車両税、両親へのプレゼント)として、繰り越して毎月使っています」

(4)ボーナスの使いみち
貯金30万、家族お小遣い10万

(5)加入保険について
・夫/生命保険(死亡保障1125万円)、医療保険(入院特約1日3000円)=毎月の保険料3593円
・妻/生命保険(死亡保障500万)、医療保険(入院特約1日3000円)=1385円
・子ども/学資保険(17歳満期、満期金300万円)=毎月の保険料1万3440円

(6)住宅ローンについて
・借入額 4410万円
・借入年数 35年
・金利 夫婦ともに0.725%(変動)
固定資産税額(年額) 12万円

(7)家族の小遣いについて
夫、妻ともに3万円ずつ。夫の昼食はお弁当を持参。

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 2000万円+退職金が老後資金
アドバイス2 今は妻の健康回復が最優先事項
アドバイス3 繰上返済は妻の収入が安定してから

◆アドバイス1 2000万円+退職金が老後資金
まずは、待機ママさんが退職した場合のキャッシュフローを試算してみましょう。待機ママさんの育休制度では、2020年4月までは有給。つまり、それまでは今の世帯収入を維持できる(ただし、お子さんが3歳になれば、児童手当は1万円に減額)わけですから、この正社員の権利はフルに活用すべき。決して悪いことではありません。

そして、その間は年150万円貯蓄ができますから、育休制度の有給期間が切れるまでに、手持ち資金は計740万円(投資商品の評価額は変わらないとします)に増えます。そして、お子さんが幼稚園に通い始めるタイミングで、待機ママさんはパートを始めたいとのこと。仮に月8万円の収入があれば、お子さんにかかる費用を考慮しなければ、毎月2万円は貯蓄可能、ボーナスからの貯蓄分(30万円×年2回)と合わせて年間84万円となります。ご主人定年までの30年間で2520万円。先の手持ち資金740万円と合わせると3260万円となります。

さて、ここからお子さんにかかる費用(教育費、その他被服費、食費など)が、大学卒業までに1500万円とします。先の3260万円から捻出すれば、残りは1760万円。学資保険の満期金をこれに加えると2060万円。これに退職金を加算した額が、老後資金となるわけです。

◆アドバイス2 今は妻の健康回復が最優先事項
この老後資金で大きく困ることはないでしょうが、足りるかどうかはわかりません。不確定要素が多いからです。そのひとつが、待機ママさんが試算どおりに働いて、継続して収入を得られるかどうか。ましてや、現在体調を崩している。無理に働いて、さらに体調を悪化させることは避けなくてはなりません。待機ママさんが最優先すべきは、健康を取り戻すことです。あるいは、希望されていかどうかは不明ですが、もし第2子が生まれれば、待機ママさんが働くことのできる期間が減り、逆に教育費等は倍にアップします。

そういったことへの有効な対策として今からできることは、家計の見直しによる貯蓄ペースの底上げです。例えば、趣味娯楽費、家族の小遣い、雑費で計10万5000円。さらに、データに表記されているもの以外に支出もある(データ補足の(3)参照)ようですから、実質13万円くらいはあると考えていいでしょう。これを3分の2に減らすだけで毎月4万3000円が貯蓄に回せます。年間50万円ほど。一度には無理でも、最終的にはこのくらいのコスト減は目指してほしいと思います。

◆アドバイス3 繰上返済は妻の収入が安定してから
あと、悩まれていることとして、住宅ローンの繰上返済があります。完済時期はこのままであれば、ご主人62歳のとき。言われるとおり、できれば繰上返済(期間短縮型)をして、完済時期を定年前にしたいところです。また、貯蓄額だけを見れば、すぐにでもできると言えるでしょう。

しかし、私は賛成しかねます。少なくとも、待機ママさんがパートで働き始め、家計の見直しによりしっかり貯蓄ペース(年間80万円程度)が維持できるようになってからでも遅くはありません。今はまだ、手元に現金を置いておきたいと考えます。

もちろん、育休中に健康を取り戻し、その後、正社員に復帰できれば、世帯収入の観点からはそれがもっとも望ましいわけですが、ご相談の文面からはその意思は何となく弱いように感じます。気持ちがそうであれば、職場復帰は体調にいい影響を与えないはず。今後、意識の変化がある可能性もありますが、今の気持ちのままなら退職を選択してもいいと考えます。

◆相談者「待機ママ」さんより寄せられた感想
深野先生ありがとうございます。今回、やはり保育園に落ちて待機となってしまいました。頂いたアドバイスのもと、まずは雑費の見直しから始めてみます。主人だけの給料でもやっていけるとわかりましたが、今回数字を出してもらったことで、私が正社員で働くことの重要さがわかった気がします。なるべく続けられる方向で、無理をせずやっていきましす。ありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん  

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武

文=あるじゃん 編集部