国立天文台は2月27日、「すばる望遠鏡」の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」が撮影した天体画像データを、誰でも自由に楽しめるように「HSCビューワ」サイトにて公開したと発表した。これらは2014年からはじまったHSCによる大規模戦略枠プログラム(HSC-SSP)の第1期データをもとに作成されたものだ。

  • HSCビューワ初期画面(左)と、ある観測領域の緑の枠内を拡大したようす(右)

    HSCビューワ初期画面(左)と、ある観測領域の緑の枠内を拡大したようす(右) (出所:国立天文台)

HSCビューワの初期画面に表示されている緑色の枠内へとズームインすると、HSCの画像が見えてくる。さらにズームインを続けると、星座を形づくる星々が見えない暗い領域からも、沢山の小さな点々があふれ出るように見えてきくる。この小さな点一つひとつが、星々が多数集まった銀河だ。比較的近傍にある大きめで形がわかる銀河や、遠方にある小さく淡い赤い点にしか見えない銀河まで、異なる距離にあるさまざまな大きさ、形、色の銀河が見られる。

また、メニューバーからは、開発者による「オススメ天体」も選べる。めずらしい重力レンズ天体である「ホルスの目」や、銀河同士のすれ違いによる重力相互作用で生じた、長い星の尾が特徴的な「おたまじゃくし銀河」など、データ内の名所めぐりが可能だ。

  • HSCビューワで見た「ホルスの目」

    HSCビューワで見た「ホルスの目」 。2つの遠方銀河が手前にある別の銀河によって同時に重力レンズ効果を受けている、極めて珍しい天体だ。古代エジプトの神聖なる神の目にちなんで「ホルスの目」と名付けられた (出所:国立天文台)

  • HSCビューワで見た「おたまじゃくし銀河」

    HSCビューワで見た「おたまじゃくし銀河」(UGC 10214)。小さな銀河がこの棒渦巻銀河の近くを横切り、銀河同士が重力を及ぼしあったと考えられる。その時におたまじゃくし銀河内の恒星やガス、ちりが引き延ばされ、約28万光年の長さの、おたまじゃくしの尾のような構造が作られた (出所:国立天文台)

HSCが観測した広大な領域を見ていると、複数の銀河が重力を及ぼしあい、お互いの形を乱し合っているようすが多数見つかる。現在国立天文台では、HSCデータを使って、一般の人々が変形・衝突している銀河の形状の判別に参加してもらうプログラムを開発中だという。

  • 衝突銀河UGC 12589と2MASX J23250382+0001068

    衝突銀河UGC 12589と2MASX J23250382+0001068。2つの渦巻銀河がお互いの重力で引き合い、形を乱しあっている (出所:国立天文台)

  • 衝突銀河 2MASX J16270254+4328340

    衝突銀河 2MASX J16270254+4328340。銀河が合体した後の姿だと考えられる。まわりには、衝突の過程でできたアーク(弓)状の構造が複数見えている (出所:国立天文台)

HSCビューワを開発した、小池美知太郎氏(ハワイ観測所特任専門員)は「天文学の専門家でない一般の方々にも、この最新の大規模なデータに触れ親しんでもらいたいと思い、ビューワを開発した。すばる望遠鏡が見ている、遠く深い宇宙に夢中になっていただければ幸い」と述べている。